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朝・夕刊の「W」

望ましさの分裂 リードして/対等でいて 水無田気流 女男 ギャップを斬る

2015/11/8

ラグビー日本代表五郎丸歩選手が、テレビ番組で好きな女性のタイプを聞かれ、「一歩二歩、後ろを下がって歩く女性がいいですね」と回答。大学ラグビー時代から彼の勇姿を見てきた私は、咄嗟に「スローフォワードを防ぐためだろうか」と思ったが、違ったようだ。この発言、周囲の女性たちの失望ぶりに、改めて男女の温度差を思った。これは後発近代化国日本にかけられた「呪い」かもしれない。

そもそも、西欧式の「恋愛」とは、明治期に西欧から「輸入」されたものだ。たった1人の相手と、永遠に愛を誓い家庭を築くという、「恋愛・結婚・出産の三位一体」が、日本に導入された歴史は浅い。戦前まで結婚は、家同士の結びつきを目的としたM&A(合併・買収)のようなものだった。

あえて言えば、今なお日本には「カップル文化」は根づいていない。公式な場では男性が女性をエスコートして社交ダンスを踊る西欧文化と、先祖の霊を迎えて集団で盆踊りを踊る日本文化の差は大きい。だから日常的な行動と、恋愛や結婚に関する理想像の乖離もまた大きいのだ。私が行った未婚者対象調査では、普段は平等志向の女性でも、恋愛関連行動は男性からアプローチをしてほしいが多数派となった。

民間調査会社の統計などでも、「プロポーズは男性から」が84%。「夫が家計責任を担うべきだ」との意見には、男女とも7割以上が「賛成」。女性は恋愛に関し男性にリードしてほしいし家計も負担してほしいが、同時に対等に扱ってほしいという「望ましさの分裂」を抱えている。

男性からすれば「普段は女性を平等に扱うべきだが、つきあうときもプロポーズも男性がリードすべきで、家計責任も担わねばならない」という無理難題に見えるだろう。

もっとも日本の結婚生活では、妻は「フルバックの後ろを守る」くらいの活躍が要請される。既婚女性の有償・無償労働時間を合計した総労働時間は先進国で一番長く、要求される家事育児水準も高い。せめてプロポーズの言質くらいは男性に取らせたいという切実な願いもあろう。まずは男女がこの矛盾だらけの構造を理解し、歩み寄ることを切に願う。

共同
みなした・きりう 1970年生まれ。詩人。中原中也賞を受賞。「『居場所』のない男、『時間』がない女」(日本経済新聞出版社)を執筆し社会学者としても活躍。1児の母。

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