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家族が集まる正月 相続について話したい 司法書士 川原田慶太

2016/1/1

 「年明けとお盆明けには相続セミナーの受講者が増える」という俗説があります。もちろん正確な統計の裏付けがあるわけではありません。しかし、そういった場で講師を務める側の感覚からしても、たしかに言われてみれば……と思わなくもありません。一笑に付してしまえない、一面の真実が含まれている気もします。

 ライフスタイルが多様化し、家族のあり方も紋切り型ではなくなった現代ですが、お正月やお盆シーズンの帰省ラッシュ、Uターンラッシュは健在です。それだけ多くの人々が国内を移動し、少なからぬ割合の人々が実家や親戚の元に戻っているということでしょう。

 そして、久しぶりに親と子ども、祖父母と孫、兄弟姉妹やおい・めいなどが再会し、お互いの顔を見たときにふと、「私の遺産はどうなるのだろう」「あの子だけ今年も帰ってこなかった」「あそこの土地は誰がもらえるのか」「こんなに世話をしている自分は報われるのか」――などといった、とりとめもない考えが頭をよぎるのも仕方ないことでしょう。そういうことが、セミナーや勉強会に行く動機になるのも自然なことです。

 これまで、身内の間で、特に遺産を残す側の親などが生きているうちに財産について話すことは、ある種の「タブー」とされてきた面があります。相続セミナーへも、当事者同士で相続についてきちんと話しあったり、意思疎通をしたりしてから来るわけではなく、話ができないまま、もやもやした状態で駆け込んでくるのが一般的でした。

 ところが、最近は変化の兆しが出ているように見えます。公正証書で遺言を作成する人の数が2014年に初めて10万人の大台を突破したことにも反映されているように、ある程度、相続について意識的な行動をとる人たちが登場してきているからです。

 背景には、15年に始まった相続増税の前後で盛んに相続税について報道され、相続問題についてより意識が強まったことがあると思います。さらにもうひとつ、これは現場で生の話を聞いている感触なのですが、いわゆる団塊の世代と呼ばれる年代のなかには「自分は子どもたちに迷惑をかけたくない」と強く考えている方が少なくないのです。

 こうした人々に話を聞いてみると、自分の親について体験した相続などが「原体験」となり、「よりよい相続の形、よりスムーズな相続」を模索している方が多いという印象です。昔の相続でうまくいかなかったこと、こうしておいてほしかったということを、自分については「改善」し、なるべく子どもに迷惑をかけたくないという意識が根底にあります。

 この新世代の中には、家族が集まるタイミングで自分の相続のことをタブー視せずに話すという人も出てきています。「正月そうそう」などと思われるかもしれませんが、個人的には悪い事だとは思いません。

 相続トラブルの最大の原因は、法律や制度の問題というよりも、家族間のコミュニケーション不足です。もし帰省の前後にそういった話題が出て、お互いのコミュニケーション不足を解消する良い場となるならまたとない機会です。険悪なムードにならない限り、話をすること自体は前向きなイベントとして歓迎すべきなのではないしょうか。

川原田慶太(かわらだ・けいた) 2001年3月に京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験に合格し、02年10月「かわらだ司法書士事務所」を開設。05年5月から「司法書士法人おおさか法務事務所」代表社員。司法書士・宅地建物取引主任者として資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数務める。

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