「すご腕外国人」ようこそ、優遇制度利用で増加中企業人やIT技術者…

高度な専門知識や技能を身につけた「すご腕外国人」が日本に増えてきた。永住権を認める条件を緩和したり、母国から親を呼び寄せやすくしたりする優遇制度が始まって3年がたち、利用者は導入初年度の6倍の3千人を超える。だが国境を超えた人材争奪戦が激しくなる中で、日本が優秀な外国人をさらに呼び込むにはどうすればいいのか。外国人に聞いてみた。
34歳でいきなり最長5年の在留許可をもらった米国人のヘネシーさん(写真右、東京都渋谷区のオフィス)

「『いきなり最長5年の在留許可をもらえたの?』と驚かれます」。都内で妻子と一緒に暮らす米国人、ピーター・ヘネシーさん(34)はこう話す。太陽光関連の投資案件について助言するのが主な仕事で、米エヴァーストリーム・キャピタル・マネジメントが日本法人を設立したのに伴い今春、来日した。

外国人が日本の企業でホワイトカラーとして働く場合、最初の在留期限は1年、長くても3年という例が一般的だ。30代前半で初めから最長5年の在留許可を取得できる例は珍しい。裏付けとなっているのは「高度人材ポイント制」という優遇制度だ。人口減を踏まえ、高い専門知識や技能を身につけた外国人の受け入れ拡大策として、海外の制度を参考に2012年5月に始まった。

対象は外資系企業の経営幹部や専門職、企業や大学の研究・開発者、情報技術(IT)の専門家といった職種だ。このうち年齢や学歴、職歴、年収などを点数にして合計が合格点(70点)に達し、国が認めれば「高度人材」となる。

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通常10年の在留が必要な永住権の取得が短縮されたり、母国から親や家事使用人などを呼び寄せやすくなったりといった恩恵がある。いきなり最長5年の在留許可をもらえるのも特典の一つだ。

昨年5月に日本に来たイタリア人ビジネスマン、ペルロ・エンリコさん(61)は来日時に高度人材の認定を受けた。名刺の肩書は「グアラ・クロージャーズ・ジャパン(東京都港区)代表取締役」。酒類メーカーは輸出先のレストランなどで瓶の中身を詰め替えて客に出す被害に悩む。不当な開栓を防ぐ特殊な栓を供給するのが仕事だ。日本を拠点にベトナムやタイなどアジア10カ国を飛び回る。

高度人材に認定された点数を示す書面を掲げるエンリコさん(東京都港区のオフィス)

61歳で職歴も長いエンリコさんの得点は85点と合格点を大きく上回った。だが「私のようにシニアは高得点を取れても、若い人が70点以上を取るにはよほど高収入でないと」と話す。法務省が公開する高度人材ポイント制の計算表をみると、30歳代前半の年収で最も高い配点は「1千万円以上」で40点だ。「500万~600万円」だと15点で、「500万円未満」となると0点だ。

ある国立大学に勤める中国人研究者(34)はポイント制の計算表で自己採点したが70点に及ばなかった。博士号を持っているため学歴や日本語能力の評価項目は高得点だったが、今の年収では十分な点数にならないという。「30代の大学研究者で1千万円以上の年収をもらっている人はどれほどいるのか」と嘆く。

別の大学のタイ人研究者(31)は「子育てを手伝ってくれる親を呼び寄せたいが……。子どもがいる若い研究者には親の呼び寄せ条件の緩和が永住権の取得優遇より重要だ」と訴える。

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日本で働く外国人や雇用主の双方に助言を続けている行政書士の飯田哲也さんは「年功型の賃金体系を導入している日本の企業や大学で働く20~30代の優秀な人材が今のポイント制で70点以上を取るには年収の条件が厳しすぎる。思い切って年収基準を見直すべきだ」と指摘する。

スイスのビジネススクール、IMDの魅力度調査(14年)によると、高度人材が働きたいランキングで日本は60カ国・地域中48位だ。アジアの中でも、シンガポール(3位)や香港(9位)、中国(18位)、タイ(19位)に大きく水をあけられている。大和総研の海外リサーチ・ヘッドの児玉卓さんは「高度人材の獲得競争は激化しており、日本は移民の是非を含む本格的な政策議論を始めるべきだ」と話す。

日本の人口が自然減だけで年二十数万人ずつ減る中で、研究開発や国際競争力を底上げするには外国人の労働力が欠かせない。高度な専門知識や技能を持つ人材だけでなく、単純労働に携わる外国人を含めた生活基盤づくりなど、総合的な受け入れ策を検討するときを迎えている。

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本国から親呼び寄せ、条件を緩和

高度人材ポイント制の特典で、30~40代の外国人から人気なのは子育てを手伝ってくれる親を本国から呼べる制度だ。子育て世代には「年収基準が高すぎる」といった声を映し、2013年末に年収要件などを緩和した。

従来は高度人材自身の年収だけで1千万円以上なければ認めなかったが、パートなどで働く配偶者の年収を合わせた「世帯合計で800万円以上」となった。子どもの年齢は従来の「3歳未満」から「7歳未満」に広がった。

朗報を聞きすぐ申請したという都内の金融機関に勤める米国人男性(40)は4月に妻の母親を呼び寄せた。「3歳と生後5カ月の娘2人の世話を手伝ってもらえるようになり、妻も私も助かっている。日本での生活がようやく楽しくなってきた」と話す。高度人材の獲得にはこうした日常生活を支える特典が重要なようだ。

(編集委員 阿部奈美)

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