赤いリンゴ市場に「黄色い革命」 手間いらず、期待の星青森や長野、ブランド化や売り込みに力

「リンゴ=赤」という常識が変わるかもしれない。スーパーの青果売り場で最近は赤いリンゴに交じって、黄色いリンゴを見かけることが多くなっている。国産リンゴといえば歌にも歌われたように古くは「国光」や「紅玉」、その後も「ふじ」と赤色が中心だった。ただ、きれいな見た目にはやはり手間がかかる。黄色いリンゴは赤いリンゴに比べ栽培の手間が少なく、生産者にはメリットが大きい。品種改良で味や食感もよくなり、旬を迎えた産地は売り込みに力を入れている。

産地も黄色いリンゴの栽培を増やしている

日本には平安時代から在来のリンゴがあったが、現在食べられているのは明治時代に西洋から導入されたリンゴだ。明治に導入された赤色品種の国光は、ふじが登場するまで国産リンゴの主力品種だった。贈答用に多く使われた歴史があり、鮮やかな赤色をつけるのが生産者の課題だった。実の一つ一つに袋をかけて色づきをよくする「有袋栽培」も広く行われた。

「1日1個のリンゴは医者を遠ざける」との言葉があるように、リンゴはクエン酸やビタミンCなどの栄養分が豊富。これは黄色の品種でも同様だ。赤色品種はアントシアニン、黄色品種にはプロシアニジンというポリフェノールを多く含む。プロシアニジンには強い抗酸化作用があり、疲労回復効果があるとされる。

黄色いリンゴの代表、「トキ」や「シナノゴールド」

黄色いリンゴの代表は「トキ」や「シナノゴールド」だ。赤いリンゴに比べると見た目の華やかさに欠けるが、味では負けていない。

光センサーで糖度を測定する(青森県の選果場)

「トキ」は甘みの強さとさわやかな香りが特徴。包丁を入れると豊富な果汁がじわっとしみ出してくる。平均糖度は約14度と高めで、シャキシャキした食感が心地よい。親はリンゴ市場で不動の人気を誇る「ふじ」と「王林」。両者の良さを受け継いで2004年に誕生した。

市場の評価も高まっている。都内の卸売会社によると、トキの卸値は9月下旬に1キロ299円だった。赤色品種の早生ふじは289円、つがるは273円と、いずれもトキより安い。トキは食味に加え、黄色品種に特有の香りが評価されているという。前年同期はトキが1キロ267円で赤色品種と同水準だった。

高齢化進む産地、労働力の軽減が課題

生産者にとって黄色いリンゴは色づけの手間がかからない点が最大の魅力だ。赤いリンゴは色づけのため、太陽光をまんべんなく当てなければならない。このため、リンゴの実を定期的に回転させたり、光を反射するシートを地面に敷いたりする作業が必要になる。黄色いリンゴではこうした手間が省ける。昔から新品種は赤も黄色も開発されていたが、概して黄色は赤の陰に隠れがちだった。ただ、産地では高齢化が進み、栽培にかかる労働力の軽減が大きな課題となっている。食味の改良と相まって、存在感を急速に高めてきた。

青森、栽培面積が6年で倍増

消費者、生産者の双方の人気を追い風に生産量も順調に増えている。国内最大のリンゴ産地、青森県では、トキの栽培面積が15年に317ヘクタールとなり、6年間で倍増した。出荷量は約1万トンに達し、10~11月に出荷される品種の中で早生ふじに次ぐ存在になっている。今年は「出荷時期が5日~1週間早まっているが、食味は良好」(青森県りんご対策協議会)という。

市場でも黄色いリンゴが目立つ(青森県弘前市の弘果弘前中央青果)

赤に続く人気を確立しようと、産地はブランド力の強化にも取り組む。JAつがる弘前は糖度15度以上の商品を「めじゃートキ」として売り出している。「めじゃー」は津軽弁で「おいしい」、「うまい」という意味だ。昨季は出荷量の約15%が認定された。同JAは今年からネット販売を始めており、贈答用トキは5キロ(18玉)2200円で売られている。赤色品種の「ひろさきふじ」は同2400円で、価格差は狭まりつつある。

青森に次ぐリンゴ産地の長野県も、黄色いリンゴ「シナノゴールド」の売り込みに力を入れている。甘さだけでなく酸味がしっかりしていて、味のバランスが良いのが特徴。ジュースやワインの加工にも向いている。長野県果樹試験場が育種し、1999年に品種登録された。今季の出荷量は「天候の崩れがなければ前季比5%増える見通し」(JA全農長野)という。

最近は青森や長野などの出生地以外でもトキやシナノゴールドの注目度は高まっている。シナノゴールドは貯蔵しても品質が劣化しにくい。低温倉庫を多く抱える青森は、この特性に注目して栽培を増やしている。2014年にはリンゴ名産地のイタリア・南チロルで商業栽培が始まっており、人気の高まりは国内にとどまらない。トキも青森以外に長野や岩手で栽培されている。

黄色いリンゴ、輸出市場でも強み

黄色いリンゴは輸出市場でも強みを持つ。台湾や香港といった国産リンゴの輸出先で、ライバルになるのは米国や中国、韓国産。いずれも赤いリンゴが中心で、日本産に比べ価格が安い。一方、黄色いリンゴなら競合を避けられる。黄色は赤と同様、中華圏で縁起の良い色とされるのも追い風だ。リンゴ全体の輸出量は昨季に過去最高を更新しており、さらに輸出を拡大する上で黄色いリンゴへの期待が膨らんでいる。

スーパーや青果店の店頭ではトキで1個100円が中心で、赤色の早生ふじと同じ水準で売られている。人気が高まっているうえに、輸出増が重なり価格は高値で安定している。ただ、「黄色の外見に『実がやわい』といったイメージを持ち、敬遠する消費者も多い」(都内スーパー)。食味の魅力をさらに浸透させられれば、一層の需要増が期待できそう。消費低迷の続く国産リンゴ市場を再び活性化する役割も期待できる。

(龍元秀明)

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