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定年楽園への扉

退職金は永年勤務のご褒美ではない 経済コラムニスト 大江英樹

2016/1/7

 サラリーマンの中には退職金をもらえる人たちがいます。会社によって制度は違うので退職金のない会社もあり、誰もが退職金をもらえるわけではありません。しかしながら定年制度がないために退職金もないアメリカと違って、日本では退職金は長い期間にわたって根付いている制度であることは間違いありません。

 ところが多くの人が退職金というものの本質を勘違いしています。それは退職金が長年働いてくれたことに対して会社がくれる“ご褒美”だと思っていることです。たしかにそう思ってしまうのは無理ありません。もともと退職金のルーツは江戸時代の「のれん分け」とされます。まさに長年働いた奉公人に屋号の使用許可といくばくかの開業資金を与えて独立させる仕組みが現代の退職金にまで脈々と続いているといいます。

 といっても退職金は決して、長年働いたことに対するご褒美ではありません。退職金の本質、それはひとことでいえば、「給料の後払い」です。その証拠に企業会計上において退職金や企業年金のことを「退職給付債務」といいます。そう、給料の後払いだからこそ、会社が社員に対して負っている、まさに債務なのです。

 ですから、その債務を持ちたくないと考える会社の中には退職金という制度をなくしてしまい、その分を在職中の給料に上乗せして払うという「退職金前払い制度」を採用している会社もあります。前払いというのは一見良いように見えますが、給与として支払われますから所得税がかかります。これに対して退職金は一時金でもらうと、ケースにもよりますが、ほとんど税金がかからない場合が多いのです。

 それに前払いでもらってしまうと、よほど強い意志でしっかりと管理しない限り、もらった給料分だけ使ってしまうことにもなりかねません。したがって退職するまで会社がそのお金を管理し、退職後に渡すという仕組みはある意味合理的であり、よく考えられた制度といってもいいのです。

 この退職金をご褒美と勘違いしてしまうと一体どんなことが起きるか。退職金を使って大きな買い物をしたり豪華な旅行に行ってしまったりということになりがちです。なにしろ長年頑張った自分に対するご褒美だと思っていますから、そういう使い方をすることにあまり抵抗感がなくなるのです。

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