認知症の人が前向きに 新対話法「バリデーション」

日経ヘルス

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認知症の人との新しい対話法「バリデーション」が注目を集めている。認知症の人が尊厳を回復し、話をできなくなっていたと思われていた状態から一転、話し出す例も。バリデーションのポイントをまとめた。

バリデーションは、英語で「確認する」「強化する」の意味。米国のソーシャルワーカー、ナオミ・ファイル氏が考案した。認知症の人の感情レベルに訴えかけ、共感することでコミュニケーションを図る技法だ。

「認知症になると喜怒哀楽といった感情まで奪われると思い込んでいる人は多い。しかし、臨終直前の最期まで、感情面は残ることが分かってきた。バリデーションを使えば、初期から末期の認知症の人までどの段階でも意思の疎通が可能になる」。関西福祉科学大学社会福祉学部の都村尚子教授はそう解説する。

基本的なテクニックは、(1)真正面に座って目を見つめる(アイコンタクト)、(2)相手の言葉を反復する(リフレージング)、(3)鏡になる(ミラーリング)、(4)共感する(カリブレーション)、(5)触れる(タッチング)の5つ。真正面に座って目を見つめ、相手が怒っていたら同じような表情をし、声のトーンを低めにしてゆっくり話しかける。

例えば、「家へ帰る」という人には、「ここが家でしょ」といったりせず、「帰らなければいけないのね」と応じる。「そうなの」と相手が答えたら、「帰って誰に会うのですか」と聞いてみる。「お母さんが待っているから」(相手)、「お母さんに会って何をしたいのですか」(介護者)。「いい子だねっていってもらうの」(相手)、「お母さんは、いつもいい子だねとあなたを褒めてくれたのですね」と介護者は受け答えをしながらやさしく「母のタッチング」をする。

都村教授らの研究では、バリデーションを受けた人は、通常ケアの人に比べ、「楽しみ」「満足感」「関心」が増えていた(グラフ)。また、施設で働く介護職の側も、バリデーションを導入後、仕事への自信、やる気が明らかに向上したという。

13人の認知症高齢者に、週に1回30分前後、3カ月間バリデーションを実施(VD群)。VD群は、通常ケアの9人に比べ、「楽しみ」「満足感」「関心」といった陽性反応の点数が向上し、「怒り」「不安・恐れ」「抑うつ・悲哀」といった陰性反応の点数が低下した。(データ:都村教授らの研究から)

「バリデーションは、怒りや悲しみも含め、認知症の人の感情を表出させることで、その人が生きてきた意味・価値を確認する手助けをする。分かってもらえたと思うと、徘徊や暴力、食事の拒否などがなくなる人が多い」と都村教授。介護する側も本人も、より快適になる方法だ。

詳しく知りたい人には都村教授の著書『バリデーションへの誘い 認知症と共に生きるお年寄りから学ぶこと』(全国コミュニティライフサポートセンター)が参考になる。

■この人に聞きました

都村尚子さん
関西福祉科学大学社会福祉学部教授。バリデーション・トレーニング協会認定バリデーション・ティーチャー。社会福祉士・精神保健福祉士の養成に携わる一方、バリデーションの普及と人材育成に力を入れる

(ライター 福島安紀)

[日経ヘルス2016年2月号の記事を再構成]

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