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女性に多いドライアイ 原因は涙の「脂不足」

2016/1/24

日経ヘルス

 空気が乾燥する冬場はドライアイ症状に悩む女性が増える。ドライアイは涙の水分不足で起こると思いがちだが、むしろ涙の表面を覆う脂不足が背景にあることが最新の研究で明らかになってきた。
(イラスト:いいあい)

 ドライアイには、涙液の蒸発がひどくなった(蒸発亢進)タイプと、涙液の分泌が減ったタイプの2つに大きく分けられる。どちらも症状は同じだが「蒸発亢進タイプ」のほうが圧倒的に多いことがわかってきた。

 蒸発亢進を引き起こす主因として注目されるのが、まぶたの内側にある「マイボーム腺」の機能不全(MGD)だ。

 マイボーム腺はまつげの内側の皮膚に開いた出口から脂を分泌する。「その脂が涙の表面に油膜を作り、水分の蒸発を防ぐ」と後藤眼科医院の後藤英樹院長は説明する。

[左]ドライアイ患者159人を、涙の表面を覆う脂の不足により涙液の蒸発が亢進した「脂不足」か、涙液が減少した「水不足」かを調べた。結果、脂を出すマイボーム腺の機能不全(MGD)による脂不足が50%、脂不足+水不足が36%と、全体の86%に脂不足があった(データ:Cornea;31,5,472-478,2012) [右]「目の乾き」だけでなく、疲れ目を伴う場合が多い。涙液は生理的に夕方以降、分泌が減るリズムがあるため、その時間帯から症状が強まるならドライアイである可能性が高い。症状以外に、涙液の量・質の異常、眼球表面の粘膜の荒れという3つがそろえばドライアイと診断される

 そのため、「油の層を完全に除去した動物では、涙の水分が20倍以上蒸発しやすくなったと報告されている」と伊藤医院副院長の有田玲子医師は話す。

涙は油層と水層の2層からなる。表面の油層を形成するのがまぶたの内側にあるマイボーム腺から出る脂。涙の蒸発を防ぐバリアになる。涙腺からは涙液、角膜上皮細胞からは糖たんぱく質のムチンが分泌される。ムチンは涙を粘っこくして目の表面にのりやすくする(イラスト:三弓素青)
上下のまぶたを裏返し光を透過させた写真。縦に整列している白い線がマイボーム腺。上まぶたに約40本、下まぶたに約20本あり、まつ毛の内側に開口する。MGDでは白い線が不明瞭になっている。マイボーム腺の短縮や消失といった形態の変化を伴う場合も多い(写真提供/有田玲子医師)

 マイボーム腺の働きが低下する原因は主に4つ。1つは交感神経の興奮だ。後藤院長によると、マイボーム腺は涙腺同様、リラックスを促す神経である副交感神経が働きをつかさどる。そのため、緊張した状態が続くと、脂も涙液も出が悪くなる。

 「30~40代女性のドライアイはパソコン作業やスマートフォン(スマホ)の見すぎによるものがほとんど」と後藤院長。脂や涙はまばたきをすることで目の表面に広がるが、パソコン作業やスマホの注視はまばたき回数も減らすという。

緊張の持続は交感神経を興奮させるとともに、まばたき回数を減らし、脂と涙の分泌を低下させる。低温・低湿度の環境や男性ホルモン不足、コンタクトレンズも脂の分泌低下につながる。ストレス状態が続くと、イライラ、肩こりなどの不調も出て悪循環になる

 2つ目はコンタクトレンズ。「装用時間が長いほど、物理的刺激でマイボーム腺が減ってしまうリスクがある」と有田医師は指摘する。

 3つ目は性ホルモンの影響。マイボーム腺は皮脂腺同様、男性ホルモンによって働きが活発になる。そのため女性はもともと脂不足になりやすい。女性ホルモンとともに男性ホルモンも減る閉経がドライアイのリスクになることも分かっている。

韓国の主に都市部に在住する19歳以上の男女1万人余りを対象にドライアイの有病率を調査。ドライアイと診断された女性は、どの年代でも男性より多かった。「女性」だと2.8倍、「ストレス」があると1.7倍かかりやすいことも分かった。 (データ:Am J Ophthalmol;158,6,1205-1214,2014)

 4つ目は季節の影響だ。「涙の分泌は朝最も多く、夕方以降に減る日内変動があるが、脂の分泌はそれがない。その一方で、低温・低湿度の環境で減る」と有田医師。冬場のドライアイ急増はおそらくこのためという。

 「環境要因によるドライアイは環境調整で治せる」と後藤院長は話す。脂不足か水不足かは、眼科の検査で分かる。それぞれの対策は次回以降で紹介する。

【ドライアイの改善・予防に効く生活ポイント】

(1)青魚などに豊富なDHA・EPAを積極的にとる
 脂の乗った魚に豊富なDHAやEPAは、ドライアイを防ぐとともに“薬”としても作用する。ドライアイ患者の涙液蒸発を抑える効果や涙液分泌を増やす効果、MGDの人の涙液層の安定性と視機能を向上させる効果が報告されている。意識して食事に取り入れよう。

(2)PC作業中は意識してまばたきをする
 パソコンやスマホに熱中すると、誰でもまばたきが減る。自分ではしているつもりでも、上まぶたが下まぶたにつかない不完全なまばたきになっている人も多い。作業中は1時間ごとに、ぎゅっとまぶたを閉じる“しっかりまばたき”を意識して行うよう心がけて。

(3)コンタクトレンズの装用時間を短くする
 コンタクトレンズはマイボーム腺を減らすリスク因子であるとともに、涙液層を壊れやすくするので、つけている時間をできるだけ短くしよう。「帰宅後すぐにはずしたり、休日の装用をやめたりして1日数時間減らすだけでも長期的にはかなり短縮できる」(有田医師)。

■この人たちに聞きました

後藤英樹さん
 後藤眼科医院(神奈川県鎌倉市) 院長、鶴見大学眼科学教室臨床教授。ドライアイ、疲れ目、眼瞼けいれんなどに詳しい。脂不足のドライアイに対する油性軟膏の点眼も行う。「手元を見る作業が多い人は、ハイキングで遠くを見たり、温泉に行くなど、乾かされる環境とは逆のことをしてリセットすることも大事」
有田玲子さん
 伊藤医院(さいたま市)副院長、慶應義塾大学眼科非常勤講師、東京大学眼科臨床研究員。マイボーム腺関連疾患の研究と治療の普及を目的とするLIME研究会代表。「マイボーム腺の機能はコンタクトレンズ以外に加齢でも低下する。温罨法(おんあんぽう)やまぶたのマッサージは誰でもすぐできるので、早い時期から取り組んでほしい」
田中耕一郎さん
 東邦大学医療センター大森病院東洋医学科講師。日本東洋医学会認定漢方専門医。女性の加齢やストレス性の不調に詳しい。吉祥寺東方医院(東京都武蔵野市)でも診療。「生薬として用いられるクコの実や食用菊、スタミナをつけるハマグリ、アサリなどの貝類を食べることもお薦めする」

(ライター 小林真美子)

[日経ヘルス2016年1月号の記事を再構成]

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