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保険の新常識

もっとも「損が少ない」保険を考えてみた 保険コンサルタント 後田亨

2015/12/21

 「お得な保険を紹介してください」。一般の方からもメディアの方からもよく言われることです。ただ「何をもって『得』だと考えることにするのでしょうか?」とお尋ねすると、まず即答は得られません。

 私なりに「得」を定義すると「損が少ないこと」だと思います。そもそも、不測の事態に備えるための保険の利用価値は、保険料が「掛け捨て」になる仕組みに支えられています。

 たとえば、30歳の男性が月額1200円程度の保険料で1000万円の死亡保険金を用意できるのは、保険期間中に死亡しなかった場合、保険料は自分以外の人のために使われ手元には戻ってこないからです。

 また、保険金の支払いに充てられるお金は、保険料から保険会社の運営費を引いた残りのお金です。従って、払った保険料と受け取るお金の差し引きがマイナスになることを「損」だと考えると、保険会社が保険料の設定を間違いでもしない限り、トータルで加入者が「得する保険」は存在しないことになります。

 保険会社の健全な運営を考えると、保険金支払いの可能性をある程度高めに見込むことは必要なことでしょう。すると、加入者から見ると、企業努力により運営費が抑えられている保険が、相対的に損が少ない好ましい保険だといえると思います。

 貯蓄性があるといわれる保険でも同じです。保険料から引かれる保険会社の運営費は、積み立てや運用には回らないわけですから、運営費部分が少ないほど有利だと考えられるのです。

 具体的には、どんな保険でしょうか。私は、保険会社で働いている人たちが愛用している「団体保険」が、おそらく最も損が少ない保険ではないかと、思っています。

(1)運営費の割合が低い
(2)保険料が安い
(3)保険本来の利用目的になじむ

 と考えられるからです。団体保険は特定の企業や業界グループ向けに販売されている保険です。加入者の募集についてはパンフレットを配布する程度なので、保険会社の運営費が低く抑えられます。大量の広告に要する費用や対面販売を行う営業担当者や代理店への手厚い報酬が発生しないからです。その分、死亡保険金や入院給付金として加入者に還元されるお金の割合が高くなります。

 また、運営費部分に必要な保険料が少ないことに加え、長くても75歳くらいまでの期間限定の保障であるため、個人向けに展開されている商品より保険料が安いことが多いのです。同程度の保障内容の場合、半額以下であることも珍しくありません。

 保険には中途解約時や満期時に一定額が払い戻される商品もあるため、その類いの商品について「戻ってくるお金を考慮すると、保障に要する実質的なコストが下がるのでお得」といった評価がされることがあります。

 しかし、払い戻し部分がある契約では、保険料自体が高額になりやすいので、仮に販売手数料などの率が低かったとしても、額自体は大きくなる傾向があることを忘れてはいけません。もともと保険とは、損が出やすい仕組みの商品なので、保険料の額そのものが少額であることが何よりなはずです。

 現役世代の死亡保障や長期所得補償など、頻発しない事態に備えるために団体保険を利用するということは、まれに発生する不幸な出来事に安い保険料で手厚く備えられるという保険の特性にもかなっています。

 貯蓄や運用目的の商品は掛け捨てではないため、保険を利用しなければならない理由は特にありません。保険は販売手数料などが高いため損が大きいと理解して構わないはずです。

 団体保険のような個人向け商品が増えないのは、保険会社の人たちが好む保険について知らない消費者が多いからでしょう。改めて繰り返し伝えていく必要を感じます。

後田亨(うしろだ・とおる) 大手生命保険会社や乗り合い代理店を経て2012年に独立。現在はバトン「保険相談室」代表理事として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。著書に「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)や「がん保険を疑え!」(ダイヤモンド社)、「保険会社が知られたくない生保の話」「保険外交員も実は知らない生保の話」(日本経済新聞出版社)など。公式サイトはhttp://www.seihosoudan.com/とhttp://www.yokohama-baton.com/

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