青春特化で10代女子が夢中 音楽ユニット「ハニワ」
日経エンタテインメント!
HoneyWorks(通称ハニワ)をご存じだろうか。コンポーザーのGomとshito、イラストレーターのヤマコの3人とサポートメンバーによる音楽ユニットで、自らのアーティスト活動に加え、楽曲提供や音楽プロデュースも行うクリエイター集団だ。
動画投稿サイト「ニコニコ動画」で絶大な人気を誇るハニワが、メジャーデビューしたのは2014年1月のこと。わずか1年10カ月の間にアルバム3枚を発売。その全てがオリコン初週トップ5入りを果たした。さらに、楽曲をテーマにしたライトノベル5冊が累計85万部、同じく楽曲発のアニメーション映画も2016年4月の公開が決まったという。
小中高校生女子に圧倒的な人気を誇るハニワ。これだけエンタ界を席巻した秘密はどこにあるのか。第1に、「青春ものに特化している点にある」と言うのは、レコード会社ミュージックレインの木村唯人プロデューサーと、マネジメントのインクストゥエンター滝本祐亨部長。楽曲は、"キュンキュン系""青春系"と称される明快なロックサウンド。これに組み合わさるのが、ハニワの肝ともいえるストーリーと少女マンガテイストの爽やかなイラストだ。
1stアルバム『ずっと前から好きでした。』のストーリーは3組の男女高校生の恋模様。収録楽曲を、ヤマコによるイラストに人気声優が演じるセリフを組み合わせた"デジタルコミック"にし、「告白予行練習ショートストーリー」と銘打って特典DVDとして付属。これに連動した「アフレコ企画」では、声優の声を抜きユーザーがキャラクターの声をアフレコできる動画をニコ動にアップ。いわば"2次創作"をできるようにして盛り上がりを作った。
第2に、「アルバムの展開を3枚目までしっかりイメージしていた」点。歌声合成ソフト「ボーカロイド(ボカロ)」発の彼らだが、「1枚目はボカロの集大成」として、前出の第1線の声優陣によるDVD、ヤマコによるオリジナルマンガを付属するなど、従来のニコ動からのファンが記念で必ず買いたくなるような豪華な内容に仕立てた。
2作目以降も1作目の延長線上で、神谷浩史、戸松遥、梶裕貴、豊崎愛生ら人気声優総勢11人による「キャラクターソング集」、「弟・妹世代向けのオリジナルアルバム」と、音楽の形態を変え、ストーリーを拡張してキャラクターを増やし、ファン層の拡大に成功。「コンポーザーの2人がストーリーをしっかり考えて歌詞を作り、それを核に、動画、イラストにすることで、様々なアウトプットへの展開や連動がしやすい」。こうした理由から、ライトノベルも容易に発行可能に。アニメ映画化も、見えやすかったというわけだ。
生歌でタイアップに加速
一方、ハニワが並行して行っているのが、他アーティストとのタッグだ。なかでも大きく成長しているのが、CHiCO with HoneyWorks。ソニー・ミュージック主催でボカロとアニソン特化型の全国区オーディション「ウタカツ!」で優勝したCHiCOとのコラボだ。「今までボカロの曲だったハニワが、CHiCOによって生歌を得た」。これが、ハニワがより広い層に認知されるための大きな一歩となる。
これまでの3枚のシングルは、少女マンガ原作の『アオハライド』を皮切りに、全国放送の『まじっく快斗1412』『銀魂゜』と続々と人気アニメのタイアップを獲得。そして11月18日には、1stアルバム『世界はiに満ちている』が発売された。「レコード会社としては異例ですが、ハニワ同様発売前にニコ動やYouTubeにフルバージョンをアップし、ネット上で口コミで広げることでプロモーション効果を高める」と言う。
物語性の高いストーリーと少女マンガライクなイラストを武器に、出身地であるニコ動などネットファンが喜ぶ施策を行う一方、従来のレコード会社の手法も活用。その両輪で「青春ものといえばハニワというのが定着した」のがこれまでの勝因。アルバムの発売、来春の劇場版とさらなる展開もあり、ハニワ周辺は今後もさらににぎやかになりそうだ。
(日経エンタテインメント! 平島綾子)
[日経エンタテインメント! 2015年12月号の記事を再構成]
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