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介護者にも休息を 地域で支え、活動広がる

2015/12/13

 介護をする人の苦労や悩みを理解し、一時的な休息(レスパイト)の機会を与えるなど支援の動きが広がってきた。介護者を支える法律制定を求める声も上がっている。

 12月5日、堺市中区の深井東町会館で「出前レスパイトカフェ」が開かれた。レスパイトを考える会(堺市)と自治会の共催で、介護をしている人や介護に関心がある住民約30人が介護保険の説明を受けた後、お茶を飲みながら雑談や合唱を楽しんだ。

■町ぐるみでお節介

 77歳の夫を介護する沢井千代子さん(75)は「介護していることを近所の人が知ってくれれば助けてもらえます。家にこもって介護している人はぜひ外に出てほしい」と話す。3月に仲間5人でレスパイトを考える会を設立した永重史郎代表(67)は「介護者には息抜きができる場が必要。こうした催しを中区から広げたい」と狙いを説明する。

 同市は今年度から身近にいる介護者に声かけや簡単な手助けをする「お節介士」の養成を始め、約170人を認定した。永重さんもその一人。一般社団法人日本エルダーライフ協会(京都府木津川市、柴本美佐代・代表理事)が2012年に始めた仕組みで、同協会の約3時間の講座を受けるのが認定の条件だ。講座では介護保険制度の使い方、介護費用、高齢者住宅の特徴などをわかりやすく教える。

 「介護も子育ても含め、お節介な町・堺を目指す」(堺市の竹山修身市長)。市長自身も親族で5年間、実母を24時間介護した経験があり「介護者が休息をとるレスパイトはとても大切。お節介士を増やすなど地域で共助しやすい雰囲気を作りたい」と語る。

 厚生労働省は25年には認知症の人は約700万人、65歳以上人口の5人に1人になると推計する。介護保険制度により介護される人への支援は進んだが、逆に「制度があるから助けはいらないだろう」との誤解も生まれ、介護者が孤立する例も増えている。政府は医療・介護施設など地域全体で支える「地域包括ケア」を推進しており、隣近所の協力が一層重要になる。

 協会は年20回ほど講座を開き、地域で活動するお節介士は関西を中心に300人を超えた。「在宅介護を支えている家族は貴重な介護人材。それをつぶしたら地域包括ケアは無理」と柴本代表理事。今後は企業向けの介護講座など法人対策も強化する。

 一般社団法人日本ケアラー連盟(東京・新宿)は認知症の高齢者だけでなく、障害や難病など様々なケアの役割を担う人をケアラー(介護者)と位置づけ、介護される人、する人がともに尊重され、無理なく介護を続けられる環境を整える活動を進めている。

■「家事代行券」配る

 連盟が10年に全国5地区で実施した調査ではケアラーがいるのは5世帯に1世帯。4人に1人が複数の人をケアする厳しい実態が明らかになった。「介護保険法では介護者支援は任意で、支援する役割の人がいないのが現状。介護者も助けないと共倒れになる」。連盟の代表理事を務め、介護問題に詳しい堀越栄子・日本女子大教授は指摘する。

 連盟は6月、ケアラー支援推進法案(仮称)をまとめた。基本的な施策として介護者の状況やニーズを診断して適切な支援をするアセスメントの実施、介護者を地域で包括的に支援する拠点整備などを求めており、昨年3月に発足した自民党のケアラー議員連盟などに実現を働きかける。

 介護者支援に取り組む自治体は次第に増えている。東京都杉並区は高齢者を同居で介護する家族が休めるよう、1家族に24枚(1枚1時間)の利用券を配り、掃除や洗濯、買い物などの家事代行サービスを受けられるようにした。「法律ができればそれに沿って全国戦略を展開でき、自治体も取り組みやすくなる」と堀越教授は指摘する。

■「レスパイト」認知度低く 制度整備に期待の声

 ツイッターでは「介護疲れで自殺してしまう人の気持ちがやっとわかりました」など、介護者自ら厳しい現実を吐露するものが目立った。

 11月に埼玉県で起きた介護疲れでの無理心中には「娘が殺人罪と自殺ほう助なの?つらすぎ。そして他人事ではない」と同情も多く、「お年寄りや社会的弱者を見捨てて何が美しい国?一億総活躍なの?」と国を批判する声が多い。

 英語で「ひと休み」を意味する「レスパイト」の認知度は低いようだが「レスパイトとかある人はいいな。何か月も付きっきりだともう全部がボロボロ」など期待はある。「本当に必要なのは家族介護している人への支援。介護者が倒れたら要介護者の明日はない。家族にも制度整備を」という意見もあった。調査はNTTコムオンラインの分析ツール「バズファインダー」を用いた。

(編集委員 宮内禎一)

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