ライフコラム

ヒット総研の視点

女性の「オタク化」象徴する3つのヒット 日経BPヒット総合研究所 品田英雄

2015/12/24

日経BPヒット総合研究所

エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を切るコラム「ヒットのひみつ」。今回のキーワードは「オタク女子」です。かつてオタクといえば男子の専売特許でしたが、最近では若い女性のオタク化が進んでいるようです。

流行情報誌「日経エンタテインメント!」では、2015年もヒット番付を発表した。ヒット番付のエンターテインメント版だ。

上位には記録的ベストセラーになった「火花」(又吉直樹著)や冠番組が急増したマツコ・デラックスらなじみの顔が並ぶが、中位には「オタクな女性」たちが支持した作品がいくつも入っている。

かつてオタクといえば、リアルなものに興味を持てない男性たちを象徴する言葉だったが、最近は若い女性たちがオタク化しているようなのだ。そうした新しいヒットのキーワードを紹介しよう。

【キーワード1】 コミック発胸キュン映画

意味:少女マンガ原作の実写版映画のこと。胸がキュンとなるような甘酸っぱい青春モノがほとんど

2015年は少女マンガを原作とした実写映画が次々とヒットした。

まず「ストロボ・エッジ」。元々は「別冊マーガレット」に連載されていた咲坂伊緒原作のマンガだ。ヒロインが学校一のモテ男子に告白するが、振られてしまい…。そこから始まる学園ラブストーリーだ。

福士蒼太と有村架純の主演で3月に公開。興行収入は23億円を超えるヒットとなり、関係者を驚かせた。

9月には幸田もも子が「別冊マーガレット」に連載していた「ヒロイン失格」が公開された。幼なじみの男の子に彼女ができて落ち込んだヒロインのところに、学園一のイケメンが熱烈アプローチ。彼女はどっちを選ぶのか…。出演は桐谷美玲、山崎賢人、坂口健太郎ら。

少女マンガ発胸キュン映画「ヒロイン失格」(c2015映画「ヒロイン失格」製作委員会c幸田もも子/集英社)

ほかにも、少女マンガの映画化が相次いでいる。いい男たちが登場し、なぜかヒロインを好きになってしまうという女性に都合のいい話がほとんど。「現実ではありえないでしょ」と思えるが、そこが女性たちの心をくすぐるらしい。

【キーワード2】 新乙女系ゲーム

意味:女性が男性を育成することを楽しむゲーム。乙女ゲームは疑似恋愛を楽しむ内容が多かったが、新しいタイプでは男子の育成が柱になっている

ゲーム界でも女子の力が増している。2015年一番の話題は「刀剣乱舞-ON LINE-」の大ヒット。設定は以下のようなものだ。

西暦2205年、時間を遡り歴史を改変しようとする者たちが現れ、過去への攻撃を始めた。これに対抗するため、政府は「刀剣男子」と呼ばれる戦士を生み出し、歴史を守る戦いを始めた。日本的ファンタジーとSFが融合した世界観で、プレーヤーは刀剣男子を育成し、彼らを束ねて敵に立ち向かう。

新乙女系ゲーム「刀剣乱舞-ON LINE-」(c2015 DMMゲームズ/Nitroplus)

戦艦を擬人化して大ヒットになった「艦隊これくしょん」と同様の企画だが、「艦これ」が女性キャラを使って男性ファンをつかんだのに対し、「刀剣乱舞」は男性に擬人化している。これが女性たちの気持ちをつかんで大ヒットになった。

実際に、全国各地に残る歴史的名刀を博物館に訪ねる女性たちが増えて「刀剣女子」は流行語になった。

現代で男性アイドルを育成することで人気になっているのが「あんさんぶるスターズ!」だ。

男性アイドルの養成に力を入れる学園に転校してきたのはある女の子。彼女(プレーヤー)はアイドルのプロデューサーとして彼らを育てていく。

男性たちのイケメンぶり(もちろん描かれたもの)、それに起用された人気声優たちの人気もあって、女性たちの心をつかんでさらに人気拡大中だ。

男性が女性を育成することが主流だったゲーム界でも、女性が男性たちを育成するという逆転現象が起きている。

【キーワード3】 2.5次元舞台

意味:マンガやアニメ、ゲームを原作とした舞台化作品のこと

2015年は2.5次元作品の数が増え、約100作品が上演された。ぴあ総研の調べによれば、全体の動員数は145万人程度、市場規模も100億円を超えたと推計される。

3月には東京・渋谷の代々木競技場の隣に2.5次元作品の専用劇場「アイア2.5シアタートーキョー」(座席数824)がオープンし、常に作品を上演できるようになったことが人気を後押しした。稼働率はほぼ100%だという。

2.5次元舞台「ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-」(c岸本斉史 スコット/集英社 cライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」製作委員会2015)

2.5次元ミュージカルの人気は2003年に初演された「テニスの王子様」から火が付いたが、最近では「弱虫ペダル」「黒執事」といった女性読者が中心のものから、「NARUTO」や「デスノート」など幅広い読者まで持つものに広がっている。ただ、観客はここでもほぼ女性だ。

近年は日本の俳優のレベルも上がっているうえ、演出はコンピューターと連動した照明や音響でどんどん進化していて、見ていてもあきない。ただ観客は、出演俳優たちがどれくらいマンガのキャラクターに似ているかを話題にするのが特徴だ。

年明けには、テレビドラマでも人気になった「花より男子」やゲームで人気になった「刀剣乱舞」がスタートする(トライアル公演は2015年秋に実施)。この勢いはしばらく続くだろう。

これまで男性たちが作っていたエンターテインメント作品を女性たちがどんどん手掛けるようになって、女性たちの気持ちをつかめるようになってきた。どの作品にもイケメンが数多く登場し、女性たちを楽しませている。それは、リアルな男に恋できない時代の到来を象徴しているのだろうか。

オタク女子と男性のオタクを比較して、「好きなものにはまるのは男性と一緒。ただ異なるのはオシャレでコミュニケーション力があることかな」とある女性は説明していた。

品田英雄(しなだ・ひでお)
日経BPヒット総合研究所 上席研究員。日経エンタテインメント!編集委員。学習院大学卒業後、ラジオ関東(現ラジオ日本)入社、音楽番組を担当する。87年日経BP社に入社。記者としてエンタテインメント産業を担当する。97年に「日経エンタテインメント!」を創刊、編集長に就任する。発行人を経て編集委員。著書に「ヒットを読む」(日経文庫)がある。
[参考]日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

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