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手伝える子に育てる 1歳からできるキッチン食育

日経DUAL

2016/1/22

 こんにちは、とけいじ千絵です。私は「審食美眼(=食に対する審美眼)を磨き、彩りある食生活を」をモットーに、小さな子どもを持つパパ・ママ向けに講座を開いたり、フードアナリストとして企業の商品開発のお手伝いや執筆活動をしたりするなど、「食育」に携わっています。食べる子、さらには「手伝える子」に育てるための、1歳からできる「キッチン食育」についてお話ししたいと思います。

 「キッチン食育」とは、子どもと一緒に料理をする、いわばキッチンを舞台にした食育のことです。子どもは料理を通じて様々なことを感じ、学び、成長していきます。

 私は主催する講座で、「1歳から料理のお手伝いをさせましょう」とお話ししますが、それを聞いて皆さんとてもびっくりされます。

 確かに、幼児に料理のお手伝いをさせることは簡単なことではありません。大人がササッと料理をしてしまったほうがキッチンは汚れないし、時間もかかりません。特に、私自身も日々生活の中で痛感していますが、共働きの家庭にとって、特に平日の帰宅後~寝かしつけまでの時間は、戦いモードの本当に忙しい時間だと思います。そこで、私のおすすめは、週末の朝ごはんやおやつを、子どもと一緒に作ることです。

 幼児期からきちんとキッチン食育をしておくことで、以下のようなメリットがあります。

【キッチン食育 3つのメリット】

(1)料理のお手伝いをすることにより、食への関心を持つきっかけになる

 食事に関するお母さんの悩みで一番多いのが、子どもが偏食、少食だというものです。確かに栄養面を考えると心配になってしまうとは思いますが、成長の過程で少しずつ食べられるようになればよく、今すぐにすべての食材を食べられなければいけないわけではありません。幼児期は何より「楽しんで食べる」ということが大切です。

 そして「楽しんで食べる」ためには、子どもと一緒に料理を作ることが非常に効果的なのです。というのも、子どもは楽しい記憶と結びついた食べ物を好きになる傾向があるので(これを連想学習といいます)、苦手な食べ物でも、楽しい記憶と結びつけば好き嫌いを克服できる可能性が出てきます。

 また、食材に接する機会が増えれば増えるほど、その食べ物に対する警戒心や抵抗感は和らいでいきます。例えば、子どもが苦手な食材を使って料理をし、自分が料理したからと嫌々ながら食べているうちに苦手食材を克服できるようになるというのはよくある例です。少食・偏食の子に対しては、献立内容をあれこれ悩むより、料理を通して食に関心を持たせるほうが実は一番効果的だったりします。

(2)お手伝いを習慣化することで、食の自立が早くなる

 食の自立とは、道具を使って自分でごはんを食べられるということも意味しますが、もう一つ、自分の食べ物を自分で料理できるということも意味します。

 平日は忙しく、なかなか料理のお手伝いをさせる余裕がないと思いますが、週末の朝ごはんやおやつのお手伝いを習慣にしてみてください。毎週少しずつでも習慣化することで、子どもの料理する力は着実に身に付きます。早ければ小学校低学年で、献立を自分で決め、料理をすべて任せることができる子もいます。帰宅が遅くなってしまったとき、お米をといでおいてくれる、お味噌汁を作ってくれているなどしたら、とても楽になると思いませんか。

(3)料理を通じて、子どもの前頭葉が活性化する

 前頭葉は、脳の中でも、オーケストラの指揮者的役割をしているくらい大切な場所です。脳の前頭葉部分は、活性化させることで成長します。(参考:川島隆太著:『ホットケーキで「脳力」が上がる』(小学館))

 料理は脳の前頭葉部分を積極的に使うことのできる作業です。とりわけ幼児期においては、生地をこねる、麺棒で伸ばす、卵を割るといった行動に、特に前頭葉が活性化することが分かっています。(参考:川島隆太さんと森永製菓との共同検証結果)

 また、料理は五感で体験できることが非常に多いです。熱い、痛いといった感覚は普段の生活ではなかなか感じにくく、また実際に料理を作らなければ、お鍋から立ち上がるいい香りも体験できません。

 まずは、子どもが構ってほしいとキッチンに入ってきたときに、料理をしているところを見せることから始めてください。そして、料理に興味を持つようであれば、簡単なお手伝いをお願いしてみましょう。

 とはいえ、「何を手伝ってもらえばいいのか分からない」「うちの子はまだ1歳だから、お手伝いを頼むには早過ぎるのではないか」と思われる方もいらっしゃると思います。

 そこで、簡単にできるお手伝いを例に挙げてみました。

【1歳からできるお手伝い】

<1:キッチン以外でのお手伝い>

●スーパーなどで購入した食材をカゴから袋に入れる。

●届いた宅配野菜を冷蔵庫に入れる(このとき、絵本と本物を見比べて、名称を教えてあげてください。つるつるしている、ざらざらしている、冷たいなど、普段のおもちゃでは感じられない感触を経験させてあげてください)。

●食事ができた際に家族への声掛けをしてもらう(パパを食卓へ呼んできてもらう)。

<2:ビニール袋を使ったお手伝い>

 ポテトサラダ、卵サンドイッチの具(ゆで卵とマヨネーズ)、たたききゅうりなど。材料、調味料を入れて結んだら、子どもに渡してみましょう。他に道具も使いませんし、キッチンも汚さずできるので大人も楽ちんです。

<3:手を使ったお手伝い>

●こねる。丸める。床や低い机の上にシートを敷き、その上にピザの生地などのタネを置き、こねてみてください。特に「こねる」という行為は、子どもの脳(前頭葉)を活性化します。

●ちぎる。ボールに入れたキャベツを目の前に、少しお手本を見せれば、後は黙々と続けるはず。ちぎったキャベツをバターとしょうゆで蒸しいためて卵焼きを乗っける。あるいはホットケーキミックスに他の野菜とベーコンを入れて焼けば、朝ごはんのメーン1品出来上がりです。葉物野菜だけではなく、ちぎってもらったパンを砂糖、牛乳を入れた卵液に入れてオーブンで焼けば、簡単おやつにも。

●にぎる。ラップを利用して茶巾のようににぎれば、1歳でもきちんとできます。

<注意> 1歳児はまだお料理と遊びの区別がつきませんから、料理の際には、たとえビニール袋をもむだけだったとしても、きちんと手洗いをしてエプロンを着け、料理の雰囲気をつくってあげましょう。また、1歳児の場合は、作ったら時間を空けずにすぐに食べることが肝心です。

 そして、作業中は、子どもができたことをどんなささいなことでも褒め、「ありがとう」を伝えてください。褒められ感謝された喜びが、自信と自己肯定感を養ってくれます。

【2歳以降のお手伝い】

●お米をとぐ。炊飯器の内釜でお米をとぐと、水を取り替える際にお米が流れ出てしまい難しいので、ボールとザルでといでみましょう。

子ども用包丁の例

●包丁を持つ(切る)。最初はテーブルナイフでも構いません。慣れてきたら、包丁を使ってみましょう。刃渡り10~15cmくらいが子どもの手のサイズにはちょうどいいです。よく切れない包丁は、切る際に必要以上の力を加えなくてはならず危険なので気を付けてくださいね。今では子ども用の包丁もたくさんあります。

 初めは、蒸したカボチャなどの簡単に切れる硬さのものから始めてみてください。滑りやすいもの、丸いものは切りやすい大きさにまであらかじめ切っておくこと。まな板を使うときは、まな板の下にぬれぶきんを敷くと滑りにくくなります。握り方、置き方、切り方は最初にしっかりと教え、子どもだけで使用するのは避けてください。

●フォーク、スプーンなどで混ぜる、お箸であえる。慣れてきたら、例えばホウレン草のごまよごしのようなプロセスが1~2個のものを全行程そのまま任せてみてください。すべてを最初から最後まで自分でやることで得られる満足感は格別なはずです。

 キッチンで作業をするときの高さは、立った子どもの肘が「く」の字になるくらいが適切です。キッチンが高いようでしたら、踏み台を用意し、適切な高さにならない場合は、リビングの低い机でも構いません。

 いかがでしたでしょうか。

 子どもの料理は、見守ることが何より大切です。手を出さずに忍耐を持って接することでどんどん一人でできるようになります(当然、危険なことには手を貸してあげてください)。

 特に共働きの家庭では、お母さんがすべての家事をこなすのではなく、子どもも家族の一員としての役割を分担していくという意識があるといいと思います。最初は「ごはんができたよー」の、家族への声掛けだけでもいいので、徐々に子どもに役割を持たせ、主体的に食事に関わることを習慣づけてみてください。

とけいじ千絵
 1級フードアナリスト協会認定講師であり、「審食美眼(=食に対する審美眼)を磨き、彩りある食生活を」をモットーに、『審食美眼塾』を主宰する食育・卓育スペシャリスト。現在は、フードアナリスト、講師、フードライターとしてラジオ、雑誌などで活躍中。また関東を中心に食育講座や出汁講座、オリジナル箸を手作りして箸の文化や使い方を学ぶMy箸作り講座を開催している。全国フランチの会副会長・ジャパンフードセレクション審査員。 公式ブログ「とけいじ千絵の審食美眼」

[日経DUAL 2015年11月24日付記事を再構成]

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