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放任主義で育てた弟子たちの通信簿

立川談笑

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NIKKEI STYLE

 以前この欄で(見習いの見習いは落語家のインターンシップだ)として、落語界の徒弟制度や私なりの弟子入り志願者への接し方などを書きました。今回は、その続き。弟子の育成と、現在いる弟子たちの話をします。

「談笑さんのところのお弟子さんたちは、本当にすごいねえ」とたびたび言われます。二つ目の弟子、吉笑(きっしょう)と笑二(しょうじ)のことです。もちろんありがたいことです。でまたとびきり優秀なんです、この2人が。(……ええ。弟子たちに業務連絡。今回は徹底的に褒(ほ)め殺しだから、覚悟しておくように)。

ところがその一方で、「自由に育てているから」とも言われる。これがちょっと誤解を招くかなあとも。確かによそのお師匠さんには何かにつけ厳しく育てる方はいらっしゃいます。なんなら談志もそうでした。あ、談志は育てないのにただ厳しい、か。いやいや、それはさすがに言いすぎ。

まず、私はプライベートで弟子を使うことはありません。使う人は使います。ゴルフ場の行き帰りの運転をさせて、師匠がコースを回っている間、弟子は車でずっと待機しているとか。ほかには、空港や新幹線の見送り、お迎えにずらりと弟子が居並ぶとか。こういうのが私は好きではありません。

考えようによっては、わずかでも多く師匠と身近に接することで吸収すべきものがあるということでしょう。その意味では私の方が味気ない師弟関係といえるのかもしれません。実際、師匠談志との思い出の多くは、矛盾にまみれて駆けずり回っていたときのものが圧倒的に多いのです。ううむ。

それはともかく。そんなわけで私が前座だったときと比べると、今の私の弟子は自由になる時間がたっぷりあります。仕事で拘束される時間以外は、師匠の用事に振り回されることがほとんどないのですから。

そこで、その自由時間を落語やその他の稽古に存分にあてなさいと指導しています。やってもやらなくても本人の自由。さあ、ここで。弟子たちはやるのかやらないのか。やるんです。理由は、私が容赦なくクビにするから。

落語家は、誰も見ていないところで稽古を積む地味な稼業でもあります。この作業は前座だけでなくこの先ずっと続くのです。地道にやるべきことを自律的にできないのなら、まず落語家に向いていない。あるいは、とことん頑張っていてもそれが成果となって表れないのであれば、それもまた落語家としてはたぶん向いていない。若い彼には、別のもっと向いた道に進むよう強く勧めることになります。おっと、それもこれもあくまで私、立川談笑の価値観と方針です。念のため。

弟子たちにいつも言うことがいくつかあって、まずは「大好きなものを増やせ」。スカッシュ、小説家、ウクレレ、寺院建築、天文学、北アフリカ、食品添加物、ラッコ……。何でもいいから、どんどん好きなものを増やしなさいと。

探すのではなく、興味のないことを好きになる作業です。身の回りに興味と喜びの網を張り巡らすことは、「落語家は世情のアラでメシを食い」といわれるように、まずは商売の役に立つ。また何よりも人生の楽しみが何倍にも増えると思うのです。

それから、我々は落語のプロなのだからと、職業として成り立たせるための話もします。よくパン屋さんに例えます。もしもきみが天然酵母の素晴らしくおいしいパンを焼き上げたところで、お客様の手に届かなければ意味がない。そして、もしもわずかなお客様から世界一おいしいと絶賛を受けたところで、「知る人ぞ知る」パン屋さんの段階で満足するのはどうだろう。

素晴らしいものを作ったなら、もっとたくさんの人に味わってほしいと思わないか。自分を声高に宣伝するのは恥ずかしいと思うかもしれない。でも、たいしたことがないものを良いもののように宣伝するのは恥ずべきだけど、良いものだと信じるなら胸を張って大いに広く宣伝すべきだ。きみたちの落語を、世間が待ってるんだ!

最後に弟子たちを紹介します。

立川吉笑。31歳。京都出身。倉本美津留さんの教えを受けた元お笑いコンビ出身という経歴で、主に新作落語を手掛ける。カルチャー系といえばいいのか、従来に比べて着想と展開を飛躍的に進化させた新しすぎる落語をぞくぞくと作っている。落語に興味がない層を明確にターゲットに据えて着実な成果を挙げると同時に、旧来の落語好きからの支持も強い。とりわけ高田文夫先生のお気に入り落語家なのは羨ましい。最先端の思想家や研究者たちと競演するイベントでは、対話を踏まえた落語を即興で発表するとか。

NHKのEテレ「デザインあ」のたぬき師匠をはじめ、TVやラジオでも活躍している。今年は全国ツアーを展開。さらに今月、水道橋博士のメルマガに寄せた記事を元にした『現在落語論』を出版! これがなんと入門して5年。まだ5年かあ。落語の内容の深さもフィールドの広さも、素晴らしい。発想ばかりでなく、実は落語の技術も卓越しているのを師匠は知っているぞ。将来、古典の世界でも暴れることを期待している。

立川笑二。25歳。沖縄出身。吉本のNSCというお笑い学校を経た、こちらも元お笑い。一番弟子の吉笑とは半年違いの入門なのに二つ目昇進は2年もの差があるのは、立川流のルール変更があったから。当時、前座なのにガンガン客が受けるところからついたあだ名がスーパー前座。そりゃそうだ。それ以前の談志基準(談笑目線の)であればとっくに二つ目だもの。

古典落語にさらりと独自のアレンジを加える爆笑系。まずはフラがある。フラとは、見ているだけでにじみだす面白みのこと。キャラクターやストーリー展開を吟味していて、細かく修正したセリフや人間関係、新しく付け足したギャグは知らない人なら笑二の手によるものだと分からない。そのくらいの工夫がある。またギャグを含めた登場人物のやりとりに、今どきのお笑いで研究されてきたボケ・ツッコミのバリエーションを忍ばせている。

そして何より、稽古をしている。並みの落語家たちの何倍も稽古をしている。爆笑ばかりでなく、語り口で聴かせる。2月に沖縄で談笑・笑二初の親子会を開催するので、地元の皆さんは東京で落語ファンを大いにうならせている若い落語家の姿を是非見てほしい。また今年隔月で開催していた独演会を、来年からは毎月にするのだとか。ナイス、ファイト!

前座の笑坊(しょうぼう)、前座見習いの小田くん(まだ名前なし)は二つ目になったところで紹介しますね。さてと、弟子たちの褒(ほ)め殺しはこれでおしまい。ダメ出しは個別にこっそりやるので、各自そのつもりでね。

(次回は12月30日更新予定)

立川談笑(たてかわ・だんしょう) 1965年、東京都江東区で生まれる。海城高校から早稲田大学法学部へ。高校時代は柔道で体を鍛え、大学時代は六法全書で知識を蓄える。予備校講師など様々なアルバイトを経験し、93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。テレビの情報番組でリポーターを務めながら芸を磨く。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名。05年に真打昇進。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評がある。十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
<今後の予定>ゲストも参加する「新春談笑ショー」2016年1月12日に開かれるほか、独演会2月6日、3月6日、4月13日の予定。吉笑(二ツ目)、笑二(同)、笑坊(前座)の弟子3人とともに武蔵野公会堂(東京都武蔵野市)で開く一門会は12月25日の予定。
立川談笑HP http://www.danshou.jp/

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