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ペット事情の謎、飼い犬が急減しているワケ 編集委員 小林明

2015/10/16

ペットの人気は飼い犬から飼い猫へとシフトしている

あなたは犬派ですか? それとも猫派ですか? ペット好きにも様々なタイプがあるが、犬と猫が「二大派閥」であることは昔から変わらない。ところが、ここ数年で飼い犬が飼い猫に比べて急速に減っているのをご存じだろうか。

その背景に何があるのかを探ってみると、興味深い社会情勢や世相が見えてくる。今回は飼い犬と飼い猫をめぐる最近のペット事情について紹介しよう。

■犬・猫が「2強」、人気はなぜか犬→猫

まずは最初の質問――。

全国には飼い犬、飼い猫がどの程度いるか分かりますか?

答えはそれぞれ約1千万匹。

ペットフード協会(東京・千代田)の最新の統計によると、2014年10月時点で飼い犬は1034万6千匹、飼い猫は995万9千匹いるとみられている。ともに国内人口1億2708万3千人(2014年10月)の8%程度にあたる水準だ。つまり人間が12~13人いるところには、犬と猫が1匹ずついる計算になる。

国内世帯数(5495万)に占める飼育率を調べると、犬が15.06%、猫が10.13%。これがペット界の「2強」と位置付けられており、次いで金魚4.9%、メダカ3.7%、熱帯魚2.3%、カメ2.2%、小鳥1.8%などが続く。

つまり、ペットの種類としては犬と猫の「2強」が飛び抜けて多く、あとは金魚などの魚類がかなり離れてこれを追い掛けているという構図になる。

■4年間で犬は13%減、猫は4%増、今年には猫が犬を追い抜くか?

ところが最近の数値の推移を調べると、意外な事実が浮かび上がる。実は猫に比べて犬の飼育数や飼育率が急速に減少しているのだ。2010~14年の間に犬の飼育数は1186万匹、1194万匹、1153万匹、1087万匹、1035万匹と推移し、4年間でざっと13%も減っている。犬の飼育率も17.83%から4年間で15.06%に低下した。

一方、猫の飼育数は961万匹、960万匹、975万匹、974万匹、996万匹と推移し、4年間で4%増えた格好。「今年あたりは飼育数で猫が犬と並ぶか、猫が犬を追い抜く可能性も取り沙汰されている」(ペットフード協会)。猫の飼育率も4年間ずっと10%前後を維持。世帯数の増加傾向が続くなかで、猫人気は陰りが見えていない。

犬人気が急速に下がる一方で、猫人気がジワジワと盛り返しているというわけ。

■人気がなぜ犬から猫にシフトしたのか?

どうして人気が犬から猫にシフトしているのだろうか?

「犬は猫に比べて散歩やしつけ、餌やりなどでより手間がかかるため」(電通ビジネス・クリエーション・センターの奈木れいさん)という。たしかにマイペースで生活している猫に比べて、犬は飼い主とのコミュニケーションが濃密で散歩に出掛けたり、トリミングなど身の回りの世話もより手がかかる。犬好きにとってはその世話をするのが大きな魅力だが、特に最近は負担がより少なくて飼いやすい猫の方が好まれる傾向があるようだ。

これには社会構造の変化も関係している。

厚生労働省の統計を調べると、日本国内の世帯数が増える一方、平均世帯人員はどんどん減っている様子がうかがえる。世帯構成が細かく分裂する現象が起きているのだ。世帯数は1986年には3754万だったが、2013年には5011万に増加。一方、平均世帯人員は同時期に3.22人から2.51人に低下した。

祖父母、両親、子どもからなる「3世代世帯」や「夫婦と未婚の子どものみの世帯」などが減り、一人住まいの「単独世帯」や子どもがいない「夫婦のみの世帯」などが大幅に増えているのが主な原因。

一人住まいや共働きなどの世帯にとって、「手のかからない猫の方が飼いやすい」というわけ。

■世話、世帯構成、経済、住環境などが原因

経済的な要因もある。

犬と猫を比べると、平均余命はともに14歳台で同程度。だが、生涯必要経費はそれぞれ118万5248円と70万3202円で犬の方が飼うのにかなりお金がかかることが分かる。特に犬では中型・大型犬(平均余命13.74歳、生涯必要経費115万2466円)より小型犬(同13.81歳、同122万5676円)や超小型犬(同15.32歳、同131万8801円)の方が平均余命が長く、必要経費も高い。

これらに加えて、鳴き声や散歩の際のオシッコやフンが周囲に迷惑になるなど地域や住環境の問題もある。ひところの犬ブームがやや落ち着いたことも影響しているようだ。

犬人気が低下し、猫人気が根強い背景にはこうした要因があると考えられている。

ちなみに飼育阻害要因をペットフード協会が2014年の調査(複数回答可)で聞いたところ、犬の2位に「十分に世話ができない」(24.6%)が入った。犬の方がやはり世話により手がかかることが障害になっているためだろう。一方、猫では「十分に世話ができない」(22.2%)が4位。「お金がかかる」(23.8%)などよりも低かった。

■飼い主は50歳代が最多、子ども独立、経済・時間的余裕……

飼い主の年齢層では何か特徴があるだろうか?

飼い主の年齢層別に犬、猫の飼育率(2013年)を見ると、ともに50歳代が最も多いことがわかる。「子どもが独立して、世話をする相手が欲しくなったり、仕事が落ち着いて、経済的にも時間的にも余裕があるため」(ペットフード協会)と考えられている。子どもの結婚、自らの退職など人生の節目にともない、ちょうどペットに関心が向かいやすい年齢なのかもしれない。

人間とペットとの関係は古く、犬は少なくとも1万年以上前から、猫は5000年ほど前から家畜化され、人間とともに生活していたとされる。当初は使役動物として人間との関係が築かれたが、社会の文明化が進むにつれて愛玩動物としての役割が重視されるようになった。

やがて少子高齢化や核家族化が進み、人とのふれあいが減少し続ける現代社会では、新たな家族の一員として愛情を注いだり、癒やしや安らぎを得たりできる大切な人間のパートナーになりつつある。

ペットを飼うことで孤独感やストレスが消えたり、家族の会話が増えたり、気持ちに張りが出て規則正しい生活を送れるようになったりするなど様々なプラス効果も指摘されている。子どもの情操教育に生かせるメリットも少なくない。

こうした事情から、日本国内のペット関連市場規模は2007年度の1兆3589億円から2014年度の1兆4412億円(見込み)へと拡大が続いている。

長い間、共存を続けてきた人間とペット――。その関係性を探ると、時代や社会の様々な変化が浮かび上がってくる。

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著者:小林 明
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