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金箔ソフトに行列 金沢・輪島、伝統工芸に新たな息吹

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NIKKEI STYLE

東京―金沢を2時間半で結ぶ北陸新幹線が昨年3月に開業し、首都圏の人にもぐっと身近になった石川県の金沢市。ホームに降り立つと迎えてくれるのは伝統の金沢箔を使った装飾だ。県のほぼ中央にある金沢市はおいしい魚や温泉だけでなく、日本の金箔生産の99%を担うことでも知られる。一方、県北部の輪島市は気品にあふれた漆工芸で名高い。工芸王国と呼ばれる石川県では伝統に安住せず新たな挑戦を続ける人たちの熱気が広がり、観光客を引き付けている。

1個891円、40分待ちも

「買えて良かったあ」。金沢市を友人と大阪府から旅行で訪れた20代前半の女性はこの日最後の1個となった「金箔かがやきソフト」を手に目を輝かせた。大きな金箔のかぶさった891円のソフトクリームを味わえるのは金沢駅からバスで10分程度の「ひがし茶屋街」にある「箔一 東山店」だ。北陸新幹線の「かがやき」にちなんで、金箔を1枚張り付けた現在の形となった。「思ったより金箔が大きくてびっくり」という女性の言葉通り、インパクトある金箔ソフトをお目当てに遠方から来店する人は多い。休日は30~40分待ちの行列になることもあり、取材に訪れた昨年12月下旬の平日は夕方4時ころには売り切れた。

箔一は現会長の浅野邦子氏が一代で築き上げた。現社長の浅野達也氏は2代目で、老舗が並ぶ地元では比較的新しい企業だ。箔の製造から工芸品、金箔を使った化粧品、建築装飾など事業領域は幅広い。「大切なのはまずやってみること」という浅野社長は「自分が楽しいと思える会社にしなければ」と思いを語る。海外進出を加速しており、中国・上海、香港、タイに化粧品の代理店を出したのに続き今年は富裕層の多いドバイの展示会に出展する予定だ。

箔一の金沢箔は近未来的な日本らしさを感じさせる建材として注目され、ファッションブランド「フェンディ」のフランス店の内装に採用された。都内でもヤマハ銀座ビル(中央区)の外観、東京スカイツリー(墨田区)のエントランスなどで箔一の金沢箔を使ったデザインを見ることができる。店頭で人気の箔打ちの技法を生かしたあぶらとり紙や、金箔の入った化粧水などは、通販を通じた常連客も多いという。

浅野社長は金箔に対して「最初は閉鎖的で暗い世界」という印象を持っていたと振り返る。けれど金箔の魅力を世界に発信するなかで「日本人としての誇りや守るべき伝統を感じさせてくれる」かけがえのない存在と思うようになったという。

連続テレビ小説「まれ」の舞台

工芸王国と評される石川県には陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の「工芸7分野」がすべてそろう。金箔は輪島塗の沈金や蒔絵(まきえ)に使われ、漆とともに伝統工芸を支えてきた。

金沢市から車で約2時間の輪島市では伝統の輪島塗に新たな可能性を探る挑みが始まっている。江戸時代末期に創業した塗師屋(ぬしや)の大崎漆器店はNHK朝の連続テレビ小説「まれ」の舞台のひとつにもなった。大きなのれんをくぐると出迎えてくれたのは4代目の大崎庄右ェ門を継承する大崎四郎さんだ。「職人の中心となって、商品企画からデザイン、営業まで輪島塗を総合的にプロデュースするのが塗師屋の仕事」と大崎さんは説明する。

ここで十数年前に生まれたのが「陶胎漆器」だ。高級食器メーカー、ノリタケカンパニーリミテドと共同開発し、約3年の月日をかけて完成させた。特殊な製法で陶磁器素材の上に漆を塗り、蒔絵を施す。「まれ」の劇中では、山崎賢人さん演じる圭太が塗師屋の五代目紺谷弥太郎を継ぐための大きな試練となった場面で登場した印象的な漆器で、知名度は全国区になった。最近はブラジルやポルトガル、サウジアラビアなど世界各国から蒔絵や沈金の華やかな装飾に興味を持って訪れる人も多いという。

「金箔は輪島塗に使う素材のなかでも『魔物』」と話すのは同じく輪島市に工房「清里」を構える沈金師の水尻清甫さんだ。一見、輝きは同じようにみえても、使う箔の品質や種類、彫り方ひとつで、沈金としての完成度に大きな差が出る。金箔は金の純度によって分類される。純度が高くなれば赤みが出る性質などがあるため、異なる種類の金箔を掛け合わせて狙った風合いを出すという。水尻さんは輪島塗のすべての行程を経験して、沈金師の道を選んだ。沈金はまず、漆を塗った面を金属ののみで細かく彫って文様を描く。そのあとの凹部に漆をすり込み、厚さ約1万分の1ミリメートルの金箔を押し込む集中力と根気が必要な作業だ。「輪島塗の職人として四十数年やってきた仕事のなかでも、緻密で、誰しもできるわけではない漆に対する貴重な作業」であることが水尻さんを沈金師へと導いた。

水尻さんは鼓をヒントにした漆塗りの「鼓スピーカー」を10年かけて開発した。漆の持つ抗菌作用や密封度をスピーカーに応用し、瑞鳥(ずいちょう)などの文様を沈金で施して付加価値を高めた。発売して約3年になり、今は購入まで2年待ちだ。蒔絵師である息子の幸太さんの発想で漆塗りのロードバイクも試作した。沈金や蒔絵を施すことも検討しており、2月に発表する予定だ。

輪島の沈金師は現在45人ほどいるが、そのうち3分の2程度は高齢で引退が近いという。沈金や蒔絵の工房でも弟子を受け入れる余力がないのが現実で、後継者不足が職人全体でも深刻な課題となっている。塗師屋の大崎さんは「日本のなかの輪島ではなく、世界の輪島というようなプライド、誇りを持たなければならない」と話す。「いろいろなことに挑戦しながら、みんなでスクラムを組んでいくということ。いまが輪島塗の歴史のなかでもターニングポイントだ」と気を引き締める。漆の基本は食器をはじめとする毎日の暮らしを支える道具。それを後世に伝えていくためにも、職人たちは新しい分野に挑み続けているという。

箔の生産額はバブル期の5分の1

金箔が初めて文献に現れたのは文禄2年(1593年)。前田利家が肥前名護屋(現在の佐賀県)の陣中から国もとの七尾に金箔、金沢に銀箔を打つよう命じる書簡を送ったことが伝わっている。江戸幕府による厳しい統制を経て、大正期には電動箔打ち機の開発に成功、生産量が飛躍的に増加した。金沢市立安江金箔工芸館の八田博志副館長は「金沢箔は薄く、粘着力があり、良質なうえに価格が低廉だったため、競争力をつけた」と話す。

石川県箔商工業協同組合によると箔の生産額はバブル期の1990年のピーク時には136億円超に膨らんだ。その後バブル崩壊や仏壇・仏具の需要減少の影響を受けて生産は落ち込んだ。近年はやや持ち直しているが、昨年度で25億円と、ピークの5分の1程度だ。山賀直久事務局長は「売り先が細れば生産が減り、職人たちが生活できなくなって後継者も出ない悪循環になる。どうしても新しい市場の開拓が必要」と語る。

経済産業省によると金箔の原料になる金の国内需要(2014年)は52.27トン。電子・機械向けが27.46トンで全体の53%を占め、歯科材料、宝飾品(ジュエリー)などが続く。金箔を含む美術工芸用は0.98トンで全体の2%にとどまる。金は国際商品のため、国内の価格は指標となる海外のドル建て価格を円に換算して決まる。現在の大口取引価格は1グラム4100円前後で2年前の高値に比べ約2割下落した。投機マネーが縮小して海外価格が下がったためだが、国内外の金相場は不安定な動きを続けている。今のところ国内工芸品業界の原料費の負担を減らす効果は限られるという。

金箔はきらびやかなイメージが先行しがちだが、しっとりとした奥ゆかしさも秘めている。金沢や輪島の新しい息吹に触れれば、金箔のこれまでとは違った魅力を感じられるかもしれない。

〔日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥〕

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