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うっかりミス急増? うつ病性の「仮性認知症」かも

2015/10/26

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

初期の認知症を疑われた人の中には、うつ病が原因で認知症のような症状が起こっている場合もある。このような状態は「仮性認知症」として認知症とは別に考える必要がある。今回は治療によって大幅な改善が望める「仮性認知症」について紹介する。

■治療で改善! うつ病が原因の仮性認知症

仮性認知症とは、うつ病が原因で発症するもので、最近、テレビの健康番組などで「新型認知症」として取り上げられ注目を浴びている。「これは認知症とはまったく異なるメカニズムで起こるもので、早期発見、早期治療で劇的に改善が望めます」と話すのは、メモリークリニックお茶の水の院長で、東京医科歯科大学特任教授の朝田隆さん。

「『新型』と呼ばれたりしますが、仮性認知症は以前から知られている病気で、社会の高齢化に伴い近年増加しています。通常の認知症とは治療法が異なるので、診断では、うつ病、もしくは認知症であるか否かの判別が重要になってきています」と朝田さん。うつ病性仮性認知症は以前、たとえ放置しても本格的な認知症には移行しないといわれていたが、適切な対処をしないと、加齢などに伴い本当の認知症を起こすリスクが高いことが最近になって分かってきた。つまり、うつ病性仮性認知症は認知症予備軍といえるのである。

では、うつ病性仮性認知症と、認知症は、どこが違うのだろうか。

■前頭葉の機能不全が原因

「脳のメカニズムでいえば、認知症で最も多いアルツハイマー型認知症は、海馬の機能不全で起こりますが、うつ病が原因の仮性認知症は前頭葉の機能不全で起こります」と朝田さん。

もともと前頭葉は加齢の影響を受けやすく、前頭葉の血流量は20代に比べ80代では20%低下するといわれている。うつ病性仮性認知症になるとさらに前頭葉への血流量が低下する。脳の血流量を調べるSPECT画像検査で調べると、その差は歴然としている。

前頭葉は注意力、集中力、段取りなどをつかさどる部位なので、うつ病性仮性認知症になると、日常生活の中で、うっかりミスが多くなる。

例えば、妻から「お父さん、私出かけるから、ここに書いてある5つの物を買っておいてね」と頼まれた夫が、「ああ、分かった、分かった」と返事をしたにもかかわらず、妻が帰宅したときにはまだ買い物に行っておらず、「お父さん、忘れたの?」と言われて初めて、「ああそういえば…」と思い出すようなミスがそれ。そもそも人の話を注意して聞いていないなど、注意力が散漫になっているためうっかり忘れてしまうというタイプの物忘れが、このうつ病性仮性認知症の特徴だ。

また、うつ病により自律神経が乱れるため、頭痛、食欲不振、睡眠障害などの身体症状を引き起こすのも、この仮性認知症の特徴である。

■2項目以上あれば要注意! うつ病性仮性認知症チェック

前ページで説明した「あれ、何するんだったっけ?」というタイプの物忘れに加え、下記の項目が2つ以上当てはまる場合は、うつ病性仮性認知症の可能性が高いという。

1.便秘が多い

2.肩こりや頭痛に悩まされている

3.以前に比べ食欲が落ち、体重が減ってきた

4.夜中に目が覚めてしまう

5.以前より疲れやすくなった

うつ病性仮性認知症の原因は、ずばり加齢とストレスである。先に述べたように、前頭葉の血流量は加齢とともに低下する。そのため、注意力、集中力が低下して、若い頃と同じように仕事ができなくなる。これが第一のストレスとなる。

また、加齢に伴う生活環境の変化、たとえば、定年退職や、配偶者や近親者の死なども大きなストレスとなる。

こうしたストレスにさらされ続けることにより、前頭葉の血流量がさらに低下して、前頭葉の神経伝達物質が減少。自律神経の働きが悪くなり、便秘、頭痛、肩こり、食欲不振、倦怠(けんたい)感、睡眠障害など全身にさまざまな症状が起こる。

人によっては、こうした症状から、自分はがんなどの大病になったのではないかと、不安になり、それがさらにストレスとなって、前頭葉の血流量を低下させる。これら一連のストレスのスパイラルがうつ病性仮性認知症を悪化させる原因となるのである。よって、うつ病性仮性認知症にならないためにはストレスをためないことが最も重要である。

(伊藤左知子)

Profile
朝田隆(あさだたかし)
メモリークリニックお茶の水院長、東京医科歯科大学特任教授
1982年、東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科精神科勤務、英オックスフォード大学老年科留学、山梨医科大学精神神経科勤務、国立精神神経センター武蔵病院リハビリテーション部長などを経て、2001年より筑波大学精神医学教授。14年より東京医科歯科大学特任教授。15年4月より医療法人社団創知会 メモリークリニックお茶の水院長、筑波大学名誉教授。専門分野はアルツハイマー病の臨床一般、研究面では認知症の早期診断法・予防。

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