夫の家事・育児 得点圏打率を上げて水無田気流女男 ギャップを斬る

正月休みの時期には、新幹線などで小さい子ども連れの家族を目にする。気になるのは、母が「野生の母グマ」のごとく殺気だった目で、上の子どもが騒がないよう配慮しつつ下の子どものオムツを気にしているのとは対照的に、父は大あくびで缶ビールを空けつつケータイをいじっているようなケースである。すでに家族の中で、父は正規メンバーから外されているように見えるからだ。

みなした・きりう 1970年生まれ。詩人。中原中也賞を受賞。「『居場所』のない男、『時間』がない女」(日本経済新聞出版社)を執筆し社会学者としても活躍。1児の母。

よく、男性の長時間労働が家事育児参加を阻んでいるという意見を耳にする。だが、たとえば子育て世代の30~40代の男性就業者のうち「週労働時間60時間以上」の人の割合は、1990年には3割弱いたが、2014年現在では17%台に減少。男性全体の就労時間自体も短縮傾向にある。一方、夫婦の家事総量の85%以上を妻が担っている状況は、過去約20年変化がない。つまり男性が家事育児参加をしないのは、長時間労働以上に性規範の影響が大きいといえる。

もっとも、せっかく夫が家事をする気になっても妻に邪魔にされてしまう……という意見もある。思うに、家事育児にも野球でいえば「得点圏打率」があるのではないか。暇なとき、気分が乗ったときにのみ気まぐれで参加する家事は、(やらないよりはずっとましだが)打点が低いのである。それよりも妻が忙しいとき、体調が悪いときにクリーンヒットを飛ばせるかどうかが肝心である。そのためには、普段から家庭運営に関心を持つだけでも大きな違いが出る。

ここで気をつけたいのは、「俺はよくやっているほうじゃないか」などという主観的な申告だ。なぜならそういうとき、妻は「契約更新時のフロント」となるので、貴兄は「年俸アップをゴネる助っ人外国人」に見えてしまうからだ。「オゥ、そりゃねぇぜ! 年間本塁打数は20本いってるし、打率だって2割台後半だ。この数字を考慮してくれよ!」と言っても、妻の脳内には、重要な場面でつねに凡退や併殺打、そのくせ勝敗に関係ない場面でばかりソロホームランを打つ貴兄の姿が明滅しているのである。存在感を失わないためには、家庭ではスタメン出場が難しくとも、むしろベンチスタートだからこそ、メンバーとしての自覚と関心を持つことが参加の鍵である。