涙不足のドライアイには点眼薬 新成分で効果期待
ドライアイ用の点眼薬は、涙の脂不足の人の自覚症状を軽減するために用いることもあるが、基本的には涙液減少タイプの涙を補うことを目的としている。
かつては、ナトリウムとカリウムを溶かした人工涙液しかなかったが近年、さらに3種の成分が加わり選択肢が増えた。
その1つがヒアルロン酸。「化粧品にも用いられる保湿成分で湿り気を外から補う。刺激がないので使いやすい」と後藤眼科医院の後藤英樹院長は話す。粘膜の荒れも改善する。
同様に粘膜の荒れの改善に効果を発揮するのが2012年に登場したレバミピド。ムチンの産生を促す働きがある。「もともと胃かいようの治療に用いられていた成分。白濁した液なので、点眼した直後に目がぼやけるのと、のどに流れたとき苦みがあることを知っておくと、あわてずに済む」(後藤院長)。
もう1つは、ムチンとともに水分の分泌も促すジクアホソルナトリウム。「目にしみたり目やにが増えたりするが、次第に消えて調子が良くなってくる」と後藤院長。
これらは1日4~6回の点眼が必要だが、「必要以上に使うと涙が流れて涙液層が安定しなくなる」(後藤院長)ので、指示された回数を守ろう。
点眼薬で十分な効果が得られない場合は、まぶたの目頭に近い部分にある涙の"排水口"である涙点をふさぎ、目にとどまる涙を増やす方法が選択肢に上がる。
これには、(1)体温で固まる液状コラーゲンの注入(1~2カ月で自然に分解)、(2)シリコンプラグ挿入、(3)手術による涙点閉鎖の3つの方法があり、涙をせきとめる効果は手術が最も高い。「効きすぎると涙があふれてしまうので、材料やふさぐ涙点の数を調整しながら行う」(後藤院長)という。
全身の不調を伴うドライアイには漢方薬
目の治療だけではスッキリしない、全身の不調を伴うドライアイには、心身を内側から整える漢方薬が効果的だ。
東邦大学医療センター大森病院東洋医学科の田中耕一郎講師によると、東洋医学では目の不調を五臓のうちの「肝(かん)」の機能低下によるととらえる。肝は心身を滋養する血(けつ)を蓄えるとともに、自律神経や運動神経の働きをつかさどると考えられている。
「目の乾きとともに不調が出る人は肝の血が不足しているので、血を補いながら血流を良くする薬が効く」と田中講師。代表的な薬は四物湯(しもつとう)。「寝る前に1回のむだけで、2週間ほどで体調が良くなってくるのを感じる人が多い」という。
目が充血して熱感があり、ストレスでギラギラしている人には竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)。更年期で疲れやすい人には杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)。気が高ぶってイライラする人には抑肝散(よくかんさん)がいいという。漢方外来や漢方クリニックなどで保険適用で処方してもらえる。
この人たちに聞きました
後藤眼科医院(神奈川県鎌倉市) 院長、鶴見大学眼科学教室臨床教授。ドライアイ、疲れ目、眼瞼けいれんなどに詳しい。脂不足のドライアイに対する油性軟膏の点眼も行う。「手元を見る作業が多い人は、ハイキングで遠くを見たり、温泉に行くなど、乾かされる環境とは逆のことをしてリセットすることも大事」
伊藤医院(さいたま市)副院長、慶應義塾大学眼科非常勤講師、東京大学眼科臨床研究員。マイボーム腺関連疾患の研究と治療の普及を目的とするLIME研究会代表。「マイボーム腺の機能はコンタクトレンズ以外に加齢でも低下する。温罨法(おんあんぽう)やまぶたのマッサージは誰でもすぐできるので、早い時期から取り組んでほしい」
東邦大学医療センター大森病院東洋医学科講師。日本東洋医学会認定漢方専門医。女性の加齢やストレス性の不調に詳しい。吉祥寺東方医院(東京都武蔵野市)でも診療。「生薬として用いられるクコの実や食用菊、スタミナをつけるハマグリ、アサリなどの貝類を食べることもお薦めする」
(ライター 小林真美子)
[日経ヘルス2016年1月号の記事を再構成]
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