エンタメ商業施設「エキスポシティ」狙いは子育て世代

日経トレンディネット

2015年11月19日、大阪府吹田市の万博記念公園内エキスポランド跡地に日本最大級の複合商業施設「エキスポシティ」がオープンした。“体験”をウリに集客を狙うのは今や大型商業施設のトレンドだが、エキスポシティはほかの施設と一線を画す。

大阪モノレール「万博記念公園駅」から徒歩2分。甲子園球場4.5個分に当たる17万2000平方メートルの敷地に、8つの大型エンタテインメント施設と305店舗が入居する「ららぽーとエキスポシティ」がある
「ガンダムVSシャア専用ザク」が高さ約5メートルの巨大ジオラマスケールで登場

最寄り駅を下車してまず目に入るのが、エントランスすぐの「空の広場」に面した7つの大型エンタテインメント施設。屋外に単独で建ち並ぶ光景は、万博のパビリオンやUSJのアトラクション施設を思わせる。大阪万博が開催され、エキスポランドとして長年親しまれた土地でもあり、住民の期待に配慮した設計なのだろう。万博のシンボル「太陽の塔」を望めるスポットも多い。

エンタメ施設の多くが、教育的要素を取り入れた「エデュテイメント施設」であることも大きな特徴だ。三井不動産が手がける「ららぽーと」は、これまで子供向け職業体験型テーマパーク「キッザニア」を東西で導入。子供と保護者の支持を得て成功に導いている。その経験もあり、教育熱心な子育て世代を取り込めば、リピーターの獲得につながるという考えだ。

イベントステージを備えた「光の広場」には幅8メートルのタッチ式大型ディスプレイを導入
大阪万博のパビリオン「三井グループ館」で着用されたユニフォームを思わせるインフォメーションスタッフのユニフォーム

体験の目玉は「ニフレル」と「ポケモン」

エンタテインメント施設の中で特に人気が高いのが、大阪天保山にある水族館「海遊館」のプロデュースによる新感覚のミュージアム「ニフレル」だ。「感性にふれる」をコンセプトに、約150種の魚類や水辺に生息する哺乳類などを独自の手法で展示。ガラス越しに間近で見られ、展示や映像体験を通じて生き物と自然の魅力を再認識できる。

「海遊館のような大型水槽を使った展示とは全く異なり、一つひとつの生き物の個性と魅力にフォーカスし、あえて小さな水槽にするなど魅力を伝えられる展示にした。色彩や行動、形態など多様性をテーマに空間を構成している」と、ニフレルの小畑洋館長。尼崎市から来た4人家族は「手が届きそうなくらいに近くに動物がいるのが楽しい。展示物が入れ替わるならまた来たい」という。

「みずべにふれる」ゾーンの目玉は池のまわりを悠々と歩き回るホワイトタイガー。運が良ければ、頭上を歩くトラの肉球が見られるかも
コの字形の水槽に住むイリエワニはどの角度からでも間近で見られる

入ってすぐの1階は、アートを鑑賞するミュージアムのようなゾーン。2階は動物園や水族館の展示に近いが、アナホリフクロウやワオキツネザルが目の前を自由に動き回り、間近で見られる体験はちょっとした感動モノ。ホワイトタイガーやイリエワニ、ミニカバなども、動物園とは違う距離感で見学できる。直径5メールの球体が描き出す神秘的な空間アート「ワンダーモーメント」は、とりわけ子供たちに人気のゾーン。池田市の4人家族は「地球のような球体から降りそそぐ光を追いかけるのが、子供たちにとっては楽しかったみたい」という。

ただ、混雑していたためにゆっくりと見学できず、肝心の動物が寝ていて「やや期待外れ」という声も。料金も海遊館より安いが、期待していた体験ができず、割高感があるという意見もあった。行列を避けるならば、夕方6時前後に入るか、時間指定で入館できるウェブチケットを事前購入するのがオススメだ。

「ポケモンエキスポジム」のエントランス。メンバーズカードを購入してから入場
シアター型プログラムではポケモンとリアルタイムで会話できるのが魅力

「ポケモンエキスポジム」はポケモンが初めてプロデュースしたアミューズメント施設。「ポケモンのゲームはポケモンを探して集め、誰かと交換するというコミュニケーションが前提。ポケモンらしさを生かしたインタラクティブな遊びを楽しめる」と、ポケモンコミュニケーションズのエグゼクティブプロデューサー、齊藤信和氏は説明する。同館も土日は混雑するが、比較的入りやすい時間帯もあるようだ。一度来館すればメンバーカードが手に入るので、二度目からはスムーズに入れるだろう。

穴場は米国の街並みを再現した“英語村”

認知度がまだ低いせいか、比較的入りやすかったのが、日本初の体験型英語教育施設「オオサカ イングリッシュ ビレッジ」。米国の街並みやスポットを再現した空間で、日常生活や文化を疑似体験しながら英語を学べる施設だ。

日本初の体験型英語教育施設「オオサカイングリッシュ ビレッジ」では、米国の生活を疑似体験しながら英語を学べる
ニューヨークのタイムズスクエアを再現したスペースにはイエローキャブも展示

館内には、洋服店や郵便局、交番、レストランなどを再現した部屋のほか、ハリウッドやホワイトハウスといった有名スポットを再現したシチュエーションルームが23カ所。子供が体験できる1部と2部は各4時間で好きなクラスに参加できる。1レッスンの所要時間は約30分。初級、中級、上級と英会話のレベルも表示されているので、子供だけでなく大人も気軽に楽しめそうだ。

入場料は大人・子供ともに平日の昼間で5400円。親子で参加すると1万円を超えるため、利用者は限られそうだが、ウェブでの事前予約だけでなく当日客も徐々に増えてきているという。

懐かしい“万博メニュー” レストラン街も話題満載

エンタメ施設の間を左方向へ進むと、ショッピングエリア「ららぽーとエキスポシティ」の外部レストラン街「エキスポキッチン」が広がり、さらに行くと屋内モールにたどり着く。

18店舗が軒を連ねるエキスポキッチンの注目店は、万博当時のポスターやグッズなどのコレクションを店内に展示する「万博食堂」。フライドチキンやフライドポテト、ハンバーグなど、大阪万博を機に広まったメニューが豊富。なかでも、ステーキバーガーやボルシチなどを盛り合わせた「万博プレート」「アメリカ館の月の石ハンバーグ」が好評だ。店内モニターでは、当時の映像が放映されているので、万博世代は懐かしい気分に浸りながら食事を楽しめる。

フードコートの入り口には、1970年の万博で着用されたユニフォームやパンフレットなどを展示。床にはエキスポ70のイラストマップが描かれ、壁には当時の新聞記事がデザインされている
万博食堂の店内には当時の懐かしいグッズが展示されている

大阪万博で日本初上陸した「ケンタッキーフライドチキン」も、ビュフェスタイルのレストランを出店。バンダイが手がける国内初のベーカリーカフェ「BCベーカリー」では、キャラクターとのコラボメニューを楽しめる。同社が直営展開する関西初のガンダム専門店「ガンダムスクエア」にはガンダムカフェも登場。ガンダムの世界観を表現した店内で、大阪ならではのメニューも味わえる。

約1200席収容のららぽーとエキスポシティ3階「フードパビリオン」には、東京のラーメン店「つじ田」や大阪鶴橋の韓国料理店「まだん」など17店舗の人気グルメが集結。フードコートの入り口には、万博のユニフォームやパンフレットなどのグッズを展示。太陽の塔を一望できるカウンター席もあり、万博気分を堪能できる。

大阪万博で日本初上陸した「ケンタッキーフライドチキン」の新業態レストラン。70分食べ放題のランチは平日で1人1880円(大人)
東京の人気ラーメン店「つじ田」はつけ麺が自慢

都心のブランドが勢ぞろい、大阪キタとの地域間競争に発展か

ファッションテナントも圧巻だ。海外の著名ブランドから国内の大手セレクトショップ、スポーツブランドの直営店まで、従来の広域・郊外型ショッピングモールでは見かけないテナントが多数出店している。開発主の三井不動産によると「従来のららぽーとよりワンランク、ツーランク上のテナントをそろえた」という。

しかも、オープン直後の週末は、ファッション感度の高い男女と若いファミリー客が目立って多かった。上質なものをおしゃれに着こなす10~40代のファッション好きが、休日を利用してショッピングを楽しみに来たといった印象だ。八尾市から来店した20代の女性客は「アバクロンビー&フィッチ」で洋服を購入。「銀座店でも買ったことがあり、オープンを待ちわびていた」と話す。

「アバクロンビー&フィッチ」はショッピングモール初登場。兄弟ブランドの「ホリスター」も大阪エリア初出店
メンズ、ウィメンズ、チルドレンをそろえる日本初のフラッグシップストア「ポロ ラルフローレン」

テナント構成で特に注目されるのが、国内の有力セレクトショップが主力業態と郊外向け業態の2店舗を出店していること。ビームスは「ビームス」「ビーミング・ライフストア・バイ・ビームス」、アーバンリサーチは「アーバンリサーチ」「アーバンリサーチ ドアーズ」を展開。ユナイテッドアローズも「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」を出店している。また、梅田のグランフロント大阪に店舗を出店している「ロンハーマン」は、屋外に面した立地に路面店風のコンセプトストア「RHCロンハーマン」を出店した。

さらに「ポロ ラルフローレン」がメンズ、ウィメンズ、チルドレンをそろえた日本初のフラッグシップストアを出店したほか、「アルマーニ エクスチェンジ」「ケイトスペード・ニューヨーク」「マイケル・コース」といった海外の著名ブランドも勢ぞろいし、都心のファッションビルや駅ビルにも引けを取らない顔ぶれだ。

ここ数年、JR大阪駅を中心に大規模な再開発プロジェクトが相次ぎ、大阪キタエリアは未曾有の流通戦争に突入。最近はインバウンド消費の急増により、一見活況を呈してはいるが、依然厳しい戦いが続いている。そんななか、関西人にとっては思い入れの強い万博の地に出現したエキスポシティは、至近距離にある梅田の百貨店や商業施設には最大の強敵となるだろう。年間来場者目標は1700万人。「日本を代表する新しい大阪の観光名所」(三井不動産)を目指すエキスポシティが、既存店舗にとって脅威の存在になる日はそう遠くないかもしれない。

「千里バンパクロフト」には「コップのフチの太陽の塔」や、岡本太郎の作品をプリントした「ほぼ日手帳カバー」の限定販売も

(ライター 橋長初代)

[日経トレンディネット 2015年12月7日付の記事を再構成]