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相続トラブル百科

借金を相続 債務者と保証人で大きく異なる立場 司法書士 川原田慶太

2015/11/6

 故人が借金を残して亡くなった場合、そのマイナス財産を引き継がなければならない相続人には、その分だけ「温情」を施してもらえます。相続税などを計算するときに、遺産の額から借金の分を差し引いて考えてよいというルールがあるのです。このあたりのお話は、「相続税負担が減るとは限らない『借金を相続』」(10月23日付)で取り上げました。

 しかし、同じマイナス財産を引き継ぐ場合でも、この減免ルールが適用されない危険なケースがあります。それは、借金を返す人(債務者)ではなく、いざというときにその借金の返済を保証する人(保証人)の立場を相続したような場合です。

 保証人といえども、一定の条件のもとで借金を返さなければならない立場に変わりありません。借金返済のリスクがあるという点では債務者と同じような温情措置があってもいいようが気がしますが、なぜ適用外となってしまうのでしょうか。

 保証人の場合、債務者と大きく異なっている点があります。それは「本来は返済すべき立場ではない」というところです。保証人は決して気楽な立場ではなく、いざというときには、借金を肩代わりしないといけません。

 そのまさかの事態が起こって「代わりに」返済をしたときのことを考えてみましょう。保証人が返済するということは、本来返済すべき立場だった債務者の分を「立て替えてあげた」ことを意味します。あくまで立て替え払いですから、「後から返してもらえる」という理屈が成り立ちます。

 この、「あとで回収できる」という可能性の存在はやっかいで、「債務保証はマイナス財産ではない」という突っ込みどころが出てくるわけです。実際、相続税法の基本通達の中でも「保証債務については、控除しない」という方針がはっきりと明文化されています。いかに多額の借金だったとしても、故人が債務者だった場合と異なり、保証人だった場合は、相続税の負担は基本的に軽くなりません。

 従って、遺産の一部に借金の「保証」が残されていた場合、非常に厄介な事態に陥る可能性があります。まず、プラスの財産額が課税ラインを超えていたら、借金分が控除されることなく相続税の課税対象となります。しかも、保証していた借金そのものは消えないので、いずれ返済を肩代わりしないといけないかもしれない――。こうなると、ダブルの災難になります。

 家族の誰かが借り入れをしていたようなケースでは、その立場が債務者だったにせよ、保証人だったにせよ、「うちの借金」ということで混同してしまうこともあるでしょう。「我が家の借金」がある以上、誰かが返さなければならないというのもその通りかもしれません。

 しかし、故人が債務者だったのか、それとも保証人だったのかによって、相続の際の負担がかなり変わってくることもあります。この点を見落とすと大変なトラブルの引き金となるかもしれません。

川原田慶太(かわらだ・けいた) 2001年3月に京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験に合格し、02年10月「かわらだ司法書士事務所」を開設。05年5月から「司法書士法人おおさか法務事務所」代表社員。司法書士・宅地建物取引主任者として資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数務める。

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