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ノロウイルスで嘔吐 どうやって消毒すればいい?

2015/12/28

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

感染力が強く、排除が難しいノロウイルス。職場や家庭内で、ノロウイルス感染が疑われる人が嘔吐(おうと)したら、どう対処したらよいのでしょうか。嘔吐物の処理は気の重い作業ですが、やり方を間違えると、周囲にウイルスをまき散らし、自身を含め二次被害を生む恐れが。覚悟と気合で臨みましょう。

■換気をしながらエプロン、マスク、手袋などを装着

まず、どんな場所にもあてはまる注意事項は、以下の5つです。

・嘔吐物を始末する人以外は別の部屋などに避難する

・窓を開け、換気を良くする

・使い捨てウェア(エプロン、マスク、手袋、靴カバー)を正しく装着する

・飛沫を飛び散らさないよう、手早く静かに処理する

・処理後もしばらくは換気を続ける

そして、処理用の「必須グッズ」を使って吐瀉物の処理と消毒を行います。必須グッズのほとんどは100円ショップなどで入手できますので、職場や家庭にあらかじめ保管しておくとよいでしょう。

ノロウイルス・嘔吐物処理の必須グッズ(1~2人で対応する場合。予備も含む)
品名最低個数ヒント使用法など
使い捨てエプロン2枚100円ショップにあるかっぽう着型長袖エプロンや、レインコート、パンツでOK裾が床につかぬよう、エプロンの場合にもレインパンツを併用し、裾はパンツの中にいれる
使い捨て靴カバー2組100円ショップのガーデニング用靴カバーなどが有用
使い捨て手袋4組丈夫なものがよい2重にする
使い捨てマスク4枚1枚が数円の3層式のマスクでOK隙間なく顔に密着するよう装着
ゴーグル2個あれば完璧使用後に要消毒
ペーパータオル厚手を多めに準備消毒面積は20m2
使い捨てペットシーツ(ペットの尿を吸いとるもの)厚手大判を5枚高分子ポリマーを含有し、裏面が防水素材のものカーペットや布団、カーテンなどの加熱消毒に使用
大判ビニール袋厚手を2重にしたものを4組汚物や汚れた衣類を入れる
小型ちりとり、へら、下敷きなど4個両手に持つため、1人あたり2個汚物をペーパータオルと共にすくう
5~10Lのバケツ4個1L、2L、3Lの位置に印を付ける消毒液希釈用、水拭き用
プラスチック性の柄杓(ひしゃく)や手桶2個消毒液をすくう
消毒液塩素系漂白剤その場で希釈する(別表参照)2通りの濃度を使い分ける

■いざ、嘔吐物処理(1)―塩素系漂白剤が利用可能な場合

まず、消毒液の希釈法から。市販されている主な塩素系漂白剤の次亜塩素酸ナトリウム濃度は、キッチン用、白物衣類用ともに約5%。本体についているキャップを用いて測定する場合、キャップ1杯は約25mLとなるので、希釈方法は以下のようになります。

次亜塩素酸ナトリウム入り消毒液の希釈法
濃度希釈法用途
1000ppm消毒液
濃い消毒液)
水1Lに20mL(キャップ1杯弱)を入れる嘔吐物や便中のウイルスの感染性をなくす
200ppm消毒液
薄い消毒液)
水5Lに20mL(キャップ1杯弱)を入れる汚染箇所の拭き取り、食器、布類のつけ置き

注意1)消毒液と酸性の強い洗剤とを混ぜると有毒ガスが発生し危険!

注意2)希釈液をスプレー容器に入れると、噴霧時に目に入る危険性あり!

注意3)保存しておくと数日で消毒効果が低下するため、その場で希釈する(市販品でも長期間保存すると次亜塩素酸ナトリウム濃度は低下)


塩素系漂白剤を希釈した消毒液を作ったら、ペーパータオルをたっぷり使って嘔吐物を幅広く覆い、上から嘔吐物と同量程度の1000ppm消毒液(濃い消毒液)を静かにかけます。へらなどを使って外側から内側へよせながら取り除き、2重にしたビニール袋に入れます。

この段階が終わったら、外側の手袋を外してビニール袋に入れ、上から濃い消毒液をかけて、内側の袋の口を縛ります。続いて、嘔吐した位置から半径2.5mを200ppm消毒液(薄い消毒液)とペーパータオルを用いて拭きます。ゴミは先ほど口を縛った内側の袋の上に入れていきます。

作業が終わったら、薄い消毒液をしみこませたペーパータオルの上に立って足カバーを消毒し、エプロン、マスク、手袋とともに注意深く外します。外側は汚染されていると考えて行動したほうが安全です。先ほどから使用してきたゴミ袋に入れ、薄い消毒液をかけて口を縛ります。

塩素によって床が痛む可能性があるので、最後に、消毒した範囲を水拭きします。

■いざ、嘔吐物処理(2)―塩素系漂白剤が利用できない場合

カーペットやソファ、布団などに塩素系漂白剤を使用すると、変色したり劣化したりしてしまいます。その場合は、熱湯を使ってウイルスを退治します。この作業のときも、マスクや使い捨てエプロン、手袋などの装着はお忘れなく!

まず嘔吐物をペーパータオルなどを使って静かにすばやく取り除きます。水分が多い時は、最初に、紙おむつ、生理用ナプキン、ペットシーツなどをあてて吸い取ると、奥までしみこむことを防げます。その後、熱湯による加熱消毒を行います。お湯をたっぷり沸かしてください。

加熱消毒に便利なのが、ペットシーツです。汚染された場所全体をペットシーツでカバーします。防水面を下、吸水面を上に向け、熱湯を吸水量いっぱいまで注ぎます(商品によって量が異なるので事前に確認のこと)。前編でもご紹介したように、85~90℃で90秒以上加熱すればノロウイルスは感染力を失います。温度の低下を防ぐためにレジャーシート(アルミの保温シートなどがあれば好適)をかぶせ、さらに厚地のバスタオルを重ねて放置します。

使用したペーパータオル、ペットシーツ、使い捨てウェアなどは、塩素系漂白剤が利用可能な場所の場合と同様に、2重のビニール袋に入れて処理します。熱湯を準備したやかんやポットの消毒も忘れずに行ってください。

■汚れた布類はつけ置き消毒か熱湯消毒

嘔吐物が付着した布類は感染源になります。そのまま洗濯機で他の衣類と一緒に洗うと、洗濯槽内と他の衣類にウイルスが付着し、一気に拡散してしまいます。

汚れた衣類や嘔吐した人が口を拭いたタオルなどは丈夫なビニール袋に入れて洗面所や浴室に運び、消毒しましょう。マスクと手袋をした上で、バケツを用いて水洗いし、次に200ppmの薄い消毒液に1時間程度浸す、または85~90度で90秒以上加熱してから洗濯機にいれます。

この処理で痛んでしまうような衣類は、残念ですが捨てる方が無難です。使い捨てエプロンや手袋などと一緒に、ビニール袋に入れて薄い消毒液を掛け、袋の口を縛って廃棄しましょう。 

■水回りの消毒も念入りに

嘔吐、下痢のある人が使用した便器の中は、ノロウイルスの巣窟。マスク、手袋、使い捨てエプロンなどを身につけ、換気を良くした状態で、濃い1000ppm消毒液を使って消毒します。トイレの床や洗浄レバーやドアノブ、ペーパーホルダーなどは薄い200ppm消毒液とペーパータオルを用いて消毒し、その後水拭きをします。

汚れた衣類を水洗いした場所や、嘔吐した患者が口をゆすいだ場所も、必ず消毒しましょう。

さらに、ノロウイルス感染が疑われる人が使用した食器も消毒が必要です。使用後すぐに、薄い200ppm消毒液に5~10分浸してから洗います。

以上、気の遠くなるような作業ですが、備えあれば憂いなし。漂白剤や使い捨てウエアなどを一式そろえた「ノロウイルス対策セット」を準備し、作業をシミュレーションしておけば、いざというときに、自分と周囲の人の感染リスクを大きく下げることができるはずです。

参考資料:「厚生労働省|ノロウイルスに関するQ&A」

85cmの高さから嘔吐するとウイルスは半径1.6mまで広がる
 嘔吐物に含まれるノロウイルスは、どのくらいの範囲まで広がるのでしょうか。東京都健康安全研究センターが、模擬嘔吐物を各種床材の上に落下させる興味深い実験結果を公開しています(*1)。
 最初に、高さ100cmから落下させて、床面で飛び散る範囲を調べたところ、模擬嘔吐物は半径2.3mの範囲に広がりました。85cmの高さから落下させたところ、飛沫は1.6mまで上がりました。また、飛散した粒子の中で、直径が小さなものは、数時間にわたって空気中を漂う可能性があることも明らかになりました。
 この結果は、消毒すべき範囲の目安となると共に、嘔吐から数時間後まで、空中にウイルスを含む粒子が漂っており、積極的に換気をしないと、清掃後に室内に入った人の顔などにウイルスが付着して口に入る危険性があることを示しています。

*1 東京都健康安全研究センター環境保健部の大貫文氏の研究報告「おう吐物によるノロウイルスの飛散」


(大西淳子=医学ジャーナリスト)

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