軽減税率よりもっと大きな問題がある(安東泰志)ニューホライズン キャピタル会長兼社長

2015/11/15

カリスマの直言

「軽減税率を議論する前に、経済再生の視点から日本の税制の問題点の抜本的な議論をする必要がある」

昨今、与党の間で消費税の軽減税率を巡る議論が行われている。筆者は、低所得者層への一定の配慮や、税の所得再配分機能を否定するものではないが、軽減税率を議論する前に、そもそも日本の税制の問題点と、それがいかに日本の経済の活力を停滞させているかについての抜本的な議論が必要である。

そもそも、日本の税制には「取れるところから取る」という発想しかなく、今後の日本にとって大切にすべき投資家、起業家、そしてお金を稼げる有能な人材や企業に極めて冷淡である。その背景にあるのは、横並びを是とし、出るくいを打つ、日本独特の「嫉妬の文化」だといっても過言ではない。

現在の税制では、仮に有能な人材が日本で起業し、日夜汗水たらして頑張って成功した結果、もうけが出てもその会社に対して、世界的に見て非常に高い法人税が課され、会社から支払われる役員報酬のみならず自分の会社の配当にまで、所得税と地方税で55%もの課税(3%以上の議決権を保有し、課税所得が1800万円以上の場合)を受け、その事業を承継させようとすると、55%もの相続税がかかる。

しかも、相続した子どもが将来、再度の譲渡や相続を行なう際には、創業者の株式取得時価が引き継がれるという理不尽な仕組みになっている。その結果、相続税の二重課税が行われる可能性があることも広く知られている。つまり、どんなに頑張っても、ほとんどが「お上」に吸い上げられてほぼ何も残らない。それが日本だ。

これに対して、香港・シンガポールは所得税率が17~20%と低率であり、株式譲渡益や金利収入への課税はゼロ、そして相続税もゼロだ。日本はもちろん、世界の有能な人材が、どの場所で起業しようとするだろうか。結果は火を見るより明らかだ。

そもそも、日本の税制は全体として直接税(法人税・所得税)に過度に依存している。その直接税も、課税最低限が高く税金を払わない層が多い一方、累進度が高く、稼げる有能な人材になれば所得税と住民税で55%も課税される。ちなみに、所得税の負担がいかに偏っているかは、国税庁が公表している資料で明らかである(表1)。

(表1)給与所得者数と納税額
給与
所得者数
(%)
納税額(%)
500万円以下72.9520.03
500万円超~
900万円以下
21.5826.2
900万円超5.4753.77

出所)国税庁

それによれば、給与所得者のわずか5.5%(給与所得900万円超)の人が、所得税全体の53.8%を負担している。さらに、給与所得500万円超に相当する約27%の人が、所得税全体の80%を負担している。逆にいうならば、給与所得者の約73%の人は、所得税をわずか20%しか負担していないのだ。国民の4人に1人が、他の3人を支えているのが今の姿だ。筆者は、税による所得の再配分機能は否定しないが、過ぎたるは及ばざるがごとしだ。

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