LGBT、企業も動く 多様性生み強い組織へ

今年は「LGBT」と呼ばれる性的少数者への対応が大きな注目を集めた。当事者のカミングアウトや国際的な関心の高まりで、企業にも見過ごせない課題になっている。

「この写真にLGBTの人は何人いるでしょう。わかりますか?」。8日、米ギャップの日本法人ギャップジャパン(東京・渋谷)でLGBTにとって働きやすい職場づくりを目指す研修会が開かれた。同社はLGBTのスタッフがいたのがきっかけで2014年から取り組み始めた。

「LGBT」とはレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(体の性と心の性が一致しない人)の略。電通が4月に約7万人に実施したインターネット調査では、国内でも7.6%がLGBTにあたるという結果が出た。

ミクシィ子会社でネットでの結婚支援を手掛けるダイバース(東京・渋谷)は昨年に就業規則を改定。同性カップルも結婚祝い金や結婚休暇を取得できるようにした。青木治夫・経営企画室長は「ネット業界は移り変わりが激しい。多様な社員を集め、新しいことを考えてもらえる社風を作る必要がある」と話す。

こうした企業の取り組みについて、NPO法人・虹色ダイバーシティ(大阪市)代表の村木真紀さんは「カミングアウトする人が増えてきたことが背景にある」とみる。国際基督教大学と共同で2~3月に実施したネット調査によると、当事者の34%が職場でもカミングアウトしていた。

13年末に公布された男女雇用機会均等法の規則で、LGBTへの差別的言動がセクハラとみなされるようになったことも追い風だ。大阪ガスが社内方針でLGBTへの対応を明文化し、KDDIが採用のエントリーシートから性別記載欄を削除するなど、日本の伝統的な大企業の間でも取り組みが広がり始めた。

グローバル対応

経済活動のグローバル化も企業の対応を後押しする。

今年3月に野村証券に中途入社し、周囲にゲイであることを公言しながら人材開発部で働く北村裕介さん(33)は「社内にダイバーシティ(多様性)が浸透していて、とてもやりがいがある」と喜ぶ。

野村証券は08年にリーマン・ブラザーズの欧州・アジア事業を買収、LGBTを支援する文化を引き継いだ。LGBTに理解を示す社員を、英語で味方を意味する「Ally(アライ)」と呼び積極的に意思表示してもらっている。担当者は「グローバルに人材を集め競争力を高めていく上で、LGBT対応は欠かせなくなった」と強調する。

世界では米国や英仏など約20カ国が同性婚を法律で認めており、米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)のように同性愛者であると公言する経営者も現れ始めた。日本で対応に取り組む企業はまだまだ少数派だが、任天堂が米国で販売したゲームに同性婚の設定がなかったことで謝罪を迫られるなど、対応の遅れは国際的な非難も招きかねなくなってきた。

「もう20社以上落ちています」「面接に行っても一瞬でダメと分かることがある」。13日、NPO法人「ReBit(リビット)」(東京・新宿)が開いた集会でLGBTの若者が就職の悩みを打ち明けた。自身もトランスジェンダーである薬師実芳代表は「面接で心ない質問をされることもあり、就活をあきらめる人も少なくない」と話す。

管理職「嫌だ」多く

3月に実施された大規模な意識調査では、同僚に性的少数者がいることに対し、とくに管理職の男性で「嫌だ」と答えた人が多かった。調査に関わった国立社会保障・人口問題研究所の釜野さおり室長は「日本企業はまず管理職の意識改革が必要」とみる。今年だけのブームに終わらせず、長期的な取り組みが必要になりそうだ。

同性パートナー適用に称賛の声 携帯や保険で広がる

短文投稿サイトのツイッターでもLGBTに関する多くのつぶやきがみられた。

携帯電話会社が家族割引を同性パートナーにも適用する取り組みを「LGBT対応素晴らしい」と称賛する声や、生命保険会社の間で同性パートナーを保険金の受取人にできるようにする動きが広がっていることについて「こういったことが徐々に増えてくれるのは本当にうれしい」という喜びの声が上がっていた。

自治体が同性カップルに証明書を交付する動きへの声も目立った。東京都渋谷区などに続き、那覇市も証明書交付を検討していると今月11日に地元紙が報道。「行政かくあるべし」という声の一方で、こうした証明書について「法的効力はないし、どこまで有用なのかはわからないですね。様子見かな」という冷静な意見も。調査はホットリンクの協力を得た。

(本田幸久)