信託ならできる 孫のやる気を引き出す非課税贈与弁護士 遠藤英嗣

2013年4月、「教育資金非課税贈与制度」が始まりました。祖父母や親が、30歳未満の孫や子の教育資金に充てるため、金融機関を利用して一括贈与した場合、1500万円まで(習い事などは500万円まで)贈与税を非課税とするという制度です。この制度を利用した信託商品「教育資金贈与信託」が人気を集め、ヒット商品となっています。今年9月末までの2年半の間に信託銀行が受託した金額は1兆円に迫る勢いだそうです。

一括贈与は「ありがたみ」続かず

信託銀行の教育資金贈与信託は大ヒットした

祖父母による孫への教育資金贈与をあてにしている親は多いようですが、実際の手続きは結構、面倒です。教育費に充てたことを証明するための領収書や明細書を、お金を引き出すたびに提出しなければならないからです。

また、ほかの孫との兼ね合いから「不公平だ」と親族同士が不仲になったり、孫の喜んだ顔をいったんは見られても、それが長続きしなかったりするなど、必ずしも良い面ばかりではありません。経済的な負担を軽減してもらえたことに対する感謝の気持ちは、もちろん親の側にもあるのでしょうが、一括贈与なのでありがたみが継続しないわけです。

今回は、教育資金贈与に家族信託を活用することによって、孫に「ありがたい」という気持ちだけでなく、「やる気」も奮起させる方法についてお話しします。

信託の種類の中に、法改正で可能になった「自己信託」という制度があります。自己信託とは、例えば、左手に1億円を持ち、「自分自身を受託者として信託する」として所定の手続きのもと右手に移すと、なんと、この1億円が信託財産となり、その人のものではなくなるという制度です。誰もが驚く「マジックトラスト」ともいえるものです。

その人の財産ではなくなるため、もし、その人がその後に破産しても、債権者はその1億円を差し押さえることはできません。でも、「信託の目的」に従えば、その人はこの1億円を使うことができるのです。もちろん、資産隠しを目的とした利用はできませんし、「自分自身だけのためにお金を使う」というのもダメ。無効となります。

教育資金贈与にこの仕組みを使う場合、仮に「2000万円を信託し、自分と孫のために使う」と書いてしまうと、孫に1000万円を贈与したとみなされ、贈与税が課されてしまいます。では、どのような方法をとればよいのでしょうか。

給付金額を決めるのは祖母

今回の相談者は、中学3年生の孫を持つ70代の女性です。この女性は私に「孫に勉強のやる気を起こさせ、しかも課税されない仕組みを考えてほしい」と依頼してきました。

そこで私は、「成績が上がれば多めに教育費を出す。また、有名校に進学すれば入学金や留学費などを出してあげる」という自己信託の方法を提案しました。つまり、「成績の良しあしによって給付金額を変える」。名付けて「馬にニンジン家族信託」。名付け親は私です。

この「やる気」は孫のというより、その親の方ともいえます。親は祖母からよりお金をもらうために、子どもに勉強を頑張ってもらわなくてはいけないからです。成績が良かったかどうかについては、もちろん祖母の判断になりますが、親としても大きく心を動かされる仕組みといえるでしょう。

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