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相続税負担が減るとは限らない「借金を相続」 司法書士 川原田慶太

2015/10/23

 相続の対象となる遺産には、プラスとマイナス両面があります。現金や土地など、もらって得をするプラスの財産についてはイメージがしやすいでしょう。しかし、いざ相続となれば、プラスのものだけを引き継げばよいというわけにはいきません。プラスの財産を相続する以上は、借入金や未払いの請求など、もらうと損をするマイナスの財産も、原則として引き継ぐのがルールです。

 ただし、「もらい損」になるとは限りません。マイナスの財産も一緒に引き継ぐ場合、相続の際の負担が相応に軽減されるケースがあります。例えば、代表的なものが相続税です。遺産が一定の額を超えると相続税の課税対象となってくるわけですが、プラス財産の額だけで判断されるわけではありません。

 1億円の評価額の財産と、7000万円の借金が遺産として残された家庭のケースを考えてみましょう。現行の制度で考れば、財産が1億円もあれば相続税の課税ゾーンに入ってきます。しかし、いくら価値の高い財産があるといっても、同時に借金も7000万円も引き継ぐのですから、そのまま課税されてはたまったものではありません。

 正味では差し引き3000万円分しかプラスを得ていないということになるはずです。実際、こういった場合には債務を控除、すなわちマイナス分は差し引いて相続税の計算をしてよいという決まりになっています。1億円だと思っていたものが3000万円にまで縮小すれば、相続税の負担の心配もなくなってくるでしょう。

 つまり、故人が残した借金などのマイナス財産が多くなればなるほど、それと反比例して相続税の負担は軽くなることになります。実際、「多額の借り入れをして、相続税負担を圧縮する」といった相続対策プランが、善しあしは別として、提案されることも珍しくありません。

 しかし、同じように相続でマイナス財産を引き継いだとしても、「借金が多い=税負担が少ない」の法則が成立しないケースがあることに注意が必要です。例えば、亡くなった人が「借金を直接負っていた」わけではなく、「他人の借金の保証人になっていた」ような場合です。

 故人が債務者(借金を返す必要がある人)でも、保証人(債務者が借金を返さないときに、代わって返さないといけない人)でも、死亡によって義務がリセットされるわけではありません。どちらもあまり歓迎したくないマイナス財産ですが、債務者も保証人も、地位としてはそのまま相続の対象となり、相続人が引き継がないといけない点は同じです。

 しかも、保証人というのはいざというときに、借金を肩代わりしないといけないリスクを負っています。では、なぜ、同じ借金でも保証人は相続税などの負担に反映されないのか。このカラクリについては、次回取りあげてみたいと思います。

川原田慶太(かわらだ・けいた) 2001年3月に京都大学法学部卒。在学中に司法書士試験に合格し、02年10月「かわらだ司法書士事務所」を開設。05年5月から「司法書士法人おおさか法務事務所」代表社員。司法書士・宅地建物取引主任者として資産運用や資産相続などのセミナー講師を多数務める。

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