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世界が注目、水を治める江戸の知恵 福岡・山田堰

2015/10/10

貧困の原因の一つは水だ――。九州一の大河、筑後川の中流にある「山田堰(やまだぜき)」(福岡県朝倉市)が世界から注目を集めている。水田に水を引く灌漑(かんがい)設備で、225年前の江戸時代に築造された。大がかりな機材がなくても造れることが特徴。生態系への影響も少ない。江戸時代の知恵が世界を救おうとしている。

山田堰は大小の石を水流に対して斜めに敷き詰めることで、筑後川の勢いを抑えつつ用水路に水を導く。日本で唯一の構造だ。1790年に完成し、その後何度も補強工事が行われたが、全体の形や石はほぼ当時のままという。

導入の代表例が復興中のアフガニスタンだ。アフガンで30年間、支援活動を続ける非政府組織(NGO)「ペシャワール会」が2010年、山田堰をモデルにして堰と用水路を建設した。

現地代表の医師、中村哲さんによると、アフガンでは2000年以降の大干ばつと内戦で多くの人が犠牲になった。衛生状態が悪いことで感染症がまん延して村々が消滅するなど悲惨な状況も続いた。当初、医療支援だけを行っていたペシャワール会は「とにかく清潔な水が必要だ」と判断、約1600本もの井戸を掘ったという。だが、地下水が枯渇したほか、干ばつと洪水を繰り返す異常気象のために安定した水の調達はできなかった。

そうした中、帰国していた中村さんは、ふるさとで山田堰を偶然目にした。「直角のコンクリート堰はいずれ崩れる。壊れなくてメンテナンスしやすく、渇水にも洪水にも強い山田堰に勝るものはない。何より限られた機材で、アフガニスタン人にも築造・維持ができる」とほれ込んだ。2003年に着工、7年がかりで全長約25キロの灌漑用水路を完成させた。砂漠が緑地に変わった。

その後も工事は続き、現在ではアフガン人約500人が携わっている。「元タリバン兵や元政府軍兵士が一緒に働き、アフガンで一番治安が良い地域になった。食べられるようになれば自然とトラブルもなくなる」(中村さん)。ペシャワール会が進める「緑の大地計画」では2020年までに農民65万人が生活できるようになるという。今後はメンテナンス方法を伝授し、アフガンの人たちが自ら管理できるようにしていく方針だ。

アフガン政府も日本政府、国際協力機構(JICA)の協力を得て、国家プロジェクトとして国内各地に同様の堰を造ることを検討している。

世界に誇る日本の技術は江戸時代からあった。

(映像報道部 斎藤一美)

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