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「縄文王国」の青森県で東北以北最古級の貝層を発見

歴史新発見 青森県三沢市・野口貝塚

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NIKKEI STYLE

 縄文時代の巨大集落跡で知られる三内丸山や、独特の姿をした「遮光器土偶(しゃこうきどぐう)」の亀ヶ岡、世界最古とされる土器が見つかった大平山元(おおだいやまもと)など縄文文化を代表する遺跡が集積する青森県で今年夏、東北以北では最古級とみられる貝層が見つかった。三沢市の野口貝塚で、約8000年前の縄文時代早期中葉と推定されている。周辺では開発の予定があり、保護の必要から青森県三沢市教育委員会は国の史跡指定を目指す。

不思議な地形の貝塚

青森県東部には面積約63平方キロメートルに及ぶ県内最大の湖、小川原湖が広がる。湖は北側を六ケ所台地、西側を三本木台地、南側を三沢台地に囲まれ、東側は砂州で太平洋と隔てられている。

野口貝塚が形成されたころは太平洋とつながった「古小川原湾」ともいえる入り江で、約4000年前の縄文後期初め頃に始まった世界的な低温化と海岸砂丘や砂州の発達などによって次第に太平洋側がせき止められ、現在の状態になったと考えられている。

野口貝塚は小川原湖の東南岸からわずか約100メートル、標高20~25メートルの丘陵にある。現場は高台だが急斜面の段丘に囲まれた複雑な地形となっている。調査をしている三沢市教育委員会文化振興係の工藤司主事は「見学に来る多くの考古学関係者が通常の貝塚では考えられない地形と指摘する」と話すほどだ。

野口貝塚はもともと1962年に立教大が中心となって発掘調査が行われた。その結果、多数の土器や亀が岡式の遮光器土偶など縄文早期から晩期までの遺物を発見、数千年にわたって断続的に営まれた遺跡であることが分かった。面積は約3万平方メートルとされている。

今回の調査は地権者が現地を開発する意向を示したことから遺跡の規模など内容を確認するために実施。一般的に貝塚の調査は膨大な労力と費用を要する。面積も広く貝塚の破壊を避けるため、立教大の調査をなぞる形で10カ所試掘した。

そのうちの一つで地表面から約80センチの地点で前期初頭(約6000年前)貝層(東西約1.5メートル×南北約2.5メートル)を発見。さらに約30センチ下まで掘り下げると早期中葉の貝層(東西約1.5メートル×南北3.0メートル)が見つかった。

主にアサリやハマグリの貝殻で、ほかに魚骨、土器なども出土した。ただ住居跡や墓など当時の人々の生活状態や居住実態などが分かる居住域に関しての資料は得られなかった。

とはいえ、周辺には近年までわき水が出ていたと伝わるいかにも水酌みや洗い場など「水場遺構」がありそうな低地がある。それに加え、ほとんどが手つかずの未調査地だ。調査を進めれば生活に関連する遺物や遺構などが出てくる可能性は高いとみられる。

小川原湖周辺に高密度で集積

野口貝塚での調査と平行して、谷部分にある道1本隔てた直線距離で約150メートルの丘陵にある早稲田(1)貝塚でも試掘が行われている。両貝塚間は視界を遮る大きな障害物はなく、どちらからもお互いの姿を確認できる位置関係にある。

丘陵の斜面には貝類が一部露出している中、簡易的な掘削調査の結果、地表約80センチの深さに貝塚を確認。早期末葉(約6200年前)と考えられており、その下には早期中葉の貝層が残存している可能性が高いとみられている。

早稲田貝塚は1956年に東京大の佐藤達夫(後に教授)氏らによって調査が行われたことがあり、土器が出土した層ごとに各土器は古い順に1~6類に分類された。この分類は青森県周辺の縄文早期から前期の土器研究で欠かすことの出来ない基準資料となっており、約60年を経た現在も使用されている。

70年代には同じ地域内で別の貝塚が発見されたことから、先に見つかった方を早稲田(1)貝塚、後に見つかったのを早稲田(2)貝塚と呼び分けている。ただ、(1)についても遺跡の全体像が分かっていないことから遺跡の範囲を確認するための調査が行われ、地層の詳細な再確認などが行われる予定だ。

このように、青森県東部の小川原湖と周辺に点在する鷹架沼や姉沼など「小川原湖沼群」周辺は日本有数の貝塚遺跡密集地帯となっている。噴火湾(北海道)、仙台湾(宮城県)、東京湾(千葉県)と並んで集積度が高いことで知られている。三沢市教育委員会のまとめによると、小川原湖沼群周辺の縄文時代の「貝塚および動物遺体出土遺跡」は計35カ所にも及ぶ。

八戸市埋蔵文化財センター「是川縄文館」では「小川原湖周辺の縄文文化」と題する企画展を開催中(11月23日まで)だ。現在の湖沼地帯に暮らした縄文人の生活がわかりやすく展示されている。それによると、現在の小川原湖西岸から3~4キロ西側に位置する二ツ森貝塚や古屋敷貝塚などでは海水域の生物関連の出土が多く、入り江の状態だった時期があることが分かる。

国の史跡に指定されている二ツ森貝塚は、縄文時代前期にはアサリ、ハマグリ、マガキなど海水性の貝塚なのに対し、中期後半にはヤマトシジミが主体の汽水性の貝塚が形成され、水域が変化したことが如実に表れている。

できるだけ早く史跡登録目指す

青森県文化財保護課の岡田康博課長は小川原湖周辺の貝塚や遺跡が良好な状態で保存されている一方、開発による損壊の可能性がある状況を指摘。「野口貝塚の調査は小川原湖の歴史を考える上で欠かせない。周辺の古環境を考える上でもとても重要だ。地球規模の気候変動によって海水面の上昇や下降が起きたとされる縄文海進・海退がどのように表れたかを理解する材料にもなりうる」と期待する。

縄文遺跡群を巡っては、「自然と人間が共生し、約1万年もの間にわたって営まれた世界史上稀有(けう)な先史時代の文化」として北海道と青森、秋田、岩手の各県と関係自治体が「北海道・北東北の縄文遺跡群」で世界遺産登録を目指している。計18の縄文遺跡で構成するが、青森県は最多の9遺跡が含まれている。

弘前大の関根達人教授(考古学)は「野口貝塚のある小川原湖周辺の貝塚は規模は小さいものの時期が古く、縄文早期から前期にかけての連続性がたどれる点で貴重。また、周辺の環境が良く保たれていることも重要だ。この貝塚群が史跡登録され、世界遺産の構成資産になることがあれば、世界遺産登録の後押しになるのではないか」と評価している。

三沢市教育委員会では野口、早稲田(1)の両貝塚の調査を続ける予定。「より古い貝層が見つかる可能性もあるが、まずは住居跡など居住域に関係する発見を急ぎたい」といい、できるだけ早い時期の史跡登録を目指している。

(本田寛成)

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