和製アニメ、底力鍛える 手書き風CGをテコに

国内アニメーションに新たな技術の波が押し寄せている。若い人材を育て、マンガ文化に親しむ日本人に響く作品づくりに生かす。アニメ産業の底力を鍛え、未来を切り開く。

東京都杉並区。アニメ制作会社の武右ェ門で昨年、CG(コンピューター・グラフィックス)によるアニメの職場内訓練(OJT)プロジェクトが始まった。文化庁の委託事業で今回初めて3DCGアニメを選んだ。作品は宮沢賢治原作の「風の又三郎」で今年3月に公開される予定だ。

漫画文化に根ざす

3DCGでアニメ制作に取り組む若手アニメーター(アニメ制作会社の武右ェ門=東京都杉並区)

「人間の関節の動きに注意して動作を描くといい」。同社の千野勝平さん(24)は人物に動きを付ける作業を教わり、「少しの関節の動きで自然にも不自然にもなり、大変勉強になる。今後は手描きアニメも勉強して幅を広げたい」と意欲を示す。

近年、日本アニメにも3DCGが増えてきた。「機動戦士ガンダム」や公開中の映画「妖怪ウォッチ」のほか、「ワンピース」も船体はCGだ。CGは立体的表現に適し、線の多い画像などで作業効率が高い。米ピクサー制作の「トイ・ストーリー」が1995年に公開され普及し始めた。マンガから生まれた日本アニメになじまないとされたが、作品が増えてきた背景には日本の独自技術がある。

アニメの技術に詳しい東京工科大学の三上浩司准教授は「日本ではトゥーンレンダリングという技術が発展してきた。CGでありながら塗り方や陰影で手描きに見せる日本らしい技術だ」と語る。老舗CGスタジオ、ポリゴン・ピクチュアズ(東京・港)の塩田周三社長は「ピクサーと勝負できる技術だ」と話す。上映中の妖怪ウォッチではこの技術をキャラクターに使い、ガンダムではモビルスーツに使用している。

日本アニメの特徴はこうしたCG技術だけではない。人物を3D、背景を2Dで描くといった3Dと2Dの組み合わせも多い。このため2D作画の効率化も課題で、手描き作画のデジタル化が進む。

グラフィニカ(東京・新宿)は13年、鉛筆でなく、タッチペンでの作画を始めた。当初は1人平均の動画作成枚数が導入前の3割に減ったが、慣れるにつれ効率が上がり、1年半後には同1.7倍に増えた。15年度は国の実習事業に指導者として参加し、8人のアニメーターが学んでいる。

待遇改善が課題

日本動画協会によると14年のアニメ制作会社の売上高は1847億円と5年連続で増えた。テレビの多チャンネル化や、スマホ普及による短編アニメの配信増加が主因だ。ただ待遇の問題で人材集めは難しい。日本アニメーター・演出協会の調査ではアニメ制作者の平均年収は約333万円。職種別では3DCGアニメが約384万円と全体より高いが、原画制作は約282万円、動画は約111万円だ。

「CGやデジタル作画に取り組み、作業効率を上げる。その分を品質向上に充てれば生産性はさらに上がる」とグラフィニカの伊藤暢啓社長は言う。増加する海外発注を国内に戻せる可能性がある。

ただCGやデジタル作画には投資が要る。特にフリーのアニメーターには負担が重い。20世紀後半から日本アニメを支えてきた熟練アニメーターも多く、デジタル化は難しいといわれる。IT(情報技術)を使いこなす若い世代との世代交代が、業界の1つの転換点となる可能性がある。

老舗スタジオ、ぴえろ(東京都三鷹市)創業者の布川郁司氏は「演出やプロデューサーの能力も大切だ」として、演出などを教える「NUNOANI塾」を開いた。「アニメをビジネスと捉え、市場を分析し、作品を世界に発信する人材が大事だ」と語る。

最新のITを取り入れながら、人にやさしく感性を動かす作品を作ることが、日本アニメにとっての光明になる。

技術はあるのに低賃金 厳しい環境、嘆きと危機感

アニメーターに関するツイッターでは待遇に関するつぶやきが多かった。「アニメが世界で受けてるって言ってるくせに低賃金って全く受けてないじゃん」「需要が多いのに単価が一向に上がらない。構造を変えるチャンスだと思う」との書き込みがあった。

また「皆イラストレーターとかに行っちゃうし。辞めちゃう人も多い上に、やりたい人も少なかったらどうなっちゃうのかな~」「日本はアニメを作りすぎて人材の熟し方を知らない」のほか、「中国の制作会社による日本人アニメーターの爆買いが進行中」など日本アニメの将来への懸念も示されていた。

一方、「アニメーターの絵のスピード感とか迫力はすごい」「妹はアニメーターから見るアニメ決めてるらしい」と能力の高さに関する声も目立った。調査はホットリンクの協力を得た。

(福士譲)

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