蜂蜜の実力、甘くみないで 健康や農地再生に効果

ハチミツの人気が高まっている。パンに塗ったり料理に使ったりと消費が急拡大。趣味で養蜂する人も増え、自治体も養蜂に動き出した。市場がにぎわいをみせている。
ハチミツを試食する女性客(東京都杉並区のラベイユ荻窪店)

東京都杉並区。ハチミツ専門店ラベイユが9月に出店した12カ所目の店舗「ラベイユ荻窪」では、主婦の佐藤麻悠さん(29)が大学の恩師へのプレゼントを選んでいた。

料理にも活用

佐藤さんはレモンの花から採ったハチミツなどを購入。ハチミツは花の種類や産地で味が違う。レモンは「爽やかな香りが強いイタリア産にした」。ハチミツの知識を母から教わったという佐藤さんは「ハチミツはお肉を柔らかくしたり、煮物の照りを出したりするのに使う。体に良いので毎日とっている」。

ニュージーランドの植物マヌカのハチミツを購入した会社事務の岡田玲子さん(56)は「ハチミツはそれほど好きでなかったが、マヌカを知りパンに塗ったり、なめたりして毎日食べている」。この「マヌカハニー」は強い抗菌力が特徴。「のどに良く虫歯にもなりにくい」と岡田さん。

ハチミツを巡っては中国や韓国でマヌカハニーの需要が拡大。昨年後半に日本にも人気が波及し、他のハチミツ消費も押し上げた。養蜂大手の山田養蜂場(岡山県鏡野町)では2015年4月期のハチミツ販売数量(通信販売)が5年前より約1割伸び、15年5~9月は前年同期比約6割伸びた。食品スーパーの成城石井(横浜市)でもハチミツ商品の既存店売上高が8月に前年同月比約4割増え、9月は同約6割増えた。

山田養蜂場によるとハチミツの健康への効果は大きい。砂糖より体内吸収に優れ、胃腸に負担をかけずにエネルギー源となる。ビタミンや鉄、アミノ酸など栄養素の種類も多い。抗菌や歯石予防、傷口の回復などに効くという。

4月には機能性表示食品制度がスタート。原則すべての食品に効果・効能を表示できるようになった。ハチミツにもこうした表示が増え、需要拡大を後押ししている。

養蜂家も増えている。東京都世田谷区内の野菜農園に3月、ミツバチの巣箱が3箱置かれた。会社員から養蜂家に転身した長島房子さん(52)の巣箱だ。「自然と関わりたいと思い、趣味と実益を兼ねて養蜂にした」。巣箱は現在約10箱に増加。ハチミツは自家消費するほか、友人らに原価ほどの価格で配っている。

個人養蜂家も続々

全国の養蜂家数は14年1月に9306戸で前年比約12%増。個人養蜂家がけん引役だ。長島さんによるとミツバチの世話は大変だが、趣味で行う規模なら難しくない。巣箱1箱5万円前後で済むなど初期費用も大きくないという。

耕作放棄地を活用する動きもある。農業ベンチャーのマイファーム(京都市)は国家戦略特区に指定された兵庫県養父市で養蜂を開始。耕作放棄地にレンゲなどの種をまき、植物を増やしながら養蜂をする。ミツバチは植物の受粉率を高める効果もあり、生態系保全への貢献は大きい。

玉川大学ミツバチ科学研究センターの中村純教授は「耕作放棄地の活用は土地の原野化を防ぎ、新たな農業にも生かせる。ただ趣味の養蜂と違い、大規模に展開するには費用が大きい」と話す。古くからの養蜂家との蜜源争いも懸念され、課題も多い。

東京都心ではNPO法人銀座ミツバチプロジェクト(東京・中央)が06年からビルの屋上で養蜂事業を開始し、銀座内の小売店などにハチミツを出荷している。今春からは江東区が養蜂に乗り出し、来春には港区も始める。「地域のつながりと子どもたちの学習効果だけでなく、生物多様性の保全にも貢献できる」(港区芝地区総合支所)。ハチミツで健康生活を実現し、そのための養蜂で生態系も維持する――。ハチミツの効果は計り知れない。

「せき止め、肌の保湿に効く」 意外な効能に驚きの声多く

ツイッターではハチミツの健康・美容に関する書き込みが目立つ。「のどには蜂蜜がいいらしい」「ハチミツには子どものせき止め薬以上のせき止め効果があるのです」のほか、「マヌカハニーやはりすごいかもしれない。のどあめずっとなめてるよりいいや」と最近話題の品種に対する指摘もあった。ほかにも「口内炎か…はちみつ塗るといいらしいな」と話題にしていた。

美容に関しては「ハチミツ洗顔。保湿効果もあるので肌が乾燥しやすい人におすすめです」などと保湿に関する書き込みが多かった。

養蜂を巡っては「ミツバチ養蜂する。決めた」「夢は仕事をやめて養蜂すること」と関心は高く、「蜜蜂が絶滅の危機にひんしていると聞いて養蜂を始めました」と生態系保全への意識をうかがわせる声もあった。調査はホットリンクの協力を得た。

(福士譲)

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