マネー研究所

わたしの投資論

会社を好きになってはいけない(窪田真之)

2015/12/3

楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏。前職の大和住銀投信投資顧問では日本株の運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。1999年の運用開始から最後まで担当した「大和住銀日本バリュー株ファンド」(愛称「黒潮」)は長期に安定した成績で知られる。割安株投資で有名なファンドだが、実は成長株投資もいとわなかったという。先輩ファンドマネジャーに学んだ投資手法と失敗談を窪田氏が明かしてくれた。
窪田真之(くぼた・まさゆき)氏 1961年千葉県生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。87年住銀バンカース投資顧問(当時)に出向、日本株ファンドマネジャー兼アナリスト。90年住友銀行証券部海外業務開発プロジェクトチームに異動、91年ニューヨーク駐在。92年住銀投資顧問(当時)日本株ファンドマネジャー、99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー、2014年2月楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。15年7月から所長兼務。日本株運用歴は累計25年、金融庁企業会計審議会の会計部会臨時委員も務める。著書に「投資脳を鍛える!株の実践トレーニング」(日本経済新聞出版社)、「クイズ 会計がわかる70題」(中央経済社)など多数。

■割安株と成長株、どちらが好きか知る必要

一般的にファンドマネジャーの腕で市場平均を上回る成績をめざすアクティブ運用のスタイルには「割安株投資」と「成長株投資」とがあります。いわゆる「バリュー」と「グロース」です。わたしは所属していた会社がバリュー運用で有名な会社で、バリュー運用をやっていたんですが、実はわたし自身のメンタルにも合っていました。

わたしは非常に割高になって人気化しているグロース株にわくわくしません。で、投資家にものすごく嫌われて株価が暴落した会社でも、そんなに悪い会社じゃないよねっていう会社にわくわくします。これは人によって分かれるらしいです。

いろんなところで話を聞くんですけれど、バリュー運用とグロース運用を志向するファンドマネジャーが2人いたら、1つの運用についてだんだん意見が合わなくなって、最後は罵り合いになるそうです。

だから、そもそも何に価値を置いているのかということです。会社は成長するから価値があるんだって思う人と、会社の実体より株価が安いから価値があるんだと思う人は根本的にメンタルが違います。個人投資家のみなさんは自分がどちらなのかということを知っておいた方がいいかと思いますね。

■過去半年・1年の下落率の大きい銘柄に注目

バリュー投資の場合、銘柄選択はシンプルです。割安の切り口としてPER(株価収益率)や配当利回りに注目します。特に配当利回りの高い銘柄ですね。配当利回りが高いということは人気がなく株価が安いから配当利回りが高いんです。

そのなかから株価の下落率が大きい銘柄を選びます。具体的には過去半年とか1年とかで大きく下落し、PERが低く、配当利回りが高い銘柄です。もちろん財務内容も見ます。財務の悪い銘柄と不祥事を起こした銘柄には一切手を出しません。ひと言でいえば人気がないけれどもいい会社でしょうか。

バリュー株投資は基本的に長期投資です。いつ市場に評価されて株価が上がるか分からないので、たくさんの銘柄を持って張っておくわけです。大型株主体の黒潮でも100銘柄ぐらい、特定金銭信託(特金)向けの中小型株ファンドでは300銘柄ぐらい投資していました。

■悪材料が出た銘柄は即座に売る

銘柄を多く持つのは悪材料が出た銘柄を即座に売るためでもあります。特に中小型株は1つの銘柄でファンドで総資産の2%とか3%とか多く持ちすぎると悪材料が出たときに一度では売れません。売ったところから戻る銘柄もあるんですが、さらに暴落する銘柄もあります。株式投資で安定的に勝つためには暴落する銘柄を持たないことが大事です。

つまりいい銘柄をいいタイミングで買う以上に、ダメになった銘柄を早く損切ることがはるかに重要です。当時は年間100社以上を訪問して銘柄を選んでいましたが、あんなに調べていい会社なのだから、いずれは株価が戻るだろうとは考えないようにしました。黒潮はじわじわ勝つファンドで下げ相場のときにベンチマークに負けませんでした。

ファンドマネジャーは短期的に稼いでその後大損して業界から消えていく人はたくさんいます。上げ相場に乗って1年間で派手に勝つファンドは下げ相場になると、派手に負けるときが必ず出てきます。そうじゃなくて、そんなに派手には勝たないけれども少しずつ稼ぎながら10年、20年とやっていく人もいます。

■「黒潮」では成長株投資も 忍耐の連続

グロースとバリュー投資の違いというよりは、結局リスクの取り方です。派手にリスクを取る人は結果的に勝つときも派手ですが負けるときも派手です。そうすると長期のパフォーマンスは必ずしもよくないんです。バリュー株ファンドでも過度にバリュー株に偏ってしまうとグロース相場で負けてしまいます。

だから、黒潮ではグロース株にも投資しました。でもわたしにとってのホームグランドはバリュー株投資でしたので、グロース株投資はメンタルとずいぶん異なる“努力目標”でした。

短期間で株価が跳ね上がるグロース株投資は忍耐の連続です。たとえば株価が5割も上がって、売りたくて仕方がないんだけれども、まだ株価のモメンタム(勢い)が強いうちは売ってはいけません。とても苦痛でした。これができなかったら、わたしは早い時期にぼろぼろになっていたでしょう。ファンドマネジャーはいろんなものに臨機応変に対応できないとダメ。そういうのを好き嫌いなしにできる人がベストなんだと思います。

マネー研究所 新着記事

ALL CHANNEL