「専業主夫との結婚」という選択肢
年収600万円の仕事バリバリ人間と、年収300万円でも家庭的で顔も性格も好みの男、どっちと結婚するか。女子の皆様の悩みは昔から同じ。
そしてお母さんならこう言うでしょう。「年収の高いほうの男と結婚しなさい」と。しかし、今ならこう問いかけます。「ところであなたの年収はいくらで仕事はなに? 安定していますか?」と。
そう、どちらの男性と結婚するのも、実はあなたの年収と仕事の安定性次第なのです。女性も働き続けられる時代になったからです。
もしあなたが年収400万以上はしっかり稼げる女子なら、年収300万の好きな男性と結婚して、共働きをしていけばいい。彼の方が年収が低いなら、彼に育休をとってもらうという選択肢もあります。
二人合わせて世帯年収700万円。
「いやいや、年収600万円の仕事人間と結婚したら、二人で1000万円じゃないですか?」という疑問もあると思います。
しかし仕事中心の男性と結婚したら、あなたが「家事・育児・仕事」をすべてやるはめになりかねません。いずれは両立不可能で退職することにも。何よりもこういう夫婦は、ワーキングマザーの幸福度がとても低いのです。
あなたがくじけて退職してしまったら、年収600万円の片働き家庭です。
年収700万円の共働き家庭にはかないません。
「わたしは年収800万円の男と結婚するからいいの」という人もいるとは思いますが、年収600万円以上の男性でも100人に5人しかいないので、800万円以上の男性との結婚は、厳しい戦いになりそうです。
妻の扶養に入っている男性は11万人にも
今、世の中では11万人の男性が「妻の扶養」に入っているそうです。対する専業主婦は680万人ですから、まだまだマイノリティーなのですが。
未婚の皆さんには「夫を養う」と言っても、「ありえない」という感じだと思うのですが、そういう日もある日突然やってくるかもしれません。
インタビューした「主夫(兼業も専業もいます)」たちは「病気」「リストラ」「転勤」「妻が望んで」「圧倒的な年収差」など、さまざまな理由で主夫となっていました。最初から「主夫になるとは思ってもいなかった」といいます。
「女性の管理職が3割になるなら、主夫も3割」を目指す秘密結社「主夫の友」CEOである堀込泰三さんは東大卒カップル。奥様の転勤で家族が離ればなれになったことがきっかけで、会社を辞めて主夫に。今は翻訳家として在宅で仕事をしながら、二人の男の子をしっかり育てています。
堀込さんの考える主夫は「主夫=家事や育児を"主"体的に担う"夫"」です。誰でも「自覚をしたとき」が主夫になる時です。
共働きのカップルでも8割の男性が家事をしない日本で、「主体的に家事育児をやる」と宣言してくれる男性は貴重です。
独身の皆様には、ぜひ「主体的に家事育児をやってくれそう。やればできる子」な男子を発見したら、がっちりとつかんでほしいものです。多分それは、一部上場企業に勤めていることや、年収がいくらあるかより、ずっと重要なことです。ジョヤンテ社長の川崎貴子さんによると「年収は時価」ですから。
「パパ=死んだものと思う」という心境に陥らないために
先日ワーキングマザーのワークショップに出たら、多くのママたちが「夫は死んだものと思っている」と発言。「パパ=ワーキングデッド問題」が発生していました。夫は子どもができる前と全く同じ生活をしていて、残業も土日も好きに時間を使っている。一方ママたちは仕事も子育てもして大変…。そこで「夫に期待しても無駄。いっそ死んだものと思った方が楽だ」という心境に至るのです。
なぜ、子どもができてから「こんなはずじゃなかった」となるのか?それは結婚前に「子どもができたら、どう二人で育てていくか、働くか」という話をしていないからですね。
煮え切らない男を結婚のクロージングまでひっぱっていくのに精一杯で、それどころじゃないわよ、という声も聞こえてきます。
しかしこれからは「家には主婦と主夫がいて、外で稼ぐ人も二人いる」ほうが安定した家族になる可能性が高いのです。
こんなに仕事が不安定な時代、どちらかがリストラされても大丈夫。またどちらかが病気になっても、なんとかやっていけます。
奥さんが「ちゃんと稼ぐ」と世帯収入は1~2億円増えるという事実
家のことと外で稼ぐことを半々でやってもいいし、子どもの年齢によって、または仕事の状況によって配分を変えてもいい。今の日本の夫婦は「男はもっぱら稼ぎ、女はもっぱら家事育児(+ちょっとしたパート)」という家族が多いのですが、奥さんが「ちゃんと稼ぐ」と世帯の総収入が1億円から2億円増えます。夫が一人で同僚より1~2億円多く稼ぐことは大変な時代です。
つきあっている彼氏より年収が高いと悩む女性は4人に1人です。しかし、そこは悩まないでぜひ好きな人と結婚してください。
そして子どもができたら、あなたがしっかり稼ぎ、彼にしっかり家事育児をやってもらったほうが合理的です。
ここで「男は仕事、女は家事育児」にとらわれていると、せっかくのご縁を逃してしまう…。ぜひ考えてほしい「未婚女子のための主夫戦略」です。
少子化ジャーナリスト、作家、大学講師。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」主宰。山田昌弘中央大学教授と共著の『婚活時代』において婚活ブームを巻き起こす。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。著書に「妊活バイブル」「女子と就活」「婚活症候群」など。最新刊『格付けしあう女たち』(ポプラ新書)
[nikkei WOMAN Online 2016年1月7日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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