たるみにも効く ビタミンCのマルチな美容効果

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シミ、くすみ、たるみ、そして毛穴。肌の悩みは尽きないもの。どんな化粧品を使えば効果があるのでしょうか。美肌の専門家、アオハルクリニック院長で皮膚科医の小柳衣吏子さんは、身近な美容成分にあえて着目することを提案します。
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皆さま、こんにちは。小柳衣吏子です。今日は、シミ、くすみ、たるみ、毛穴、ニキビなどなどの肌悩みにマルチな効果を発揮してくれる美容成分についてご紹介します。

そんなにすごい成分、早く教えてほしい、と思ったあなた。きっと、その名前はもう知っているはずです。

その成分とはズバリ、「ビタミンC」。

あまりに聞きなれた成分で拍子抜けするかもしれませんが、いえいえ、やっぱり素晴らしいのです、ビタミンCの効果は。

一般的には「美白」の効果が知られているビタミンCですが、それ以外にも嬉しい効果がたくさん。

まず注目したいのは、その「抗酸化」パワーです。ビタミンCは酸化を抑制して肌トラブルのもとを軽減してくれます。

紫外線によって誘導される皮脂の酸化を抑えてくれるのでニキビ治療にも効果的ですし、抗酸化によって肌の糖化を抑えてくれるので、糖化によるくすみやたるみの予防にもつながります。

ビタミンCが「たるみ」にも効くって、あまり知られていませんよね。

「アンチたるみ」のパワーは「コラーゲンを増やす」というアプローチからも発揮されます。実は、コラーゲンの合成にビタミンCは必要不可欠。コラーゲンは線維が上質な束になることで肌の弾力のもとになるのですが、コラーゲン線維がしっかりとした束になる過程で必要になるのがビタミンCなのです。

さらに、ビタミンCにはコラーゲンそのものを生み出す線維芽細胞を増やす働きもあります。ちなみに、線維芽細胞は保湿にかかわるヒアルロン酸も作る細胞。プリップリの弾力肌のために、ビタミンCはとても重要というわけです。

肌の組織そのものを強くしたり、酸化防止に働いたりするビタミンCの作用はヘルスケアの様々な分野に生かされていて、育毛剤や歯磨き粉にも使われているようです。

また、鉄の吸収を助けるので貧血予防にもなるという点で、女性は積極的にとりたい成分でもあります。

こんなに私たちの健康と美容に役立ってくれるビタミンCですが、悲しいことに私たちヒトは、体内でビタミンCを作ることができません(多くの動物がビタミンCを体内合成できますが、ヒト、サル、モルモットなどはできないのです)。

ですから、外から積極的にとるというアクションが大切になってきます。

では、効果的なとり方ですが、「飲む」、「塗る」の両方で攻めるのがおすすめです。

下のグラフは、マウスの実験でビタミンCを経口摂取した時にどれだけ肌に届くかを調べたデータです。たしかに肌へは届いていますが、しっかりと肌に効かせるにはダイレクトに「塗る」をプラスした方がいいと思います。

ビタミンC内服の分布。マウスに生後60日目から30日間、1日必要量の2.5%(0.2mg/日)のビタミンCを与えた。ビタミンCを1回投与24時間後の増加率を確認/Nutrition 27:471-478(2011)

まず、飲み方です。

飲み方のポイントは量とタイミング。効果を発揮してもらうためには、1日1000mgを目安にとるといいと思います。

ビタミンCは水溶性で一度に大量にとっても排出されやすい性質があるので、1日の中で何度かに分けてとるのが効果的。

タイミングとしては、朝と夜がいいですね。朝とるビタミンCで日中の活動で生じる酸化や紫外線ダメージを抑え、夜とるビタミンCで睡眠中の細胞修復を助けてコラーゲン生成を促しましょうというわけです。

細胞の酸化は日常のストレスでも生じると言われているので、日中にも飲める人はこまめにとるといいですね。タバコを吸う人は必須です。

私は、若さと美を求めるデルマトロジストですから、1日3000mg、欠かさずとっております。皮膚科医になるずっと前、中学生の頃からおこづかいをはたいてビタミンCを買っていたくらいですので。

サプリからとる以外にも食事からできるだけビタミンCをとれるように意識をしていて、生野菜を積極的に食べています。おかげで風邪はめったにひきません。昔から「風邪予防にビタミンC」と言われるように、ビタミンCには免疫を高める効果もあるようですね。

ということで、私自身もたっぷり摂取を心がけているビタミンCですが、男性の場合は、とり過ぎは尿管結石につながるとも言われているので、1日1000mgを目安に。厚生労働省が推奨する1日あたりの摂取量が100mg(成人、男女)ですので、1000mgでも十分です。厚労省が示す1日100mgというのは、「これ以下になると各種欠乏症状が現れる可能性がある」という基準ですので、最低限の数値と考えてくださいね。

次に、ビタミンCを「塗る」アプローチですが、これはシンプルに、ビタミンCが入っているコスメを取り入れるということに尽きます。

各メーカーから豊富に出ていますよね。効果を考えるとビタミンCの濃度は高いほうがいいのですが、人によってはピリピリとした刺激を感じる方もいるので、まず腕などで使用感を確かめるようにしましょう。

小柳衣吏子(こやなぎ えりこ)さん 医療法人青輝会 アオハルクリニック院長 (写真:稲垣純也)

また、「皮脂分泌を抑える」効果があるため、肌質によっては乾燥を感じる場合もあります。一緒に保湿することもお忘れなく。

クリニックで行う美容治療でも、ビタミンCは積極的に取り入れております。例えばビタミンCのイオン導入では、ビタミンCを肌に吸収されやすい形にして(リン酸化)マイナスに帯電させ、マイナスの電流を流すことで皮膚に浸透させていきます。美白、ハリアップ、毛穴引き締めなどでリピートする方も多い人気メニューになっています。

私自身、皮膚科医として臨床の場で長くビタミンCを使ってきていますが、効果があって、かつ安心というのがいいですね。美白だけではなくエイジング対策としても、ビタミンCをぜひフル活用してください。

(ライター 宮本恵理子)

[nikkei WOMAN Online 2015年11月17日付記事を再構成]