鉄壁の日曜・日テレ、フジは苦戦 15年バラエティー日経エンタテインメント!

『日経エンタテインメント!』では2015年に放送されたバラエティー番組を総点検。視聴率をもとにランキングし、年間データから見える新たな傾向を解説する。『日経エンタテインメント!』誌で、テレビ番組を“銘柄”、その視聴率を“株価”に見立てて、テレビのトレンドを語る座談会形式のコラム『テレビ証券』の参加メンバー3人が2015年のバラエティー番組を語った。視聴者をつかむカギは嫌みのない企画の継続性だという。(文中の視聴率データは2015年1月1日~11月15日で算出)

テレビ証券:座談会登場人物プロフィール
指南役(ディーラー) 「テレビ証券」を主宰する謎の人物。テレビ界の裏情報に精通する。
草場滋(トレーダー) バラエティー先読みの「企画千里眼」。
津田真一(トレーダー) マイナー銘柄発掘の「青田の貴公子」。
小田朋隆(トレーダー) 底値買いの「ドラマ王」。
2015年1月1日~11月15日に放送されたバラエティー、音楽番組、紀行番組で、レギュラー放送開始時刻が18時56分から23時台のものを対象とした。ビデオリサーチ関東地区のデータを基に編集部がランキングを作成。小数点2位以下は四捨五入。複数番組合同での特番は、それぞれの番組のポイントとし、時間帯別で数字が分かれて出ていた場合は、高いほうで集計

指南役 2015年のバラエティー年間トップは、2年ぶりに『世界の果てまでイッテQ!』が返り咲きました。

津田 すごく新しい企画があるわけでもなく、面々もこれまでと変わらず、むしろマンネリと言われかねない中でコンスタントに数字を稼いでトップ。本当にすごい番組だと思いますね。

小田 しかも14年より平均値を上げて。強さの秘密は、老若男女が見ても面白い作りになってるから。これがすべて。

草場 イモトの「エベレスト登頂」企画も14年に続いて、15年も諸事情で断念。代わりに、あの植村直己が消息を絶った難関・北米マッキンリーに挑み、見事成功。この時の視聴率が17.1%。

小田 通常より低い数値に見えるけど、実は放送日が、あの『FNS27時間テレビ』の真裏だったんだよね。一方のフジは、『27時間』のグランドフィナーレが15.1%と例年より振るわず。結局、これが響いて平均10.4%と、過去10年で2番目の低視聴率に。

草場 通常なら、イモトの登山部企画は20%は固いんだけど、『27時間』にぶつける“骨を切らせて肉を断つ”戦略で、フジの亀山社長に同番組を「検証し直すいい機会」と言わせる結果に(笑)。事実上のフジの敗北宣言とも。

指南役 2位は2014年にトップだった『ザ!鉄腕!DASH!!』です。数値は前年と変わらず。

津田 14年は、番組自体が20年目で、メモリアル的な意味もあって盛り上がりましたが、この1年は通常モードに戻り、それでも2位とは、いかに根強い人気か。

小田 もはや余裕の境地。「DASH島」の何がすごいって、この1年、ひたすらひとつの石橋アーチを作ってきたこと(笑)。

草場 普通の番組なら、3時間スペシャル1回でまとめそうな企画を1年間続ける余裕。そういうテレビっぽくない時間感覚が人気の秘密なんだと思う。

日テレの基盤はバラエティー力

指南役 3位は1年前と同様、『行列のできる法律相談所』です。つまりトップ3は、14年と同じ日テレ銘柄。

津田 1年前よりさらに日テレの3冠独走状態ですが、それは要するに、バラエティー3冠王ってことなんですね。

草場 今や全番組の6割近くがバラエティーだからね。昔はクイズや歌番組、情報番組はバラエティーじゃなかったけど、今は全部バラエティー。バラエティーを制す局がテレビ界を制す。

小田 トップ11に日テレが9つ。トップ30に日テレが19銘柄。しばらくこの情勢は変わらないかと。

津田 日テレバラエティーの特徴は息の長さ。5位の『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』なんて19年目だけど、24位から急上昇。

草場 裏がフジの『水曜歌謡祭』で、自滅ともいえるオウンゴールだけどね(笑)。

小田 とはいえ、つまらなければ翌週から見られないワケで。再ブレイクの要因のひとつは、14年に始まった人気企画「朝までハシゴの旅」。モデルの佐藤栞里を一躍スターダムに押し上げた。

津田 最近、芸能人の飲み企画が地味にブームだよね。フジの『ダウンタウンなう』でも、ゲストを酔わせて本音を聞く「本音でハシゴ酒」が鉱脈になりつつある。

指南役 トップ11の残る2つはTBSです。

草場 安住紳一郎アナの『ぴったんこカン・カン』は別格として、9位の『爆報! THE フライデー』は30位から急上昇。

津田 田原俊彦をMCに抜てきして以降、今や「あの人は今」路線の急先鋒だもんね。

大改編が空振りしたフジ

小田 ただ、これも裏のフジ『世界HOTジャーナル』の大不振の影響が少なからずある。視聴率急上昇の陰にフジのオウンゴールあり(笑)。

草場 4月にフジが大改編して始めたバラエティーの新番組がことごとく失敗したからね。ただ、バットを振らなきゃヒットは打てないワケで…。

津田 今は生みの苦しみ。鉱脈が見つかるまでのガマン。

注目番組『林修の今でしょ!講座』 15年の最高視聴率は15.2%。林先生の情報モノはとにかく説得力がある。火曜19時/テレビ朝日系

指南役 日テレに次ぐ視聴率2位ながら、思いのほかバラエティーが不調なのがテレ朝です。同局のトップは20位の『林修の今でしょ!講座』。なんと『くりぃむクイズ ミラクル9』や『Qさま!!』を上回る快挙。

津田 要は、サッカー中継とドラマ『相棒』、それに『報道ステーション』がテレ朝の視聴率3本柱ってこと(笑)。

小田 しかし林先生、14年の流行語大賞に選ばれて一発屋かとも思われたけど、生き残ってる(笑)。しかもヒットになってるのはすごいね。

草場 そればかりか、今じゃポスト池上彰の急先鋒だからね。ボケもできるから、テレビとの相性はバツグン。

指南役 全体を見ての印象はありますか?

津田 有吉人気に若干陰りが見えますね。日テレ『有吉ゼミ』は11位から22位へ後退。鳴り物入りで始まったフジの『おーい!ひろいき村』も大苦戦。

小田 そのあたりはゴールデンの露出を控えて、なるべく世間に飽きられるのを遅らせるマツコのほうが一枚も二枚も上手(笑)。

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2015年1月1日~11月7日放送分の地上波全局、19時~24時台にスタートするバラエティーで集計。1都6県、20代から70代の男女3000人が対象。データニュース社調べ

「録画してでも見たい番組」 キーワードは“テレ朝”“マツコ”

録画数ランキングとは、要は保存してでも見逃したくない番組のこと。「ながら視聴」が外れるため、純粋にファンの多い番組指標になる。『イッテQ』が7位、『DASH!!』が12位であるのを見ると、視聴率との相関関係はほぼない。その意味で、「視聴質」に近い指標ともいえる。

『アメトーーク!』の放送は23時台。これだけ支持が高いと普通、ゴールデン帯に上がりそうだが、それをしないところが、加地倫三GP(ゼネラル・プロデュサー)と視聴者の信頼関係となり、結果的に支持の高さにつながっている。

2位~4位はいずれもマツコ関連銘柄。なかでも2位の『マツコの知らない世界』は2014年10月に復活したマツコ銘柄では珍しいゴールデン帯。これも深夜時代と番組の作り方を変えなかったところが視聴者との信頼関係につながり、ファンを増やした。10位までにテレ朝銘柄が4つ。視聴率ランキングでは苦戦した同局がここでは健闘しているのが興味深い。8位と10位にはテレ東銘柄。これも同局のファン率の高さが再確認できて面白い。

[日経エンタテインメント! 2016年1月号の記事を再構成]

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