アイメークはドライアイの一因 温湿布で脂を溶かす
前回、涙の脂分が不足すると、水分の蒸発が進みドライアイになる仕組みを解説した。脂不足を改善するケアとして、まず薦められるのが、まぶたの温罨法(おんあんぽう)、すなわち温湿布だ。
涙に脂を分泌するのがマイボーム腺。この脂は通常、32℃程度で溶け出し、透明でサラサラだ。しかし、マイボーム腺の機能不全(MGD)では脂が硬く黄色くなっており、健康な人より4℃ほど高い温度でないと溶けないとされている。これは、「まぶたの裏側が冷えているから」(伊藤医院副院長の有田玲子医師)だ。
温罨法はマイボーム腺を温め、脂を溶かす。MGDの改善効果は有田医師らの研究で確認済み(下グラフ)。「軽いMGDなら5分間温めるだけでも脂の色が変わり、涙の油層が厚くなって安定性が向上する」(有田医師)。
回数が多いほど効果が上がるので、1日2回以上、5分ずつを目標に。ソファやベッドでリラックスして行おう。40℃程度の温かさが持続する市販のグッズなどを使うと簡単だ。
タオルを使う場合は水で濡らして硬く絞り、500Wの電子レンジなら30秒温める。そのままだと数分で冷え、逆に脂を固まらせる恐れがあるので、ラップで包むなどの工夫を。ただし、高温のタオルは目に悪影響を与える恐れが指摘されているので、熱くしすぎないこと。
目元専用の洗浄剤でまぶたを軽くマッサージしながらマイボーム腺の詰まりをとる「まぶた洗い」も朝・晩の洗顔に加えよう。特にアイメークをする人にいい。アイメークがマイボーム腺の出口をふさぐ原因になっているからだ。「温罨法に続けて行うと効果的」と有田医師は話す。
セルフケアで効果が上がらない場合は、眼科でマイボーム腺を圧迫してもらう手も。点眼麻酔後にピンセットでまぶたをはさみ、脂を圧し出す。「目がスッキリする実感が持てた人には、月1回程度の間隔で受けるよう薦めている」(有田医師)。
この人たちに聞きました
後藤眼科医院(神奈川県鎌倉市) 院長、鶴見大学眼科学教室臨床教授。ドライアイ、疲れ目、眼瞼けいれんなどに詳しい。脂不足のドライアイに対する油性軟膏の点眼も行う。「手元を見る作業が多い人は、ハイキングで遠くを見たり、温泉に行くなど、乾かされる環境とは逆のことをしてリセットすることも大事」
伊藤医院(さいたま市)副院長、慶應義塾大学眼科非常勤講師、東京大学眼科臨床研究員。マイボーム腺関連疾患の研究と治療の普及を目的とするLIME研究会代表。「マイボーム腺の機能はコンタクトレンズ以外に加齢でも低下する。温罨法(おんあんぽう)やまぶたのマッサージは誰でもすぐできるので、早い時期から取り組んでほしい」
東邦大学医療センター大森病院東洋医学科講師。日本東洋医学会認定漢方専門医。女性の加齢やストレス性の不調に詳しい。吉祥寺東方医院(東京都武蔵野市)でも診療。「生薬として用いられるクコの実や食用菊、スタミナをつけるハマグリ、アサリなどの貝類を食べることもお薦めする」
(ライター 小林真美子)
[日経ヘルス2016年1月号の記事を再構成]
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