5分で判明、ぜんそく最新検査 軽症でも薬を使おう
ぜんそくの検査で必ず行われるのが肺機能検査だ。スパイロメーターという機器で、息を思い切り吐いて呼吸機能を調べる。「ただし、咳ぜんそくの場合はこの検査では異常が出ないので、呼気中の一酸化窒素濃度を調べる新しい検査法が有効。もちろん、ぜんそくの診断にも使われる」と東京女子医科大学第一内科学講座の玉置淳教授は話す。
治療は薬物療法が基本。気道の炎症を毎日コントロールして発症予防する長期管理薬と、発作時だけ使う薬の2本立てだ。
前者の代表は吸入ステロイド薬。「咳ぜんそくを含め、軽症の人も使うべき。副作用を心配して嫌がる人が多いが、吸入薬は局所に作用するのでのみ薬のような心配は不要。妊娠中でも安心して使える」と玉置教授。ぜんそくは妊娠出産で悪化しがちだが、妊婦が発作を起こすと胎児も低酸素状態になるので危険だ。
また発作時だけ使う気管支拡張薬は、狭くなった気管支を広げる吸入薬だ。「速効性があるので発作が治まったように感じるが、気管支の炎症自体は続いているため、また発作を起こす。ぜんそく治療の主役はあくまでステロイド薬」と半蔵門病院アレルギー・呼吸器内科の灰田美知子副院長は説明する。
では季節の変わり目など、年に数回程度発作が起こるような軽症の場合はどうしたらいいか。「症状が出始めたら、あるいは出そうな段階で吸入ステロイド薬を使うといい。症状が消えても気道の炎症は続いているので、少なくとも2~3週間は毎日続けるべき」と玉置教授。
一方、これらの薬で十分管理できない中等症から重症の人には、補助的に漢方薬を加えることも。「柴朴湯(さいぼくとう)にはステロイド薬に似た抗炎症作用がある」(玉置教授)。ほかに、たんが多い場合は清肺湯(せいはいとう)、空咳を伴う場合は麦門冬湯(ばくもんどうとう)を使うこともある。
最新検査は息を吹き込むだけ、5分で結果
ぜんそく・咳ぜんそくの新しい検査法として注目されているのが、「呼気NO(一酸化窒素)検査」だ。「気道に炎症細胞の好酸球が増えると、呼気中のNO濃度が上がる。これを測ることで気道の炎症程度が分かる」(玉置教授)。
フーと息を吹き込むだけの簡単な検査で、数分で終わる。2013年から保険適用に。検査は3割負担で720円。
【編集Kが体験】 がっかり! やはり、悪化していました
小児ぜんそくでしたが、成人してからは季節の変わり目だけステロイド吸入すれば大事に至らず済んでいます。この日は自覚症状もなく、「まだ大丈夫」と期待していましたが、結果は「52ppb」(写真は正常だったライターSの数値)。
「35ppb以上はぜんそく」といわれ、がっかり。ステロイド吸入を始めます。検査は、強すぎず弱すぎずの呼気になるよう機械の指示に従って息を吐き続けるだけと、簡単でした。(53歳・編集K)
この人たちに聞きました
東京女子医科大学第一内科学講座(東京都新宿区)教授。日本呼吸器学会理事、日本アレルギー学会会長も務める。「子供も大人もぜんそくや咳ぜんそくの患者数が増えている。冬でもダニが増えるような気密性の高い住環境、欧米型の食事、感染症の減少、大気汚染などが増加の原因になっている」
半蔵門病院アレルギー・呼吸器内科(東京都千代田区)副院長。NPO法人「環境汚染等から呼吸器病患者を守る会(エパレク)」理事長も務める。「以前に比べて減少したとはいえ、ぜんそくで亡くなる人もいる。重症でない人も油断は禁物。薬の使い方や発作時の対処法を学んでおいてほしい」
(ライター 佐田節子、構成 黒住紗織)
[日経ヘルス2015年12月号の記事を再構成]
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