虹の新しい12分類、フランスの科学者が提唱
フランス国立気象研究センターの大気科学者、ジャン・リカール氏は先ごろ、新たに考案した虹の分類法をアメリカ地球物理学連合の会合で発表した。
虹の分類法など、一見、さまつなことのように思えるかもしれないが、「我々の虹に対する理解を促してくれます」とリカール氏は言う。
虹の色もいろいろ
虹の絵を描けと言われたら、たいていの人が赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色の線を引くだろう(米国では一般的に虹は6色。藍色は数えられない)。
しかし、もっと複雑な虹もある。たとえば1本目の虹の上に、色の並び順が逆になった2本目の虹(副虹)がうっすらと現れる場合(二重虹と呼ばれる)。また、2本の虹の間の空が暗くなっていたり(暗帯)、1本目の内側、あるいは2本目の外側に、過剰虹と呼ばれる明るい縞模様が見える場合もある。一方で、これらの特徴を一切持たず、色のまったくない虹も存在する。
1950年代以降、虹を分類する際には、虹を作り出す水滴の大きさが基準として使われてきた。水滴が大きいほど、色は鮮やかになる。
今回の分類は、地平線からどれだけ高い位置に太陽があるかを基に考察したものだ。太陽高度が約70度の位置にあると、虹は青と緑の光が優勢になり、太陽高度が低い(地平線に近い)場合は、赤と黄色が強くなる。
「日の出と日の入りの際、太陽から地球に届く光の強さは劇的に変化します」とリカール氏は言う。太陽が低い位置にあると、光線は地球の大気中をより長い距離にわたって通過してくる。「赤い光の波長は大気層を通り抜けますが、他の色の光は散乱してしまうのです」
誰でも種類を見わけられる
このように多様な姿を持つ虹を把握するため、リカール氏のチームはまず虹の写真を大量に集め、それを色の見え具合、暗帯の暗さ、過剰虹の有無によって12のカテゴリーに分類した。たとえば、緑色の帯が欠けた種類もあれば、青と紫がない種類、赤と青だけの種類もある。
リカール氏によると、この分類法は実にシンプルで、誰でも虹の写真を見て種類を特定し、なぜそういう虹ができるのかを理解することができるという。たとえばそれがかすんだような赤い虹であれば、日の出か日の入りのときに、細かい水滴がある場合にだけできるものだ。
「虹を見つけるのはうれしいことですし、私に虹の写真を見せて原理を教えてと言ってくる人も少なくありません」と、米海軍兵学校の気象学者レイモンド・リー氏は語る。「ですから、なぜある虹が別の虹とは色が異なるのか、その仕組みを説明する際の指針になる、統一された原則を定めておくことは非常に有意義です」
虹の研究はさらに、地球外生命体の探索に役立つ可能性も秘めている。もし虹や光輪(飛行機に乗っているときに多く見られる虹。雲に映る飛行機の影を取り巻くように光の輪ができる)が太陽系外惑星で観察されれば、その惑星に水、さらには生命がある可能性を示唆しているからだ。
(文 Sarah Zielinski、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2015年12月25日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。