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今年こそ読みたいマネー本 編集委員座談会

2016/1/1

2015年末には米国の9年半ぶりの利上げや、日銀の緩和補完など、今後の資産運用に影響を与えそうなニュースが相次ぎました。16年のマーケットは波乱シナリオも予想されます。こういうときだからこそ、マーケットや経済の動きを理解するための「基礎知力」を高めたいものです。日本経済新聞で株式市場、金融政策、資産運用などを取材する編集委員3人に、これまでに読んで役に立った、面白かったマネー本を対談形式で紹介してもらいました。(司会は日経マネー編集長、深田武志)

■「データを物語に変えた」

座談会で意見を交わす(左から)田村正之編集委員、北沢千秋編集委員、清水功哉編集委員

深田:「今年はこういう本を読んだらいい」というのを挙げてもらおうと思います。まずは、株式投資の理解を深めるにはどういう本がいいかな。

田村:個人的に好きなのは『株式投資』(ジェレミー・シーゲル著、日経BP社)。シーゲル氏は米ペンシルベニア大学ウォートン・スクールの教授なんだけど、長期で株式投資をすると誰でもお金持ちになりますよという話を、1802年から2006年までの200年を超える米国の長期データに基づいて書いている。本には、その間、株は名目で年率8%超ずつ伸び、物価上昇率が1.4%だったので、実質リターンは6.8%だと。ちなみに債券は実質リターン3.5%。

データを物語に変えたとか、芸術に変えたとか言われている本。経済成長と株価、景気循環と株価、アノマリー、テクニカル分析、行動経済学など、非常に幅広い分野について基礎的なことを書いてあるので、読み応えがある。この1冊でいろいろ勉強できるのでお薦めかなと。

深田:初版はいつごろ? 何版かあるよね。

田村:初版は1994年で、いま第4版。一般的に、成長する国とか、成長する銘柄に投資するのがいいといわれるが、新興国投資が本当にもうかるかというと、1株利益で見ればそういう国や銘柄は最初から割高になっているので、もうけるには意外にハードルが高い。こういう、普通の人が投資するヒントも書かれている。長期でみると成長する国と株のリターンは全然相関しないという意外な気づきもある。

深田:北沢さんはどうですか。

北沢千秋編集委員 記者・デスク時代の大半を証券部で過ごし、株式市場や証券業界などを長年取材するベテラン編集委員。日経マネー編集長、産業部長などを歴任した。電子版にも「NISAで何を買うか」(全7回連載)、「マネー底流潮流」など多数執筆

北沢『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著、日本経済新聞出版社)もいいと思う。株式投資の基本理論や歴史の勉強になる。基本のポートフォリオを勉強しましょうということをわかりやすく書いているのがいい。ただ、私はそれだけじゃダメだと個人的には思うけどね。

田村:北沢さんはアクティブ派ですからね。

北沢:あとがきも面白い。この本を日本の初版から訳している井手正介さんが書いているんだけど、10版で何を書いているかというと、モダンポートフォリオ理論というのは壮大な虚構の世界であると。野村マネジメント・スクールでモダンポートフォリオ理論の普及に努めてきた方が、実はそんなものは大虚構の世界だということをやんわりと書いている。

田村:あんまりやんわりでもない感じがするけど。

■市場は効率的なのか――

田村正之編集委員 資産運用や家計について幅広く取材。立正大学経済学部非常勤講師を務めるほか、証券アナリスト(CMA)、ファイナンシャルプランナー(CFP)、1級ファイナンシャルプランニング技能士の資格を保有。田村優之の筆名で執筆した小説で開高健賞受賞するなど作家の一面ももつ

北沢:井手さんは最後になってモダンポートフォリオ理論を否定しているんだけど、そこに至るまでの過程、投資の歴史を学ぶには非常によい本だと思う。

深田:10版というと、リーマン・ショックの後、出た版ですよね。私もこの本で、「効率的市場仮説」というのを学んだな。清水さんはどう?

清水:「効率的市場仮説」を非常にわかりやすく書いた本に、『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』(藤沢数希著、ダイヤモンド社)がある。これを読むと、理屈がよくわかる。市場が効率的ならプロは勝てないわけだから。

田村:個人投資家の間でも「サルに勝てるのか?」とファンが多いよね。要は投資というのは、コイン投げゲームのようなものだと。

深田:やっぱり、投資をするときには効率的市場仮説とか、アクティブ投資のなんたるかをわかっていたほうがいいよね。

北沢:インデックス投資というのは優れた発明だと思うけど、プロパガンダがあまりにも強すぎて、みんなが「インデックス投資万歳」になってしまっているのが非常に危ない。

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