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味噌から魚醤まで 発酵食品にまつわるよしなしごと

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NIKKEI STYLE

 近ごろは「発酵女子」などといって、美容と健康のためにぬか床や塩こうじやらを見事に使いこなすおしゃれなマダムがあちこちに出現しておられるそうです。今回は、味噌を中心とした発酵食品にまつわるよしなしごとを、つらつらとつづってみます。

まずは落語がらみの話題をたっぷりと。古典落語には「味噌」が意外なほど頻繁に登場します。前座が最初に覚える代表格『道灌(どうかん)』から、サゲまぎわのセリフ。

「味噌ひと樽と、鍋と釜敷き」

これは太田道灌が急な雨に難渋した折り、貧家の娘に雨具を所望したところが和歌をもって断られたという逸話を踏まえた落語です。その和歌とは、

「七重八重 花は咲けども 山吹の みの(実の/蓑)ひとつだに 無きぞ哀しき」

この歌をうろ覚えにした八っつぁんが下の句を「味噌ひと樽と……」にしてしまったという落語です。ここでは、味噌をひと樽ふた樽と「樽」で数えるのが新鮮な気がしませんか?という意図で引き合いに出ました。

今は味噌といったらパックや袋が一般的ですよね。さらに余談ですが東京・亀戸にある味噌専門店のおばちゃんは、大樽から味噌をしゃもじで取り分けて量り売りしてくれるのですが、そのしゃもじを3メートルも離れたところから手裏剣のごとくエイヤッと投げて味噌の山に突き刺すという特技を持っています。外国人観光客はこれを見ると「Wow,Ninja!!!」と大喜びします。余談でしたね、ハイ。

気を取り直して落語と味噌の話に戻ります。あまりにケチな主人に反発した奉公人たちが内緒で大量の田楽を買って食べまくる落語『味噌蔵』があります。田楽とは小ぶりに切った豆腐を竹串に刺し、味噌をぬって炭火であぶったものです。大豆on大豆。

同じ味噌田楽をワイワイとにぎやかに大勢で食べるのが、『田楽食い』、別名『ん廻し』です。田楽を一人が大量に何本も食べるのが当時の常識だったのか、あるいはそれがぜいたくだったから落語で夢をかなえたのかは、分かりません。

馬子が味噌樽を積んだ馬の行方を探して歩く『馬の田楽』では、ほのぼのとした情緒が漂います。人に尋ねるときのセリフ「味噌をのせた馬」が、田楽を連想させてオチにつながります。

冬の夜、火の用心の巡回を任されたおじさんたちを描く『二番煎じ』では、古典落語には珍しい肉食、猪鍋が出てきます。もちろん味噌仕立てです。夜寒に凍てつく番小屋で囲む熱々の猪鍋から味噌のふんわりとした香りが漂ってくる、味わい深い一席です。おっと、『みそ豆』もありましたっけ。これは味噌に仕込む前の煮大豆が美味しいことから巻き起こる滑稽話です。

落語『黄金餅(こがねもち)』に登場する主人公は、「金山寺(きんざんじ)屋の金兵衛」さん。金山寺味噌とは、味噌は味噌でも調味料ではなくて、ごはんのおかずや酒の肴として現在も愛されている「なめ味噌」の一種でウリやナスなどを漬けこんだいわば保存食です。江戸の職人たちは味噌だけをおかずにささっと手軽に食事をすませることが多かったといいます。

そして江戸前の味噌について。今では東京でも仙台味噌や信州味噌など、専門的には辛みそと称する味噌が幅を利かせているようです。かつて江戸=東京で堂々たるシェアを誇った江戸前味噌は、かなり甘い。しかも日持ちがしない。

当時に比べれば今は細々と……ということになるのでしょうが、熱心に作り続ける味噌蔵さんがあります。そして料理も味わえます。有名なところでは、どじょう料理の「駒形どぜう」。江戸前味噌のとろりとした甘口には、日本酒を合わせたいですねえ。

話題変わって。発酵食品界で大ブレイクを果たした「塩こうじ」に続くと目されているのが、「魚醤(ぎょしょう)」「魚醤油」です。伝統的な秋田の「しょっつる」、能登の「いしり」、または「いしる」などが有名ですが、最近は新しいものがどんどん登場しています。各地の水産関係を取材する時、たいてい新製品として「魚醤」の開発に取り組んでいます。イカ、ホタテ、サケ、キンキ……。フグ取材の際には、フグから作った魚醤で刺身を頂きました。そりゃもう、衝撃のうまさでした。

そんな今時の魚醤は、東南アジアのナンプラーなどから連想するような強いクセはなくて、本当に芳醇でとにかくおいしい。それでも馴染みがないせいか、私はいまひとつ日常的には手が出ないままでいます。数多い発酵系中華調味料(○○醤)のごとくあれこれと使い道が分かるようになると、ずいぶん食卓も変わると思うのですが。

最後に発酵体験談を披露します。自分で納豆を作ったことがあります。一晩水につけておいた大豆をゆでる。5センチメートルほどの短い稲わらをさっと熱湯にくぐらせ(雑菌の除去だそうです)、さっきのゆで大豆とともに密封容器に入れる。パチっと蓋をしたら容器ごとこたつに放り込んで、一晩。めでたく完成。これだけです。

仕上がりはみごとに糸を引く納豆ぶりではありましたが、発酵なのか腐敗なのか判別がつかないのが、スリリングです。かなりビクビクしながら食べたなあ。賢明な皆様は、けっして真似はなさらぬよう。

(次回は11月18日更新予定)

 立川談笑(たてかわ・だんしょう) 1965年、東京都江東区で生まれる。海城高校から早稲田大学法学部へ。高校時代は柔道で体を鍛え、大学時代は六法全書で知識を蓄える。予備校講師など様々なアルバイトを経験し、93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。テレビの情報番組でリポーターを務めながら芸を磨く。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名。05年に真打昇進。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評がある。十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
<今後の予定>都内での独演会12月5日、吉笑(二ツ目)、笑二(同)、笑坊(前座)の弟子3人とともに武蔵野公会堂(東京都武蔵野市)で開く一門会は11月27日、12月25日の予定。
立川談笑HP http://www.danshou.jp/

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