認知症で預金下ろせない 成年後見人が財産管理

離れて暮らすAさんの母は認知症が重くなり、家族の判別もできなくなった。介護施設に入所させるため、母の預金を下ろそうとしたところ銀行から「成年後見人を立ててくれないと預金の解約には応じられない」と言われた。手続きは裁判所に対してするらしいが、具体的にはどうすればいいのだろうか。

認知症などで本人の判断能力が不十分なときには、誰かが代わりに財産を管理したり、施設入所の契約をしたりする必要があります。そのための仕組みが成年後見制度です。家庭裁判所に申し立てることにより、親族か、弁護士や司法書士といった専門家が財産を守る役を担います。

同制度には、判断能力の程度に応じて3つの類型(後見、保佐、補助)があります。最も深刻で判断能力がほとんどない場合(後見)に選ばれる代理人を「成年後見人」といいます。

その権限は極めて重く、預金の引き出しや年金の受領など、財産全般の管理ができます。家裁は制度利用の是非や成年後見人を誰にするかなどを決めます。手続きの大まかな流れを図にまとめました。

Aさんが制度を活用するにはまず家裁へ行き、申し立てに必要な書類をもらいます。例えば東京家裁では窓口で制度の説明書や必要書類を一式、セットにして渡してくれます。申立先は、Aさんの居住地を管轄する家裁でなく、母の居住地を管轄する家裁です。

書類を提出すると審査を経て後日、申立人や後見人候補者との面接といった審理があります。本人の精神状況は医師の診断書を提出します。「重い認知症など精神上の障害が深刻な場合は本人の面接が省略される」と司法書士の大貫正男さんは話します。

家裁が申立書を受け取ってから、利用の可否を決定(審判)するまで1~2カ月かかります。審判の結果に不服があれば高裁に抗告できます。

後見人には重い責任があるだけに誰がなるかが重要です。親族が候補者となって申し立てることもできますが、家裁に認められるとは限りません。弁護士の北野俊光さんによると、「親族でも本人との関係が円満でないと家裁は専門職を後見人に指定する傾向がある」そうです。

親族が成年後見人らになった比率は昨年、約35%でした。65%は弁護士、司法書士ら第三者が占めました。審判の結果、候補者が意に反して成年後見人に選ばれなかったとしても、それを理由にした不服申し立てはできません。

成年後見制度の申し立てには、本人の財産目録や親族の同意書なども必要です。作成は簡単ではなく、司法書士ら専門家に10万円ほど払って頼む手もあります。なお審判の結果は登記され、その登記事項証明書を受け取って初めて成年後見人は預金管理などをすることが可能になります。

[日本経済新聞朝刊2015年10月14日付]

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