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介護だけではない 見えてきた「老老相続」 司法書士 川原田慶太

2015/11/20

 超高齢化が進む日本の社会では、いわゆる「老老介護」の問題がよく知られています。高齢者の介護について、同じ高齢の親族などが面倒をみなければならない――。実は、これと同様の現象が相続の現場でも起こっています。高齢の親や配偶者、兄弟姉妹などが亡くなって、その遺産を高齢の相続人が引き継ぐパターンが増えてきているのです。

財務省主税局調べ

 こんなデータがあります。相続税の申告をした家庭のうち、対象となった故人の年代を時系列で追ったものです(グラフ)。平成に入ってからの25年間で、亡くなった人の年齢層の割合が大幅に変わったことがわかるでしょう。

 1989年には80歳未満の故人の遺産を相続するケースが6割を超えていましたが、2013年には3割程度に半減しました。正反対に、故人の年齢が80代以上である相続が、いまでは7割近くにまで達する勢いになっています。

 かつては、だいたい半数ぐらいの家庭が「60代や70代の親が亡くなって、30代や40代の子育て中の世代などが遺産を相続する」というケースに当てはまっていました。しかしそれは、もはや昭和の時代のノスタルジーなのかもしれません。

 何かと物入りな若い現役世代が遺産を引き継いで、それを生活の基盤にできるような相続スタイルは、残念ながら少数派となりました。現在は、80代を超えた親が亡くなり、それを引き継ぐ子ども世代も50代を超えているというケースが大半なのです。

 グラフには出していませんが、13年を見ると、「亡くなった人が90代以上」というケースが約24%に達し、60代や70代の数字を軽く上回る結果となっています。

 故人の年齢がそこまで上がると、子ども世代も60代、70代以上となるでしょう。「リタイア世代の遺産を、リタイア世代が相続する」という、日本の現状を反映した現代的な相続の形が主流となりつつあることが垣間見えます。

 とはいっても、これらのデータはあくまで相続税のかかる家庭が基準となった限定的な数字です。また、相続税などの制度を議論する場で「『老老相続』が進んでおり、何か手を打って税収を賄う必要がある」というストーリーのために出てきた数字だということも、ある程度は割り引いて考える必要があるかもしれません。

 しかしながら、実際の相続の現場でも、当事者の中にかなりの高齢の方が多くなってきているという感覚は否定できません。それに伴い、「老老相続」に特有の典型的なトラブルなどが頻出してくるようになりました。

 成長型の若い国から成熟型の老成した国へと社会構造そのものが変化しているなか、相続の姿だけが昔と同じままではいられないということでしょう。次回も引き続き、この老老相続について話を進めたいと思います。

川原田慶太(かわらだ・けいた) 2001年3月に京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験に合格し、02年10月「かわらだ司法書士事務所」を開設。05年5月から「司法書士法人おおさか法務事務所」代表社員。司法書士・宅地建物取引主任者として資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数務める。

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