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ななつ星に続け JR東西が豪華寝台列車を投入

2015/12/2

豪華列車「トランスイート四季島」の四方を窓ガラスで囲んだデザインの展望エリア(写真:JR東日本)
日経デザイン

5期連続の増収に、2期連続の増益、しかも今期最高益を実現した九州旅客鉄道(JR九州)。観光を軸にすえた同社の成功を目の当たりにして、ほかのJR各社も観光列車の積極的な導入を図っている。

トランスイート四季島。デザインは内外装とも奥山清行氏(写真:JR東日本)

東日本旅客鉄道(JR東日本)は豪華列車「トランスイート四季島」を2017年春に運行する。デザインとプロデュースは奥山清行氏。東北や信越など東日本だけではなく、北海道も周遊する計画があるなど、地域を越えた連携を図りながら走らせる計画だ。

■キーワードは開放感

JR東日本では、すでに2014年10月から運行している全席食堂車で東北地方の食材を提供する「東北エモーション」や、2015年4月に投入した蒸気機関車「C58」がけん引する「SL銀河」などが人気だ。ここにおもてなしのフラッグシップモデルを投入することで、「乗ることが目的」という新しい鉄道の価値をさらに訴求する。

そのデザインのポイントは、これまでの列車にはない「高さ」や「開放感」だ。「時間と空間の移り変わりを楽しむ列車」をコンセプトとしたこの列車は、展望エリア付きの動力車2両を筆頭に、ラウンジ車1両、ダイニング車1両、デラックススイート車1両、スイート車5両で構成される計10両編成となる。

(写真:JR東日本)

両端の先頭車には天井までガラス張りになった展望エリアを設置する。自然の雄大さや開放感をダイナミックに楽しめるだけではなく、昼と夜とでまったく異なる雰囲気のパノラマを味わうことが可能だ。

ラウンジエリアでは、高低差を付けることでゆったりと感じさせるエントランスホールで乗客を迎え入れる。列車とは思えないまるでホテルのようなもてなしで、旅の高揚感と非日常感を演出する仕掛け。そして有機的な窓もまた、特別な空間を演出するためには欠かせないインテリアの要素だ。

ラウンジエリア。列車の出入り口付近の高低さは高めにした(写真:JR東日本)
ダイニングエリアは高い位置にガラス窓を配置し、開放感を演出している(写真:JR東日本)

(写真:JR東日本)
(写真:JR東日本)

ラウンジやダイニングルームの窓は高い場所に設置することで、実際の高さ以上の開放感をもたらす。空間の限られた列車の空間を実際より広く見せることは、それだけで十分おもてなしとしての価値を持つ。

(写真:JR東日本)
(写真:JR東日本)

個室は段差のないフラットフロアに(写真:JR東日本)
(写真:JR東日本)

■1年半かけて人材を育成

上野駅に設置する専用ラウンジ「プロローグ四季島」(写真:JR東日本)

列車だけではない。JR東日本はトランスイート四季島用の専用ラウンジ「プロローグ四季島」を上野駅構内に新設する。出発時のチェックインや手荷物の預かり、上野駅でのバレーサービス、自宅や宿泊先などから上野駅までのハイヤーサービス、上野駅構内のポーターサービスも予定するなど車外でのサービス拡充を図り、旅のあらゆる場面で顧客をがっかりさせないよう、きめ細かな配慮で満足度向上を狙う。

こうしたおもてなしのサービスを提供するため、同社グループのびゅうトラベルサービスは、1年半かけておよそ10人のトレインクルー1期生の養成を開始した。英語やアジア圏の語学に精通するスタッフを養成し、富裕層の外国人旅行者の獲得も狙う。

クルーズトレインがもたらす富裕層の観光需要を狙い、すでに地方の自治体も動き始めている。この列車の運行路線はこれから決定するが、すでに松本市などが中央東線を含むルートで運行するよう働き掛けている。こうしたクルーズトレインは、車内のみならず電車を降りたときの観光プランにも細心のもてなしが要求される。四季島が提供するもてなしやテーマ性に沿った富裕層向けの観光プランをどのようにして提供できるかが、鍵になりそうだ。

■JR西は『トワイライトエクスプレス 瑞風

かつてのトワイライトエクスプレスのメーンカラーを継承した深緑色のボディー。最後尾のデッキには出ることも可能だ。10両編成で定員は30人ほど(写真:JR西日本)

1989年から26年にわたって大阪・札幌間を運行し、2015年3月に惜しまれながら引退した豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス」。車窓からの眺望をはじめ、おいしい食事や豪華な車両、きめ細やかなサービスなどで人気を集め、「走るホテル」と称されていた。

その伝統を継承した新たな豪華寝台列車が誕生する。西日本旅客鉄道(JR西日本)が2017年春から運行する計画の「トワイライトエクスプレス 瑞風(以下、瑞風)」だ。

「トワイライトエクスプレス 瑞風」の計画ルート

瑞風は京都・大阪と下関を山陰本線経由と山陽本線経由で結ぶ。1泊2日の片道タイプと2泊3日の周遊タイプがあり、1日1回倉敷や宮島、出雲、鳥取など沿線の観光スポットに立ち寄る計画。同社が管轄する山陰・山陽エリアの地域活性化につなげようという狙いがある。

「自分たちの管轄内には、国立公園や世界遺産など観光スポットが多い。だが、特に山陰にある名所は、意外と知られていない。新たな寝台列車が巡れば、地域の宣伝にもなると考えた」(岡田担当部長)。

スタンダードタイプの客室のイメージ(写真:JR西日本)
最上級客室にはバスタブ付きのバスルームも設ける(写真:JR西日本)

最上級客室は1両1室。ホテルのスイートルームに倣い、リビングと寝室を分けている。トイレも2つ設ける予定だ(写真:JR西日本)

瑞風の開発には、超一流のクリエーターが集結することでも話題だ。車内のインテリアデザインは京都迎賓館に関わった浦一也氏、エクステリアは新幹線N700系の福田哲夫氏が担当。食についてはフードコラムニストの門上武司氏がプロデュースを手がけ、京都の料亭「菊乃井」の村田吉弘氏とレストラン「HAJIME」の米田肇氏が監修する。旅行代金は未定だが「できるだけ多くの人に鉄道の旅の醍醐味を味わってもらいたい。一部の富裕層だけの列車にはしたくない」(岡田・部長)と意気込む。

(日経デザイン 丸尾弘志、ライター 西山薫)

[日経デザイン 2015年9月号の記事を再構成]

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