松竹、世界のKABUKIへ 公演「輸出」を本格化

松竹が歌舞伎の世界展開に本格的に踏み出す。エンターテインメントの本場である米ラスベガスで5月、歌舞伎初心者の外国人も楽しめる新作を公演する。人気歌舞伎俳優の市川染五郎さん主演で、ライオンの親子を題材にした新しい演目「獅子王(ししおう)」を披露。これを皮切りに欧州やアジアなどでも現地のニーズにあった演目を製作・公演し、海外事業を柱に育てるという。

18日に開いた記者会見で、ラスベガス公演の概要を発表。「獅子王」は舞踊に重きを置いた演目で、最先端の映像技術を使い、バーチャルなモノや人と役者が溶け合うような演出が特徴だという。パナソニックなど複数の日本企業が協賛や技術提供で協力する。入場料は200ドル(約2万3000円)程度からになる見込み。

主演で演出も手がける市川染五郎さんは、「劇場内に水を持ち込み、火も使う。宙乗りや早変わりも考えており、現地の方にびっくりしていただきたい」と話した。

松竹は昨年8月にも、染五郎さん主演の歌舞伎ショーをラスベガスで催した。演じたのは「鯉(こい)つかみ」という伝統的な演目を題材にしたショー。どれぐらい客が来るか読めず、宣伝効果の意味も込めて無料とした。3日間・5回公演で「3万人来れば上出来と言っていたが、実際には10万人が来場し、(会場の高級ホテル)『ベラージオ』始まって以来、空前のお客様を集めることができた」(迫本淳一社長)。

その勝因として自己分析するのが、見せ場で役者がみえを切り、からくりや殺陣など歌舞伎ならではの伝統的な技を盛り込みつつ、プロジェクションマッピング(物体への映像投影)など、最先端の映像技術をふんだんに取り入れたことだ。古典の枠を自ら破った戦略が当たった。「クールジャパン」と呼ばれ、外国人から粋に映る伝統芸能に、最新鋭のハイテクを掛け合わせた独自性の高いコンテンツ。迫本社長は「日本の文化を発信するには、そこにいる客のためにローカライズしたコンテンツをつくることが重要だ」と強調する。

松竹はラスベガスを皮切りに、世界各地で歌舞伎の公演を本格化する。一方で、増え続ける訪日外国人観光客(インバウンド)も歌舞伎に呼び込みたい考えだ。国内では公演時間を短めにした演目を増やすほか、ラスベガス公演のような「外国人向け」の新作をレジャー施設などで公演することも視野に入れている。歌舞伎を日常的に見ているファンの数は現在、300万~500万人。「ファンが無限に増えるポテンシャルはある」(迫本社長)と意気込む。

(映像報道部 杉本晶子)

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