ひっそりと咲いている小さなランに魅力を感じる
ここモンテベルデは乾季に入ったようだ。卵や幼虫、サナギが多い時期で、今どうしても逃せない昆虫の観察とデータ記録が山積みになっている。そのうえ、ツツガムシやダニが増え始め、とにかく痒い。カイカイの毎日が始まった。
今回は、そんな乾季の初めに花の季節を多く迎える植物、ラン(蘭)を紹介しよう。
コスタリカに来た当初からよく耳にするのが、この国のランの多様性はスゴイということ。種の密度が世界一高い国なのだそうで、これまでに1600種以上(面積が7倍ある日本では約200種)が記録されていて、固有種も少なくない。
そしてそのほとんどが、小さなランたち。花の大きさは、ほんの数ミリという虫めがねか顕微鏡サイズだ。
誰にも気づかれず、ひっそりと咲いている小さなランに、ぼくは魅力を感じる。
ランの多くは、ほかの植物の幹や枝、または岩場に着生している。それを可能にしているのが、ここモンテベルデのような熱帯雲霧林の気候だ。乾季でも霧雨が降ったり霧(雲)が通り過ぎたりと、空気中の水分を吸収することができる。根っこはちぢれ麺のような感じのものが多く、丸く膨らんだ茎(球茎)に水分を蓄えることができる。
コスタリカの多様なランのほとんどは、雲霧林、特に多雨なカリブ海側に集中している。でも標高2500メートル付近を超えると、種数は激減し、そのほとんどが着生ではなく、地生のものになるという。
種の同定は、コスタリカ大学生物学部のDr. Mario Blanco先生にお願いした。先生は、「ここ数年、毎年のように新種が10種程度コスタリカで見つかっていて、記載されている」と言う。たくさんの情報ありがとうございます!
1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学でチョウやガの生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html
(日経ナショナル ジオグラフィック社)
[書籍「ミラクル昆虫ワールド コスタリカ」を再構成]
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