トロッコ列車で栃木へ 知られざる足尾銅山の本気
今回「ぶらりトレンド探検隊」2代目アシスタントを拝命しました松本千恵と申します。苅谷隊長からは「ユル~く鉄道の旅を楽しもうや」とありがたいお言葉をいただいたのですが、ごめんなさい。正直、鉄道は詳しくありません。少し予習もしたのですが、隣にいる隊長は「いいよ、僕がたっぷり話すから」とやる気満々で、出る幕がなさそうな……。
さて、今回の群馬・栃木編は「鉄道の旅」という名目(?)を超えた思わぬ方向へ。「ジャパンスネークセンター(正式名称は日本蛇族学術研究所)」にて、その場でさばいて調理したマムシをいただき、しぼりたての新鮮な生き血でエネルギーをたくわえ、旅も後半戦です。
ふきつける風もなんのその、秋の風情を楽しむ
今回のメーン、わたらせ渓谷鉄道(わてつ)に乗るべく神戸(ごうど)駅に向かいました。足尾銅山のある通洞(つうどう)駅までをトロッコ列車「わっしー号」に乗りながら景色を楽しむ予定です。
神戸駅は、人気スポットであることがうなずける、絵に描いたような美しい駅でした。列車を待つ間にも、大型観光バスで観光客が次々に降りてきます。
線路をはさんだ反対側には、かつて東武鉄道で活躍していた1720型デラックスロマンスカーを改装した「レストラン清流」があります。「わっしー号」の出発時間まで車窓を眺めながらコーヒーを楽しみました。やっと、それらしい旅です。
「わっしー号」では会話を楽しみつつ、紅葉をめでるのが目的でしたが、全長約5キロメートルの草木トンネルに入ると、「ゴーッ」という列車の音にかき消され、大声を張り上げないと隊長と会話することもままなりません。列車内は、暗いトンネルを楽しめるようにとの配慮からか、イルミネーションで飾り付けられているのですが……。
つらかったのは、ふきつける冷たい風。体感気温は5度を下回っていたのではないでしょうか。隊長は冬用のダウンを頭からすっぽりかぶり、「寒いでいかんわぁ」と体を震わせていました。
長いトンネルを抜けてしばらく走ると、そこは栃木県です。足尾銅山の最寄り、通洞駅に向かいます。列車の進行方向を左に見ると、高津戸峡よりも一足先に色づいた木々のなかから、廃虚と化した足尾銅山通洞選鉱場が眼下に飛び込んできました。いよいよ目的地、足尾銅山に到着です。
隊長は、というと……、「わっしー号」前方に取り付けられた子ども用の模擬運転台を後ろからじーっと恨めしそうに見つめています。子どもが占領したまま通洞に到着。名残惜しそうに電車を後にしていました。
足尾銅山、一番のインパクトは…
多くの人は足尾銅山、というと日本初の公害事件が発生した場所と覚えたのではないでしょうか。教科書に描かれた明治天皇に直訴する元国会議員、田中正造のイラストも印象的です。
1973年に採鉱を止め、約400年の歴史に幕を閉じた足尾銅山は、現在博物館としてその当時の様子を楽しむことができます。坑道へは、わっしー号とはうってかわり、非常にスローなトロッコ列車に乗って入ります。ところどころ浮かび上がるリアルな人形は、当時の採掘現場の厳しさを伝えてくれます。水のしたたり落ちる音と、薄明かりが迫力満点で、肝試しにぴったり。
坑内は涼しいし、夏休みの自由研究にはとてもいいかと思うのですが、秋は人が少ないのか、トロッコ列車は探検隊以外のお客さんは1人。しかし世界遺産登録を目指す足尾銅山の本気は、最後にわかりました。
「銅もありがとうございました また銅ぞ」。隊長もびっくりのギャグ。座布団を何枚もあげたいところです。
元プロ野球選手「げんちゃん」のお店で舌鼓
終了後はお楽しみの盛大な反省会です。今回は、野球観戦も大好きという隊長のリクエストで、プロ野球の日本ハムや巨人軍で活躍された河野博文さんが経営する「居酒屋大喜屋げんちゃん」(高崎市)にお邪魔しました。引退後、無農薬玉ねぎの生産農家として再出発された河野さんが、自家栽培の食材を使った食品を提供するレストランで特製のギョーザや鍋をたらふくいただきました。
それにしても原稿を書きながら、つくづく「これは鉄道の旅だったのか……?」と疑問がわいてきました。12月公開予定の次回ロケは、暖を求めて千葉県、房総半島に向かう予定です。さすがにヘビの生き血をすすることはないと思うのですが……。(注、イノシシはあるかもしれませんby苅谷)
(メディア開発部 松本千恵)
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