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難敵マツタケに「秘密兵器」でリベンジ

立川談笑

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NIKKEI STYLE

 秋の味覚といえば、サンマ。あるいはカキやナシ。栗ごはんもうれしいですね。中でも最高なのが、マツタケ! 焼きマツタケ、土瓶蒸し、天ぷら、マツタケごはん、茶碗蒸し。今回は香ばしいマツタケのお話をします。

これほど日本の技術が進歩しても、いまだにマツタケばかりは栽培ができないそうです。誰かがえっちらおっちらと山に分け入って見つけて採ってくるしかありません。わずかな季節しか採れないし、量も少ない。採るための労力も含めると、マツタケが高価なのも納得できます。

その点、マイタケも希少なキノコで、見つけた人が踊りだすほどの珍しさだったからその名がついたと聞きます。ところが今ではわりと普通に栽培できるようになっちゃった。マイタケはおいしいし大好きですが、青果店の店頭で見かけても私は踊りません。そこへいくと、まだまだマツタケは堂々たる別格の地位を保っています。

そして季節になると、マツタケ情報をテレビ番組で取り上げることがよくあります。私も何度かマツタケがらみの取材に出掛けました。これはもう10年以上も前の話。岡山県と広島県の県境あたりに、期間限定の「マツタケ市」が立っていました。山あいの一角にテニスコートほどもある大きなテントが張られて、近郷で採られたマツタケがそこに集まってくるのです。

手持ちのコンテナに山と積まれたマツタケが、次から次へとやってくる。まさに圧巻の光景でした。テントの中に入るや、むわっと濃厚なマツタケの香りに包まれます。そしてそれを目当てに遠くからも皆さんが車で押し寄せますから、テントの中はにぎやかです。

「うわあ、マツタケだあ!」

印象的だったのは、笑顔。どれを買おうか物色するお客さんたちが、満面の笑みなのです。気が付くと、カメラを前にリポートする私自身もひたすら笑っていました。マツタケづくしの食卓を囲むときも、みんなの笑顔が輝きます。そう、マツタケからは何かしらの幸福成分が発散されているのです。いや、そうだと私は勝手に信じています。

山形県ではマツタケ狩りに挑戦しました。2年前のことです。高価なマツタケが豊作らしいから、「マツタケをいっぱい採って、大もうけ」という能天気なロケ取材です。マツタケがよく採れる通称「マツタケ山」は、誰かの所有する土地ですからおいそれと立ち入ることはできません。

ところがそこでは2000円なりの入山料を払えばその山に入ることができて、とれたマツタケはすべて持ち帰っていい。そんな山があったのです。山に入る直前、下りてきた人たちと行き合いました。竹かごの中には形のいい大ぶりなマツタケが何本も。期待に胸が膨らみます。

「私は初めてなんだけど、こんなに採れるとは思わなかった。なにしろこの人がマツタケ名人だから」

そういうことですか。残念ながら私たちに指南役はいません。ディレクターは何とかして仕込もうと数人に交渉したらしいのですが、マツタケ真っ盛りの時期には自分が採るので忙しい、と。そりゃそうだ。仕方がないのでずぶの素人ばかりの取材チームでマツタケ山に挑みました。

そして結論。全く採れませんでした。2日かけて、泥んこになって山をはいずりまわって、それこそ一本も採れなかった。完敗。マツタケが高価な理由を痛感した次第です。

そして今月。マツタケ狩りリベンジに挑んできました。向かったのは長野県上田市。マツタケ料理を振る舞うお店がマツタケ山を持っていて、体験させてくれるというのです。

スタッフ一同、山に分け入ってマツタケ探しを始めます。赤松の周りを探す。松葉の下をのぞき込むために、上からではなく、斜面を下から見上げるように探す。名人に教えられた通りに探してはみますが、全然見つかりません。

肩を落として、いったん山を下りると、したり顔のディレクター氏が「ふっふっふ。今回は秘密兵器を用意してあるんですよ」と耳打ちしてきました。その秘密兵器とは、なんと犬。それも元警察犬を投入するというのです。

トリュフ探しに豚や犬の嗅覚を使うとは聞きますが、それをマツタケに応用するとは何という恥知らず、いや、大胆なことでしょう。犯人の遺留品よろしくマツタケの匂いをかがせて、捜索開始。

すると、あるわあるわ。瞬く間に10本近くのマツタケを探し出したのです。すごいな、犬。鼻は利くし、かわいいし。ということで、ワンちゃんの手ならぬ鼻を借りて、マツタケ狩りリベンジに成功しました。

思えば2年前の山形県で、まるでマツタケを見つけられぬまま、我々は山を下りて町の食品店を取材していました。その時期、小さなその店は周辺の山の所有者が採ったマツタケの集荷場になるのです。

売りに来る人、買いに来る人、ずらりと並んだマツタケなどを撮影していると、いきなり「おう、談笑さん!」と声を掛けられました。振り向くと、なんと知り合いでした。なんたる奇遇。都内で落語会の運営に関わるほどの落語好きなおじさんで、お金持ち(たぶん)です。

「なぁにやってんだい、こんなところで」

それはこちらも聞きたいところです。何でもご当地の出身で、恩師に手土産としてマツタケを買いに立ち寄ったのだそう。

「素人が山に入ったって、どうせ採れっこねえんだろ。ほれ」

あららら、ら。その店でずいぶんな数のマツタケを買って、私にくださいました。うわあ、ありがとうございます!

教訓。貴重なマツタケを手に入れるには、山奥で赤松を探すのではなく、街中で優しいお金持ちを探す方が確実かもしれない。紅葉の始まりつつある山を見上げて、しみじみそう思うのでした。

(次回は11月4日の更新予定)

 立川談笑(たてかわ・だんしょう) 1965年、東京都江東区で生まれる。海城高校から早稲田大学法学部へ。高校時代は柔道で体を鍛え、大学時代は六法全書で知識を蓄える。予備校講師など様々なアルバイトを経験し、93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。テレビの情報番組でリポーターを務めながら芸を磨く。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名。05年に真打昇進。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評がある。十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
<今後の予定>都内での独演会11月3日、12月5日、吉笑(二ツ目)、笑二(同)、笑坊(前座)の弟子3人とともに武蔵野公会堂(東京都武蔵野市)で開く一門会は10月30日、11月27日、12月25日の予定。
立川談笑HP http://www.danshou.jp/

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