短時間勤務の子育て社員、「もっと働く」一歩踏み出す

短時間勤務中の子育て社員をどう戦力化するか。育児中の女性が多く働く企業が抱える悩みの一つだ。特に土日や夕方以降の勤務がある職場では、短時間勤務者の増加で出番が偏る、人繰りが難しくなるなどの影響が出ている。職場の負担感を抑えつつ、彼女たちがキャリアも積めるように促す模索が始まった。

丸井川崎店(川崎市)のメンズバッグ売り場のリーダー、今井美紀さん(37)は昨春、育児休業から短時間勤務で復帰する際、上司に申し出た。「育児と仕事の両立に慣れたら土日も働きたい」

当初は午前10時~午後5時の6時間勤務だった。今年4月、時短勤務者も希望すれば月4回までフルタイム勤務ができる制度を同社が導入。以降、今井さんは月4回土日に出勤し、仕事が休みの夫が長男(3)の世話をする。

斉藤洋子さんは育児休業から復帰後2カ月目から、フルタイム勤務に戻った(茨城県水戸市の京成百貨店)

丸井グループでは社員の約45%が女性で、うち約800人が子育て中。短時間勤務の社員は約350人、フルタイム勤務は100人前後いる。末子が小学3年までの間、時短勤務を選べるが、その後フルタイムに戻れず辞める例が多かった。「このままでは管理職や経営層に昇進する女性が増えない」(人事部の広松あゆみ多様性推進課長)と、制度整備に踏み切った。

時短からフルタイムへ段階的に切り替えられるように、午後8時~9時閉店の店でも勤務時間を午後7時20分までにできる「時間帯限定フルタイム」も導入した。

社員の約85%が女性でうち3分の2が販売職のワコール。店舗で働く時短社員が早くフルタイム勤務に戻れるように策を講じ始めた。

延長保育料やベビーシッター費を念頭に、末子が3歳までの間にフルタイムに復帰すれば、月1万円を補助する制度を11月に開始。京成百貨店(水戸市)のショップで働く斉藤洋子さん(35)はこの適用を受けている。

11月に第2子の育休から復帰。今月からフルタイムに切り替えた。「ブランクが長くなると仕事の感覚が鈍る」と、年度途中で保育園に入れなかった次男(0)を義母に預けて働く。

通勤は片道45分。午後7時45分まで働く遅番の夜は、長男(4)が保育園のバスで祖母の家に戻り弟と合流。斉藤さんの帰りを待つ。土曜日の出勤時は、自身の母親に迎えを頼む。日曜日の出勤日は夫が2児を世話するなど、家族が総出で協力し、仕事と育児の両立を実現している。

ワコールではさらに来年4月から「選択制短時間勤務」を導入予定。午前9時~午後4時半の短時間勤務の時間帯よりも長く働ける日を設け、社員のスキルアップを促す。

働く女性が増え、2000年代半ばから企業は両立支援策を拡充してきた。短時間勤務の期間を延ばす企業が増えた結果、休日や夜間の勤務が子どものいない社員に偏るといった問題が起きている。時短勤務が長い社員自身も経験が積めず、キャリアアップがしにくいケースも出ている。

いち早く対応したのが、国内で1万9900人の女性社員が働く資生堂だ。14年、1100人以上いる短時間勤務の美容部員に土日や夜の勤務を求める改革に踏み切った。一方で新たな出番で子育て費用がかかることに配慮。福利厚生のカフェテリア制度を改め、育児や介護に使うポイントの換算率を2割増やした。

育児中の社員を特別視しない改革については「キャリアアップにつながる」と評価する意見がある一方、「子育て女性を夜まで働かせるのか」との懸念の声もあり、賛否両論の状態だ。NPO法人ファザーリング・ジャパン(東京・千代田)が今月9日、資生堂の人事担当者や専門家らを集め緊急フォーラムを開くなど、議論になっている。

育児中の社員の働き方をめぐって議論が起こる現状について、第一生命経済研究所の的場康子上席主任研究員は、「短く働くのがワーク・ライフ・バランスではない、と考えが変わってきたことの反映」とみる。ただ、サービス産業の従事者を中心に土日を含めて働く人が増えるなか「夫や親族の支援が得られない人向けの働き方も用意する必要がある」と指摘する。

的場さんは加えて「自分で子育ての時間も持ちたい人も両立できるような選択肢も必要」ともみる。例えば、時短勤務者の働き方を緩やかにして長く働いてもらおうと考えるのが日本ロレアル(東京・新宿)だ。15年、短時間勤務制度を改定。利用可能期間を子が3歳までから10歳までに延ばしたほか、勤続1年以上で一定基準を満たせば、アルバイト契約に切り替える策を導入した。

1日3時間半以上、週2回から勤務でき、本人の申請で元の正社員か契約社員に戻れる仕組みも用意した。7月以降、3歳以上の子を持つ時短勤務者は20人、アルバイトを選んだ人は5人。「長く勤められる職場にするため、ライフステージに応じて最適な働き方を選べるようにした」(人事本部の松下奨平さん)

日本女子大学の大沢真知子教授は「共働きが標準世帯になり、女性だけで育児をできる状況ではない」と指摘する。「男性を含めた働き方の見直しと、家事や育児の分担を夫婦で考え直す、大きな時代の転換点にある」と話す。(南優子)

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