下から見るとミミズク、上から見ると枯れ枝、その正体は

日経ナショナル ジオグラフィック社

2015/12/13
ナショナルジオグラフィック日本版

私はナニモノでしょう?

上の写真、枝にとまったミミズクに見えないだろうか。

正体は、ガだ。コスタリカでは、興味深い「顔」をしたガをしばしば目にする。まるでほかの生きもののようで、ぼくはいつも、いろいろと想像を膨らませている。今回は、ぼくの印象に残った、生態もちょっとヘンなガの「顔」をいくつか紹介しよう。

まずは、後ろ向きに歩くトカゲに似た幼虫。ニスタレアというシャチホコガの一種で、お尻にトカゲのような顔がついている。

National Geographic

この幼虫、成虫になってもヘンだった。

ニスタレア(Nystalea)の一種。中央右のほうが頭部。昼間はじっとして、枯れ枝の一部になりきる。前翅の長さは、約25 mm

なんと、「枯れた枝」になるのだ。

上の写真は、枝にとまっているところを斜め上から見たところ。

ニスタレア(Nystalea)の一種。右側が頭。枝の折れた部分を演出している

頭部と胸部を横から見るとこんな感じだ。

眼の部分を毛のような鱗粉で隠し、頭部の上から突き出た部分が、枯れ枝が折れたような雰囲気を上手くかもしだしている。

そして、この「枝が折れた部分」を正面から見ると、鳥のミミズクのように見える。

ニスタレアというシャチホコガの一種(鱗翅目:シャチホコガ科:Nystaleinae) A prominent moth, Nystalea sp. 枝の間から、正面を見たところ。強い風が吹いていて、頭の後ろから飛び出した部分がなびく。 前翅長:約25 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ

風が吹いていて、眼を隠すための毛も風にあおられて、複眼があらわになっている。眼を毛で隠すときは、頭と胸の部分をクイクイクイクイっと動かして、毛を整える感じだ。

ここからは、「ガの顔、いろいろ」です。

オクシテニス・ベプレア(ヤママユガ科:Oxyteninae)の幼虫 A caterpillar of Oxytenis beprea, silk moth 頭部の後ろ、胸の背面にある眼状紋が開いたところ。休んでいるとき、この眼状紋は目をつむるように閉じられていて、そこに眼状紋があることすらわからない。鼻のような筋に大きな耳のような横に広がる突起は…ゾウ? 幼虫の色には、 緑に灰色など、個体差があるようだ。成虫は枯れ葉に擬態している。 体長:約40 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
カレハガの一種 A lasiocampid moth, Prorifrons sp. 紫ピンクのぬいぐるみ? 前翅長:約25 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
背中あたり(胸部の背面)から飛び出す鱗粉の塊が耳のように見える。眼の横のカチューシャのようなものは、触角。

ヤガの一種(ヤガ科)(未同定) An unidentified noctuid moth コケの生えたニワトリのような横顔。眼(複眼)の模様が「目玉」の雰囲気を出している。コケの生えた木の幹に、朽ちて、コケの生えた枝の破片のようにくっついていた。 前翅長:約15 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
ヒラタマルハキバガの一種のさなぎを正面から見たところ A pupa of depresariid moth, Stenoma sp. 葉の上にくっついていた、小さな枯れ葉のようなものは、ガのサナギだった。正面からは、ミミズクのような風貌。翅の部分が折りたたんだ鳥の翼のように見える。このように繭(まゆ)をつくらずに、葉の上で直接サナギになるガもいる。 体長:約5 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ

サルシナ・プルプラセンス(トモエガ科:ドクガ亜科)のサナギ A pupa of Sarcina purpurascens, lymantriine moth だるまさん? マトリョーシカ人形? サナギの頭部から胸部を正面(腹側)から見たところ。両端に垂れさがるようにあるのは、ドクガの特徴でもある、大きな半月型の触角だ。葉の下に「雑」に張られた茶色い糸の中央、宙に浮くようにこのサナギが横たわっていた。 体長:18 mm 撮影地:サンイシドロ・デ・コロナド、コスタリカ
西田賢司(にしだ けんじ)
 1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学でチョウやガの生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html

(日経ナショナル ジオグラフィック社)

[Webナショジオ 2015年9月15日付の記事を再構成]

(参考)「コスタリカ昆虫中心生活」が本になりました。生物多様性の国・中米コスタリカで、18年間にわたり昆虫と暮らしながら研究を続ける著者が、自ら撮影した写真と解説で、その不思議な魅力とすごさを伝えます。

ミラクル昆虫ワールド  コスタリカ

著者:西田 賢司 編集:ナショナル ジオグラフィック
出版:日経ナショナルジオグラフィック社
価格:1,944円(税込み)