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イクメンと「育児ゼロ層」、二極化どう解消? 「パパがパパを育てる循環」づくりも

2015/11/16

 育児や家事に積極的に参加する「イクメン」や「カジメン」という言葉が定着する中でも、現実は消極的な夫が多数派だ。二極化する現状と、イクメン、カジメンの裾野を広げる取り組みを追った。
「パパ・スクール」で育児について学ぶ参加者。講座中利用できる保育サービスもあり、子連れで訪れる人も(さいたま市大宮区)

 「夫は仕事が忙しく、朝6時半に家を出て帰宅は夜11時すぎ。週末は疲れ果てて寝ていることも多く、育児や家事を手伝ってとは頼めない」。千葉県に住む主婦、中島洋子さん(仮名、29)は打ち明ける。IT(情報技術)系コンサルティング会社に勤める夫(30)と2歳の長男の3人家族。家事や育児はほぼ洋子さんが担う。夫に協力してほしいと思うが、日々の仕事に追われる姿に、「本人の意識だけではどうにもできない」と感じている。

 埼玉県の主婦、井上由美さん(仮名、41)は食品卸会社に勤める夫(40)と小学生の子供2人の4人家族。4月からパート勤務を始めた。平日の朝9時~夕3時、勤めに出るが、子供の世話や家事に夫の支援は「期待しない」という。「何もしない夫に腹が立ったけれど、あきらめた。たまに家事をしても、やり残しが気になるので自分でやった方が楽」と話す。

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 日常的に家事や育児に参加する男性は少数派だ。総務省の「社会生活基本調査」(2011年)によると、6歳未満の子を持つ夫のうち1日に15分以上家事をする人の割合は15%。育児で30%にとどまる。共働き世帯の夫より、無業の妻を持つ夫が低い傾向だ。

 ワークライフバランスに詳しい中央大学の佐藤博樹教授は「7~8割の男性がいまだに家事や育児をほとんどしていない一方で、やる夫の携わる時間は長くなっている」と指摘する。「男性は家事や育児に積極的な層と、統計的にはゼロの層に分かれており、やらない人の参加へのハードルは高い。参加ゼロの層にいる男性を変える取り組みを強化する必要がある」

 国は6歳未満の子を持つ夫の1日当たりの育児・家事関連時間(11年時点で67分)を、20年までに2時間30分にする目標を立てた。内閣府は16年度予算の概算要求に「男性の家事・育児等参加応援事業」の費用(1900万円)を新規で盛り込んだ。「男性が主体的に家事・育児に関わる機運を醸成するために、全国的なキャンペーンを展開していきたい」(男女共同参画局)とするが、具体的な取り組みはこれからだ。

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 東京都港区は来年3月から「出産・子育て応援メール配信事業」を始める予定だ。妊娠中から子供が3歳になるまで、妊娠出産や子育てに関する情報を定期的に登録者に送る。夫婦で登録することで、妊娠中の母親と胎児の状況や、育児の情報を共有できる。同区子ども家庭支援部は「日常的に出産や育児に関する情報と接する機会を増やすことで、男性の育児参画の敷居を下げたい」と明かす。

 支所や保健所では、区の子育て情報を盛り込んだオリジナルの「港区父親手帳」を配る。「妻が持ち帰り、夫に読ませるケースが多い」という。

 参加者が限定的になりがちな父親向けセミナーでは、新たな取り組みもある。さいたま市で活動するパパネットワーク「さいパパ」は父親同士が子育てについて学び合い、情報交換する「パパ・スクール」を市の協力を得て開く。

 最大の特徴は「パパがパパを育てる循環にある」と代表の紅谷弘二さん(46)。1年間のパパ・スクールを終えた人が、次年度のスクールを運営する。「毎年新メンバーが主体的に運営するので、企画に新しい風が入る。父親の家事育児参加を広げていこうという意識を持ち、行動する人材を、毎年地域に生み出せる」(紅谷さん)

 今年で6期を迎えたスクールの卒業生は100人を超えた。他にも父親向け料理教室や家庭菜園、キャンプなど1年を通じて様々なイベントを仕掛ける。育児に積極的に関わる父親の輪は広がり続けている。

■「いつ、これやって」、夫には明確に

 日本の男性の家事・育児時間は海外と比べてもかなり少ない。進まない理由について、恵泉女学園大学の大日向雅美教授は「男性の長時間労働が大きな要因。家事や育児をやりたくてもできない現状がある」と指摘する。

 一方で「女性自身が男性に家事をやらせていない側面もある」(大日向教授)。出産を機に仕事を辞めたり、育児休業や短時間勤務により出産前と同じ家計負担をできなくなったりすることで、「家事や育児は自分がやるもの」と抱え込む女性は少なくない。加えて昨今のイクメンブームで、「ほかの家庭は夫が協力しているのに自分の夫だけしてくれないと、孤独感を募らせる事例も増えている」。

 自治体主催の夫婦向け講座などを手掛けるロジカル・ペアレンティングLLP(千葉県浦安市)の林田香織代表は「夫に手伝ってほしい、何かやってほしい」と思いながら、伝えられないまま、不満を募らせている妻が多いと指摘する。「いつ何をやってほしいかを明確に夫に伝えること。任せたら文句を言わず、やってくれたことに感謝する姿勢が大切だ」と話す。

(女性面副編集長 佐藤珠希)

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