成年後見制度、本人の運命握る医師の診断書弁護士 遠藤英嗣

増加の一途をたどる認知症の人たちの財産を管理し、支援するのが成年後見制度です。資産承継を適切に行うためには、成年後見制度を正しく理解することが大切だということを、このコラムでずっとお伝えしてきました。ところが、成年後見制度のなかで非常に重要な役割を果たす医師でさえ、制度に対する理解が不十分だということに私は危機感を持っています。

4つの制度で構成

「成年後見制度」と一口にいっても、実は4つの独立した制度によって成り立っていることをご存じでしょうか。

「成年後見制度」は、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの制度に区分されます。そのうち法定後見制度は、さらに「後見制度」「保佐制度」「補助制度」という3つの制度から成り立っています。これらの法制度は、4つの独立した制度です。

いささか粗い説明になってしまいますが、まず「法定後見制度」の「後見制度」(「後見類型」ともいいます)は判断能力が「全くない」または「ほとんどない」人、「保佐制度」は判断能力が「著しく不十分」な人、「補助制度」は、判断能力が「不十分」ではあるものの、自分でもできるかもしれないという人が利用する制度です。

「法定後見制度」で本人を支援する人をそれぞれ「後見人」(正確には「成年後見人」)、「保佐人」、「補助人」といい、支援をする人は家庭裁判所が選任します。

一方、「任意後見制度」は、依頼者本人があらかじめ任意後見人を誰にするか決めて2人が契約し、いざというときに備える制度です。この契約を「任意後見契約」といい、公証人の公正証書で作成します。任意後見制度では、契約後、本人の判断能力が不十分となったときに、家庭裁判所に対して所定の申し立てをし、本人が同意すれば後見が開始します。申し立ての内容は、任意後見人を監督する立場の「任意後見監督人」の選任です。

医師の診断書が重要

成年後見制度を利用する場合、本人の精神の状態についての医師の診断書(成年後見用の診断書)を裁判所に提出することになっています。

成年後見用の診断書を作成する医師は認知症の専門医に限定されるわけではなく、かかりつけの医師でもよいことになっているため、成年後見の4つの独立した制度について知らない医師も多いと聞きます。

確かに、成年後見制度は、難しい制度です。保佐制度や補助制度については、高度な制度設計が必要になるうえ、本人を支援する保佐人、補助人などがどのような権限を有するのかは、一人ひとり、それぞれのケースで異なります。さらに、本人が法の枠内で自由に制度設計できる任意後見という仕組みもあるわけです。

私はある大学の市民後見人養成講座で任意後見制度の講師を務めていましたが、その受講生の中に、地方の中堅病院のベテラン医師がいました。その医師が受講した動機は、「成年後見制度を知らないから」というものでした。さらに、「任意後見制度の存在を知らなかった」とも話していました。

彼だけではなく、任意後見制度について知らないという医師はかなりいるのではないかと思います。実際、「後見人を自分で選べるなんて知らない。後見人は自分たちが作成する診断書に基づいて裁判所が選任する制度のはずだ」「任意後見は知らない。任意後見用の診断書は書けない」と発言する医師すらいるようです。

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