今年こそ読みたいマネー本 編集委員座談会

曲がり角迎えたインデックス投資

清水功哉編集委員 金融政策、為替・金融市場、資産運用などを取材。日銀の金融政策決定会合など重要なイベント終了後には、電子版に即座に解説記事を執筆する。ツイッターでもコメント発信中。証券アナリスト(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)の資格も持つ

深田:田村さんはインデックス派ですよね。

北沢:インデックス投資はいまものすごく曲がり角を迎えていると思う。2000年以降はテールリスクが頻発していて、インデックス投資が前提としているいろいろなことが崩れている。そもそも、インデックス投資のリターンは、世界経済の低成長と相まって低くなっているし、分散投資の効果も2000年代の半ば以降、3、4割減ったといわれている。そういう変化をもうちょっと考慮して、投資しなくてはいけない時代になっていると思う。

深田:それはさっき田村さんがいった、長期で投資すればもうかるという前提が崩れているということですか。

北沢:そう。長期のリターンが低くなっているし、リスクがものすごく高くなっている。要するにマーケットのボラティリティーがすごく高くなっているということをもっと考えた上で、投資をしないといけないなと。

清水:北沢さんが言ったように、リーマン・ショック以降は、確率論の正規分布を前提としたような従来の投資理論はおかしいんじゃないかという声が増えている。もし、効率的市場仮説が正しいなら、基本的にはバブルは起きないはずだけど、繰り返し、バブル、ミニバブルが起きているということは、なにか「ゆがみ」がないと説明できない。

『株式投資』(ジェレミー・シーゲル著、日経BP社)

私も市場というのは、それほど効率的ではないと思う。しかも、テールリスクが普通のリスクになってきていて、運用の世界に限らず、気象とかテロなどを含め、テールリスクという概念自体が、以前ほど妥当性をもたなくなっている気がする。ここ何年かで、100年に1度の金融危機といわれたリーマン・ショックが起きたり、1000年に1度ともいわれた大地震が起きたり、10年に1度の大雪とか大雨が降ったりしている。そしてそれがマーケットに影響している。

深田:行動経済学で面白い本はあるかな。

『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著、日本経済新聞出版社)

清水:為替市場分析の分野で有名な田中泰輔さんが21年前に書いた『金融・為替・商品 マーケットはなぜ間違えるのか』(東洋経済新報社)はいい本だと思う。行動経済学がまだ有名でない時代に、彼は直感的に、「マーケットというのは非常に人間的な部分で動いている、そこを解明しないとわからない」という分析をした。

田村:あと、行動経済学でノーベル賞をとったダニエル・カーネマンが『ファスト&スロー(上・下)』(早川書房)という本を出していて、これは、それほど金融知識のない人でも面白く読めると思う。

北沢:現実のマーケットに即した本でいうと、日本に行動経済学を紹介した先駆けである三菱UFJ信託銀行の角田康夫さんが書いた『人生と投資のパズル』(文芸春秋)。これも読みやすい。

田村:効率的市場仮説って突っ込みどころがいっぱいあるんだけども、それに取って代わる、個人が選ぶべきより確実性の高い枠組みは、まだできていないと思う。いわば民主主義みたいなもので、欠点はたくさんあるけど、ほかのいろいろなやり方に比べるとまだ間違いが少ないよね、というような。

「市場に居つづけることが大事」

『ファスト&スロー(上・下)』(ダニエル・カーネマン著、早川書房)

その意味ではインデックス投資の有効性を端的に書いた本が『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス著、日本経済新聞出版社)。これ一応、私のバイブルなんで読んでほしい。チャールズ・エリスさんが12年に来日したときにインタビューしたんだけど、当時はリーマン・ショックの後で、効率的市場仮説に対する風当たりが非常に強かった時期。エリスさんは「批判はわかるが、インデックス投資も効率的市場仮説も個人が取り得るべき比較的悪くない手段。アセットアロケーションをちゃんと考えて、いろいろなものに分散するのがお薦めだ」と言っていた。そして、「大事なのは世界に投資をし続けることだ」と。

何かがグッと上がる瞬間についてはエリスさんは「稲妻が走る瞬間」と表現していたが、それは普通は事前には予測できない。なので、市場に居つづけることが大事だと。その後の世界や日本の株価回復を経て今振り返ると、それは正しかったなと。

『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス著、日本経済新聞出版社)

北沢:まさにその通りで、モダンポートフォリオ理論に代わる使い勝手のいい理論というのがまだ出てきていない。だから、分散投資しなければいけないし、マーケットには乗っかっておきましょうというのはその通りだと思う。

ただ、インデックス投資というのは、実は大きなリスクを背負うことなんだよというのを考えておきたい。ここは結構、誤解を受けているので。例えば、日本株のリスクって2割近い。この2割のリスクを抱えられる人はインデックス投資をすればいいけど、そこまでリスクを取れない人がやるのはどうかなと、常々思っている。

深田:よくわからないままやっている人が多いということですか?

北沢:そう。ただコストが安いからと。でも、コストよりも大事なのはまずリスクだと思うんだよね。そのリスクから考えると、果たしてインデックス投資はどうなのかなと。

特に老後の運用を考えると、単にコストが安いからと、過大なリスクを追っていいものなのか。若年層の資産形成とか、まだ挽回の時間がたくさんあるという人ならそれでいいと思うが。

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